今日はプロ野球の戦後史。といっても裏戦後史的な話で、異色の経歴を持つプロ野球選手の話です。
『夢の先にあった栄光と挫折 プロ野球「異業種」から来た男たち』(宝島社)を読んでみました。
タイトルどおり、異色の経歴でプロ入りした4人の元選手と1人の現役選手について、永谷脩、織田淳太郎、田口元義、高野成光らのスポーツライターたちがまとめたものです。
具体的には、ソフトボール→日本ハムの大嶋匠、東京大学→ロッテの小林至、大相撲→ロッテの市場孝之、大工→ダイエーの田畑一也、西武→社会人→日本ハムの渡辺孝男、ここまでは本人に取材してまとめられています。
おそらく、この『夢の先にあった栄光と挫折 プロ野球「異業種」から来た男たち』は、今年入団した大嶋匠で本を作りたかったけれど、知名度も実績もない大嶋匠では一冊を作れないので、他の元選手を集めてひとつの企画にしたのだろうと思います。
ただ、私が読む限り、『夢の先にあった栄光と挫折 プロ野球「異業種」から来た男たち』の圧巻は最終章だと思いました。
メキシコ五輪に出場経験を持ち代走一本で転身したロッテの飯島秀雄、陸上と野球経験を生かした代走盗塁数の記録をもつ近鉄の藤瀬史朗、やり投げ日本一から転身した西武の日月鉄二、レストランではたらいていたところをスカウトされ新人王まで上り詰めた西武の森山良二、フリーターからプロ入りして女子アナと結婚した城石憲之、元軟式野球の銀行マンから赤ヘル時代のサウスポーエースになった大野豊などがとり上げられています。
それらの選手については「引退後」にも触れられており、中には服役経験者もいますから、まさに「夢の先にあった栄光と挫折」というタイトルにピッタリです。
私はむしろ、この最終章を膨らませて1冊作ったほうが面白かったと思います。
プロ野球も苦難の時代が長かったですから、ユニークな経歴というなら、過去にはもっといろいろな人たちがいました。
たとえば、東京大学出身のプロ野球選手として小林至が取り上げられていますが、はっきりいって小林至はシロウトから見ても、明らかに話題性での採用に見えました。
しかし、過去には戦力になった東大出選手もいたのです。大洋ホエールズの新治伸治投手と中日ドラゴンズの井手峻外野手(もとは投手)です。
できれば、新治伸治や井手峻を採り上げた方が面白かったと私は思います。
新治伸治は六大学野球の最多敗戦数記録を持つほどの主力投手で、大洋にはマルハ本社の出向社員として入団しています。
井手峻は井手峻郎という脚本家・映画監督の長男で、8年間控えではありますが1軍選手でした。現在は同球団の重役です。
私が「週刊ベースボール」を毎週買っていた中学・高校生の頃には、柴田民男という左投げ投手がいました。
柴田民男は、家業で寿司を握っていたところ、大洋ホエールズのスカウトに「2~3年投げてくれないか」といわれて、実際に2年同球団に在籍しました。
ちょうど、球団が川崎から横浜に移るときの在籍だったので、2年しか在籍していないのに、湘南色のユニフォームと、横浜のマリンブルーのユニフォームを着る経験をしているわけです。
同じ頃、同球団は相模原市役所から高木由一外野手をテストで採っていますが、現業ではなく役所の公務員出身というのも異色と当時は騒がれました。
安定した公務員から不安定なプロ野球選手への転職がめずらしかったのでしょうが、“とっつぁん(愛称)”はその後、同球団一筋に長くユニフォームを着ており、現在も二軍打撃コーチ。地方公務員のままなら今ごろはリタイアですから、結果的に公務員以上に安定した職歴となりました。人生、わからないものです。
柴田民男も高木由一も、契約金ではなく支度金での入団と本人たちは語っています。
プロ野球というと、野球界の頂上にある狭き門と思うのですが、当時はまだスカウト網も十分ではなく、また何より選手に対する人件費が少なかったので、ドラフト指名選手に多額の契約金を使うとお金がなくなってしまい有力選手を採れなくなるので、今から思うと「おやっ」と思えるような採用で選手枠を埋めていたようです。
今は、1人の選手に何億というお金を使うプロ野球も、サッカーの台頭で人気の停滞が心配されています。
人件費ばかりは今も右肩上がりですが、お金の面だけでいえば、そうしたプロ野球の歴史を振り返ってみることも必要かもしれません。
2012-09-16 12:34
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いろんな経験がその人を作って行くよね〜♪
プロ野球選手も・・・前途多難な時代かな?
この先がなかなか読めない時代やね。
by hatumi30331 (2012-09-16 21:38)
中日ドラゴンズからその後、大洋ホエールズに移った強打者
森徹氏は柔道も国体レベルの選手だったらしいですよ。柔道が強くてその後プロ野球選手なって、そこそこの実績を残したのだから今では想像もつかないです。
by 本物ホネツギマン (2012-09-16 22:15)
サッカー界は文武両道の人がたくさんいますね。すごいです。西野さんも文武両道ですごいです。西野さんのおかげで、多くの人が勇気づけられています。元日本代表監督の岡田さんは特に文武両道ですごいですね。まさに文武両道の星ですね。今後もがんばってほしいです。
慶応義塾大理工学部の福谷浩司さんがドラフト1位でドラゴンズに指名されましたね。文武両道ですごいなぁーと思いました。野球一本で勝負してもなかなかプロ野球選手になれないのにねーーー。
慶応大理工学部でドラフト1位は本当にすごいです。応援していきたいですね。
野球界やサッカー界では文武両道のプロ選手がたくさんいますが、ゴルフ界では京大中退の坂田信弘さんくらいでしょう。
ところが、大学ゴルフ界にも文武両道でがんばり、プロで戦える選手が出てきたので、紹介します。
まず、高野隆さんという選手です。彼は、東京大学法学部4年です。新潟県出身で、中、高校時代には日本ジュニアゴルフ選手権競技に4回出場し、文武両道で頑張り 、東大法学部に合格した。日本学生ゴルフ選手権競技には3回出場し、朝日杯争奪日本学生ゴルフ選手権には4年連続出場し、最高6位に食い込む活躍を見せた。さらに、厳しい予選を勝ち抜いて、日本アマチュアゴルフ選手権競技に出場したスーパー文武両道ゴルファーです。
次に、辻田晴也さんです。彼は和歌山県立医科大学の1年です。中学時代には大阪府ジュニアゴルフ選手権2位、関西中学校ゴルフ選手権4位、全国中学校ゴルフ選手権で24位に入った男です。高校は岡田さんと同じく、天王寺高校に進学し、さらに高校時代には全国高等学校ゴルフ選手権に3回出場し、関西高等学校ゴルフ選手権では最高2位になるなどの活躍をしてきた男です。大学は和歌山県立医科大学に進学し、六大学交流戦では3アンダー69で回り、2位に13差をつけ圧勝し、西日本医科学生総合体育大会では2打差で敗れ2位、西日本医歯薬新人戦では2アンダー70で回るものの、マッチングスコアカード方式で2位となった。将来は医者兼プロゴルファーになるでしょう。
最近の若い選手は、強豪私立高校、大学に進学してからプロになる選手が多いだけに、この人たちは異色ですね。楽しみです。
ゴルフ界も野球界に負けずに、将来は文武両道プロゴルファーが誕生するでしょう。
by だい (2012-11-14 21:45)