『クレージーの怪盗ジバコ』子どもも鑑賞できるアクション喜劇 [東宝昭和喜劇]
『クレージーの怪盗ジバコ』(1967年、東宝)が、5日7時から、CSの日本映画専門チャンネルで放送されます。これは、時代劇専門チャンネルとの「戦後70年共同企画」の一環として、1月から集中放送されている「植木等劇場」の一作です。クレージーキャッツの7人がジバコを演じ、京都、名古屋、浜松、横浜と東海道のロケでその絶妙な変装を披露します。
原作は北杜夫の『怪盗ジバコ』。
人相・年齢・国籍すべて不明、変装の天才で国際的大怪盗ですが、1万ドルを盗むのに10万ドルをかける“不可解な怪盗”でもあります。そんなユニークさに、無謬のヒーローと違い親近感を抱きました。その映画化です。
東宝クレージー映画は全部で30作ありますが、原作がある唯一の作品で、以前も書いたように私にとっては『クレージーの怪盗ジバコ』は、30作の中でもbestworkだと思います。
『東宝昭和の爆笑喜劇』(Vol.14)より
ですから、5日の放送ももちろん観ることになるでしょう。
これまでのクレージー映画は、大人が対象でしたが、本作だけは、明らかに子どももターゲットにしています。
その意味で、今回連休中に放送というのは、日本映画専門チャンネルも考えたな、と思いました。
浜美枝と豊浦美子がマドンナ格
これまで、このブログでは、『クレージーの怪盗ジバコ』について、何度か簡単に触れたことがあります。
⇒HTR-009WA(DVDプレーヤー)を購入して『怪盗ジバコ』を鑑賞
⇒ひし美ゆり子と豊浦美子、『ウルトラセブン』と『怪盗ジバコ』
⇒穴守稲荷神社例大祭と都立城南職業能力開発センター大田校技能祭
今回のヒロインは、『007は二度死ぬ』に出演して国際的女優になった浜美枝と、若手の豊浦美子です。
坪島孝監督は、豊浦美子が気に入っていたようで、坪島クレージー映画では、しばしば彼女が起用されます。
『クレージーの怪盗ジバコ』より
とくに本作の場合、豊浦美子はウルトラセブンのアンヌ隊員出演が決まっていたのに、それを降板させて出演させたのです。
当時は、映画>テレビでしたし、東宝のドル箱だったクレージー映画と、お子様用のキワモノ扱いだった特撮テレビ映画では、選択肢としては比較にならなかったかもしれません。
しかし、豊浦美子の降板によって、アンヌ隊員を演じることになった豊浦美子の一期後輩のひし美ゆり子が、それを「当たり役」として、今も芸能界に残り、一方の豊浦美子は1970年代にあっさり引退してしまいました。
わからないものですね。
ストーリーは、羽田空港に入国したところから始まるのですが、旧空港の駐車場に残っていた赤い鳥居も出てきます。
『クレージーの怪盗ジバコ』より
子供の頃、旧空港によく遊びに行ったので、ああ懐かしいなあと思いました。
ネタバレ御免のあらすじ
『クレージーの怪盗ジバコ』より
メインタイトル前の名古屋章のナレーションでは、原作にも書かれている怪盗ジバコの紹介が行われます。
世界各国の銀行を破産させること138回、内閣を総辞職に追い込むこと3回、そのために更迭させられた警視総監はその数を知らず……。
「嘘のサンパチ」から数字を作ったのでしょうね。
羽田に到着した自称国際的文化財保護団体W・C・W・C(実は盗賊団)とたまたま一緒の便でやってきたジバコ(植木等)。
さっそく鈴木刑事(谷啓)に化けて、警視総監(東野英治郎)からジバコ対策本部の班長に任命された明智警部(ハナ肇)を騙して捜査網をすり抜けます。
ジバコは、イベント会社の社長(犬塚弘)の車を拝借して、鈴木刑事に化けた時にすった警察手帳と給料を返しに行こうと、地元の子供達に道を聞こうとします。
すると、子どもたちは黄色い帽子と黄色いマスクをしています。
帽子は交通事故、マスクは大気汚染対策でした。
ジバコは、日本が高度経済成長の一方で、人々の暮らしにしわ寄せが来ていることを知ります。
鈴木刑事に化け続けたことで、マヌケな明智警部は2度ヘマをしましたが、その引責として明智警部は自分がやめずに鈴木刑事に辞表を書かせます。
すると、ジバコは、鈴木刑事のためにイベント会社の社長に化け、部下(佐田豊)に「この人を高い給料で雇うように」と命じて就職させます。
『クレージーの怪盗ジバコ』より
そうなのです。
ジバコは怪盗ですが、庶民からは盗まないし、人助けや社会正義の心も持っているのです。
京都では、W・C・W・Cが、あちこちの寺や展示場から品物をニセモノにすり替えて盗み出していました。
それに気づいたジバコは、W・C・W・Cが盗んだものを奪おうとしましたが、鈴木元刑事のヘマで、彼らのガールフレンドであるナナ(浜美枝)洋子(豊浦美子)とともに捕えられてしまい、横浜まで品物を運ぶように命じられます。
もちろん結末はハッピーエンド
一方、警察は、明智警部をはじめ、人見明、安田伸、青島幸男などが東海道の各関所ごとに頑張っていますが、ジバコは得意の変装術でそこを通過して横浜までたどりつきます。
『クレージーの怪盗ジバコ』より
放送前なので、あらすじはここまでとしますが、まあ、清く正しく明るく楽しい東宝映画ですから、ハッピーエンドであることはもちろんです。
最後のまとめ方も、坪島孝監督らしいと思います。
併映作のある作品としては異例の長尺で110分。出演者も豪華です。
左卜全、立川談志、藤田まこと、安藤孝子、青山ミチ、山本リンダ、木の実ナナ、進藤英太郎、それから阪急ブレーブスで盗塁王にもなったロベルト・バルボンも、W・C・W・Cの一員として出演しています。
ゴールデンウイークの鑑賞にふさわしい作品だと思います。
タグ:クレージーの怪盗ジバコ
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