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飯田蝶子、喜劇を中心に“達者な老婆・祖母”で活躍 [懐かし映画・ドラマ]

飯田蝶子、喜劇を中心に“達者な老婆・祖母”で活躍

飯田蝶子さん(いいだちょうこ、1897年4月17日~1972年12月26日)は、庶民的で、かつ達者な老女や祖母の役を演じました。松竹蒲田撮影所に入社以来、松竹映画で、戦後はフリーになって各社の映画やテレビドラマにも幅広く活躍の場を求めました。



飯田蝶子さんは、松坂屋店員から雑誌の投稿を始めて業界紙の記者になり、ルボを書いて一般紙に売り込み、さらに旅回りの一座に応募して、松竹蒲田撮影所に採用。

そこから、栗島すみ子・田中絹代に次ぐ序列の大幹部女優になったのに、戦後はあっさりフリーになって各社で活躍しています。

バックの力やツテではなく、自分の力で希望に向かって進むこと。

そして、ひとっところに安住せずに、新しい世界を探る生き方は私の理想です。憧れです。

さて、飯田蝶子と言えば、東宝昭和喜劇を語る上で欠かせないバイプレーヤーです。

1960年代、社長シリーズ、喜劇駅前シリーズ、クレージー映画、そして若大将シリーズという人気シリーズが東宝を支えていましたが、飯田蝶子は喜劇駅前シリーズ以外には出演しており、とくに若大将シリーズは、若大将(加山雄三)の祖母役でレギューラー出演していました。

『社長道中記』


社長道中記』(1961年、東宝)では、大阪の商社(三橋達也社長)との商談で、「こだま」(新幹線ができる前の特急)の2等車(今のグリーン車)に乗った、森繁久彌社長と小林桂樹随行社員。

小林桂樹のとなりに美女(飛鳥みさ子)が座ると、森繁久彌社長は強引に席を変えてもらい、美女の隣りに座ります。

飛鳥みさ子
『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジンVol.25』より

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ところが、美女は祖母(飯田蝶子)の代わりに座っていただけで、森繁久彌社長は落胆します。

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『大学の若大将』


大学の若大将』(1961年)は、シリーズの第一作目です。

若大将は、バンドを作るために月謝を使い込み、さらに水泳部主催のパーティを開いた部員の慰労をするために、常得意の客先にだす霜降りを、祖母(飯田蝶子)からこっそり受け取り、また、集金の金を使い込んだ妹(中真千子)の身代わりにもなったために、父親(有島一郎)から勘当されます。

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若大将の勘当はほぼ毎回のパターンで、最後は解かれるのですが、飯田蝶子は勘当されるきっかけをつくります。

『クレージー黄金作戦』


クレージー黄金作戦』(1967年、東宝)では、主役の一人であるハナ肇の母親役です。

代議士役のハナ肇は、派閥の親分(石山健二郎)や大臣(十朱久雄)から、箔をつけるための外遊を勧められ、時期大臣などと空手形を切られて舞い上がり、飯田蝶子が反対したにもかかわらず、実家の和菓子店にあった先祖代々の茶釜を売り飛ばします。

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ちなみに、その和菓子屋の舞台は、いかにも茶釜をイメージした独特のまるい建物に見えます。

こがね煎餅

で、舞台になった店は、実際に和菓子店の『とらや』といい、4年前に閉店したのですが、取り壊される前に撮った画像がこれです。

高輪虎屋全景

全く同じ建物ですが、私が撮っても茶釜のように丸く撮れませんでした。

こう書いていくと、飯田蝶子は東宝の女優のように見えますが、フリーランスで、他社の映画にも出演しています。

五社協定がある頃、映画会社にも劇団にも所属していない一本独鈷で、各社の重要な役どころにキャスティングされる飯田蝶子というのは、映画界でも認められていた存在だったのだと思います。

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『運が良けりゃ』




運が良けりゃ』(1966年、松竹)は、山田洋次監督のはじめての時代劇です。

古典落語を下敷きにストーリーが展開していることから、ネットのレビューでは、川島雄三監督の『幕末太陽傳』の松竹版でという批評もありますが、こちらの方が突き抜けています。

向島裏長屋を舞台に、左官で暴れ者の熊(ハナ肇)と相棒の八(犬塚弘)は、「同僚」であり同じ長屋住まいでもある、公私ともに相棒です。

2人が巻き起こす騒動を描いていますが、山田洋次監督が、この頃しばしば使った「死体イジリ」など、かなりぶっ飛んだエピソードがいくつもある現実離れした怪喜劇です。

『男はつらいよ』を撮る前は、こんなものを撮ってたのかと初見の方なら驚かれるでしょう。

飯田蝶子も長屋の住人として出演しています。

飯田蝶子さん、昔の作品でご覧になった記憶はありませんか?

