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政治と芸能、両睨みのカムバック作戦は実らなかった [芸能]

戦後史上、逮捕歴のあるタレント知事という話を昨日書いたが、今日は当選後にトラブルが発覚した横山ノックの話である。

政治の戦後史的には、タレント議員のはしりといってもいいだろう。石原慎太郎や青島幸男らと同じ時期に参議院議員に初当選している。その人たちがみな、知事になったというのも興味深い。

さて、2003年10月29日付『東京スポーツ』を見ると、横山ノック・前大阪府知事が、「夢路いとしさんお別れ会」で、「芸能界復帰をブチ上げて関係者を驚かせた」という記事がある。

これは、「強制わいせつ事件」以来、はじめてメディアに取り上げられたときの記事だ。

それによると、「これからはライブの時代」と、テレビやラジオではなく、舞台での復帰を考えていたようだ。

芸能界へのカムバックについては、吉本興業の林裕章社長から、「タレントとして使う意思は全くございません。役員一同の意見です」(『日刊ゲンダイ』2000年6月30日付)と三くだり半を突き付けられ、個人事務所もすでに閉鎖していた。

だから、「芸能界復帰」といっても「テレビやラジオではなく、舞台」しかなかったのである。

かつて「笑い」で一代ブームを作り、国会議員や知事も経験した「名士」だ。

本来なら、ここまで追い込まれていれば、汚した晩節の傷口を広げぬように身を引くものだが、多額の借金を抱えているといわれていた。とにかく何かをせざるを得なかったのかも知れない。

しかし、横山ノックは前大阪府知事として、その少し前の2003年7月24日に、「今年は、大きな転機になる。老骨にむち打って、府民への裏切り行為について、罪滅ぼしをすることを考えていきたい。大阪府の繁栄を祈ります」と、政界復帰宣言ともとれるスピーチを行ったばかりだった(『サンスポ・コム』2003年7月25日更新)。

カムバックは政治だったのか、それとも芸能界だったのか。要するに、いろいろ観測気球を上げて世間の反応を確かめ、感触のいい方に傾くつもりだったのではないか。

最初の参議院選挙の時、横山ノックは、社会風刺ネタで一世を風靡する、ノック・フック・パンチの漫画トリオという人気トリオ漫才を率いるリーダーだった。

それがいきなりの出馬だったため、残されたトリオのフックやパンチらは、仕事の始末や以降の自分たちの仕事を軌道に乗せるために大変苦労したという。

6年後にノックは1度落選しているが、当時はテレビのワイドショーの中で、ノックの「芸能界復帰パーティー」を行っている。

それで気をよくしたのか、当時のパートナだったフックやパンチにトリオ復活を持ちかけている。そうすれば、トリオ時代のギャラと名前ですんなり芸能界に復帰できるからだ。

自分の都合でトリオを捨てておきながら、ムシのいい話と思う。案の定、これはうまくいかなかった。フックは、青芝フック・キックという漫才を軌道に乗せつつあるときで、「キックに6年前の自分の苦労をさせられない」と、身勝手なトリオ復活には拒絶反応を示した。

パンチは上岡龍太郎としてすでに売れっ子になっていたが、彼らしく、自分の仕事優先で、余技としての「復活」には含みを残した。

結局、出馬前のような絶頂を取り戻せなかった横山ノックこと山田勇は、3年後に国会議員に復帰。以降、無所属、二院クラブ、革自連、民社党と、左右大小の会派をウロチョロし、結局これといった実績は残していない。それでも、自転車を使った選挙運動や風呂に入って有権者の背中を流すなどのパフォーマンスなどで選挙には強く、計4期参議院議員をつとめている。

その後、政界再編と無党派ブームなるものに目をつけ、大阪府知事に転身するが、知事1期目の在任中も議会になめられていた。

しかし、それは逆に、「議会にいじめられながら耐える無党派知事」というギミックになり、人気が高まった。
結局、何一つ責任ある仕事を成し遂げることもないまま、笑いに寛容過ぎる大阪で庶民派を装って生き延びてきたわけだ。

だから、「強制わいせつ事件」もなしくずしに許されると思ったのかもしれない。しかし、府民はそれだけは許さなかった。

それはそうだ。有権者の半数は女性なのである。

「強制わいせつ事件」は、行為自体はもちろん、訴えられてからの経過についても、「権力犯罪」としての本質をもつ以上、そう簡単に水に流すことはできなかったのだ。

横山ノック元大阪知事の事件経過については、『平成の芸能裁判大全』(鹿砦社)に詳しい。


平成の芸能裁判大全

平成の芸能裁判大全

  • 作者: 芸能裁判研究班
  • 出版社/メーカー: 鹿砦社
  • 発売日: 2003/10
  • メディア: 単行本


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