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外相長女の記事は「プライバシーの侵害」か(後)

東京地裁が2004年3月16日、17日に発売予定の『週刊文春(3月25日号)』の出版を禁止する仮処分命令を出した件の続きである。

法律やマスコミなどの研究者の多くも、「差し止め」には批判的だった。

「出版の事前差し止めは、例外中の例外であるべきだ。『週刊文春』のように政治的、社会的に大きな影響を持っているメディアについて、こうした厳格性、明確性の要件がどのように判断されたかが問題だ」(2004年3月18日付「しんぶん赤旗」で堀部政男中央大教授)

「1人の裁判官による安易な判断があしき前例をつくったと言っていい。メディア側も今回の出版禁止の妥当性を検証すべきです。なのに、新聞・テレビはプライバシーへの配慮なのか、長女の離婚を伏せて報道している。出版禁止の理由を伏せたままでは検証など不可能。メディアがこのていたらくでは、ますます公権力による言論弾圧をはびこらせるだけです」(3月19日付「日刊ゲンダイ」で服部孝章立教大教授)

今回の決定について、あの「石に泳ぐ魚」事件の原告側代理人として「プライバシー」を掲げて闘った梓澤和幸弁護士も、2004年3月19日付「朝日」で「差し止め」に批判的なコメントを出していた。

「記事内容はかなりプライベートで、判例を機械的にあてはめると差し止めが認められるケースかも知れない。しかし、政治家の子どもは単純な私人ではない。

政治家を追及する記事の多くは、家族や秘書など周辺から迫っている。その点を含めて考えると、今回の差し止め決定をやや憂慮している。表現の自由はそれほど軽いものではない」

一方、「産経」や「読売」などは、「差し止め」の意味をきちんと報じることなく、「やむなし」の論調を貫いた。

連日、とりあげられたこの事件は、その後、東京高裁が31日、仮処分を妥当とした東京地裁決定を取り消し、長女側の仮処分申請を却下する決定をして命令は効力を失った。最初は「不服を申し立て」を予定していたとされる長女側は、4月3日、不服を申し立てず、記事の削除や損害賠償などを求める訴えを起こした。
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