大学の若大将
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社長道中記 [DVD]
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あの頃映画 「運が良けりゃ」 [DVD]
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末尾ルコ(アルベール)

飯田蝶子、喜劇を中心に“達者な老婆・祖母”で活躍・・・300本を超える出演作品があるのですね。すごいですね。「飯田蝶子」というお名前は知りませんでしたが、ご紹介くださっている『社長道中記』のシーンは鮮烈でした。ある意味喜劇の「お約束」的シーンではありましたが、演出の妙、そして森繫久彌、小林桂樹、飯田蝶子、飛鳥みさ子ら俳優たちの上手さによって、名シーンとして完成されておりました。森繫久彌はじめ、俳優たちがオーバーアクトでないのが素晴らしかったですね。最近だと大泉洋や阿部サダヲらが喜劇的な役で活躍してますが、だいたいいつもワンパターンのオーバーアクトが多く、もう一つ好きになれないのです。『社長シリーズ』は珍芸も飛び出しますけれど、オーバーアクトがないところが大人の喜劇の高級感を創り出している感じです。
『若大将』の祖母の役もやっているのですね。シリーズ物の作品は、わき役を含めてレギュラー陣が登場しただけで嬉しくなってくるというところがありますね。そして、そうなってしまえば、シリーズ作品としては成功しているとわけなのですよね。
『運が良けりゃ』はおもしろそうですね。山田洋次監督の初期の時代劇。しかもなかなかに弾けた内容のようですね。山田監督の時代劇と言えば、近年の『たそがれ清兵衛』など、格違いの見事な作品を生み出しておりますし、『男はつらいよ』新作など精力的に活躍しておりますが、今一度シュールな喜劇なども作ってほしいところです。
飯田蝶子のキャリアをチェックすると、1920年代から多くの映画へ出演しておりますね。すごいですね~。もちろん鑑賞している作品もかなりあります。日本映画史とともに生きておられた方と言って過言でなく、こうしてあらためてご紹介くださるのはとても有難いです。

ドリー・ファンク・ジュニア関係でついでと申しては何ですが(笑)、次のような記事がありました。

ジェリコとドリー・ファンクが1月にトークバトル
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181224-00427323-nksports-fight

日本におけるプロレスラーの地位の変遷は概ね分かっておりますが、米国ではどうなのかが、昨今のWWEについてはだいたいわかるのですが、日本で言えば昭和の時代の米国プロレスラーの地位や知名度ですよね。フミ斎藤などもいろいろ書いているようですが、もう一つ分からない部分があるだけに、興味があります。こうしてどの程度の規模のモノかは分からないですが、イベントでドリーが若手の有力レスラーと交わるという話題は、やはり少々嬉しくなりますね。

>スピニングトーホールドはあまり痛そうではなかったし(笑)

現実にはまさにその通りなのですが、なにせプロレス本に「拷問のような痛み」とかすごいこと書いてましたので、ものすご~~~~く高級な技だと信じてました(笑)。わたしの持ち技の中でも特別な必殺技のしていたのですが、いざ相手にかけようとすると、こちらがスピンするたびに相手の体も同じ方向へ動いてしまうので、ぜんぜん痛くないのですよね(笑)。まあそれらもすべて、自らの未熟さの責任としていた、プロレス界にとってはとても有難い少年でした。

森川信の「おいちゃん」は本当に素晴らしいですね。松村達雄も悪くないのでしょうが、森川信を続けて観た後だと、「置物」がそこにいるみたいな違和感があります。
それにしてもいつも述べさせていただいており恐縮ですが、いっぷく様のようにそれぞれの俳優のバックボーンをご存知だと、ご鑑賞の深さがまったく違いますね。本当にいつも刺激をくださっております。  RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-12-26 04:24) 

pn

うーん、亡くなったのが俺が5歳の頃となるとさすがに記憶無いなぁ。
丸く写すのはレンズじゃないかな?
by pn (2018-12-26 06:18) 

チナリ

おはようございます。

飯田蝶子さん、私が生まれる数年前に亡くなられているので、初めて知りましたが、優しい日本のおばあちゃんという感じの方のように思えました。

by チナリ (2018-12-26 09:49) 

旅爺さん

お早う御座います。
「昔はよかった~!”」ついつい出てしまう言葉です。
クリスマスが終わって今度はお正月ですね。(^_^;)/”””*
by 旅爺さん (2018-12-26 10:10) 

えくりぷす

飯田蝶子さんのおばあさん役は、いくつか観た覚えがあります。70年代の初めには亡くなられていたのですか。
なんとなく芸人さんあがりのような気がしていたのですが、違いましたね。でも落語でいうフラがあった方だと思いました。
和菓子店の『とらや』の写真は、映画の方は下から撮っているように見えます。
by えくりぷす (2018-12-26 10:46) 

アールグレイ

森繁久彌さんは、知っていますが
女優さんは知らないです。
昭和の懐かしい映画もいいですね^^
by アールグレイ (2018-12-26 14:02) 

Take-Zee

こんばんは!
昭和34年TVを買って初めて見た
おばあちゃんが飯田蝶子さんでした。

by Take-Zee (2018-12-26 18:46) 

ナベちはる

東宝の作品に数多く出られていても、東宝の女優さんでないのは意外に思いました。
by ナベちはる (2018-12-27 00:31) 

そらへい

飯田蝶子さん、久し振りにその名前を聞きました。
いつもおばあちゃん役で親しんでいましたが、
そのようなかっこいい生き方をした人だとは知りませんでした。
by そらへい (2018-12-29 20:45) 

犬眉母

元気なおばあちゃん役が多かったですね。
by 犬眉母 (2018-12-30 02:14) 

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