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『優雅な暮らしにおカネは要らない』必要なのは教養と生きがい [生活]

『優雅な暮らしにおカネは要らない』(アレクサンダー・フォン・シェンブルク著、畔上司訳、集英社)を読みました。流行や宣伝に流されず、教養のある身の丈にあった暮らしをすることが人間にとってもっとも幸福である、ということが書かれています。前書きで、森永卓郎氏がその要約とも言える内容を書いています。



『優雅な暮らしにおカネは要らない』は、アレクサンダー・フォン・シェンブルクという、ドイツの没落貴族の末裔が書いたものです。

第二次世界大戦で資産を没収されて、以前のような経済的に豊かな生活はできなくなったものの、その環境から逆に、お金に翻弄されない真の豊かさを考えた優雅に暮らす術を身につけたという話です。

といっても、欲求を我慢する、清貧のすすめや倹約の啓蒙書ではありません。

そうではなく、生きる上での価値観や哲学を根本から変えたのです。

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発想の転換と教養で満たされる生活は可能


前書きを、森永卓郎氏が書いています。

森永卓郎氏といえば、『年収300万円時代を生き抜く経済学』を書いた経済アナリストです。

森永卓郎氏の前書きは、アレクサンダー・フォン・シェンブルク氏の書いた本文の解説にピッタリの内容です。一部を引用します。
私たちは、ぜいたくの意味をずっとはき違えてきた。二泊三日で観光地に行き、忙しく歩き回ることは貧しいレジャーだ。ぜいたくなレジャーとは、家の周りをゆったりと散歩するか、滞在型で長期間ゆったりと自然のなかで過ごすことだ。携帯電話を持ち、いつでも呼び出される生活は貧しい生活で、携帯電話を持たずに誰からも電話で遮られないのがぜいたくな生活だ。車を持つのは貧しくて、車を利用しなくても間に合うくらいのゆったりとした暮らしができるのが、ぜいたくなライフスタイルだ。ブランド物の衣服を着ることは貧しくて、安くても古くても、こぎれいに、おしゃれに着こなすのがぜいたくだ。

森永卓郎氏が、そのような人生観を持つようになったのは、テレビ神奈川の『HAMA大国ナイト』というバラエティ番組に出演してからだといいます。

ローカル局で、個別の楽屋もなく、大した食事も出ない。

他の出演者は、お金や名誉は二の次で、自分の好きなことだけをしている、マイナーな舞台女優や評論家など。

それでも、彼らとひとつの部屋で、おにぎりや、持ち寄ったおかずを食べながらの食事が美味しく楽しかったそうです。

おにぎり

なぜ、森永卓郎氏にとってその時間が楽しかったのか。

第一に共演者たちには、お金はないけれど教養があった

森永卓郎氏は、深い知識と独自の視点に知的好奇心が満たされたといいます。

そして、共演者たちには豊かな感情があったというのです。

つまり、自分の好きなことに打ち込む幸福な生活こそが、豊かな教養と感情をもつ魅力ある人間にしているというわけです。

このあたりを読んだだけで、私は胸が一杯になりました。

ああ、そういう集いなら、いつ誰が主催でも私も強引に参加したいと思いました。

火災になってわかった“人生の真実”


本書はもともと、私ではなく妻が入手したものです。

我が家が火災で全てを失い、人生設計の根本的な立て直しを迫られました。

アレクサンダー・フォン・シェンブルク氏も、没落が発端でした。

ですから、その精神的支柱となるものを探した結果、私の妻は本書を手にしたのだと思います。

でも、エラソーな書き方で恐縮ですが、私はもう、本書の書かれていることに気づいていました。

本書は新発見というより、自分の考えていたことが、他の人に上梓されていたことで、「うんうん、そうそう」という“我が意を得たり”の気持ちと、「そう考えていたのは自分だけではなかったのだ」という連帯感のようなもので「胸が一杯」になったのです。

このブログ『戦後史の激動』は、みなさんのブログとは違い、豪華な料理も贅沢な旅行も出てきません。

でも、何十回かに1度ぐらいは、「独自の視点に知的好奇心が満たされた」記事を書いているつもりです。

たとえSo-netブログユーザーにはウケなかったとしても、記事関連の研究者や関係者などからは、しばしばリツイートやリプライ、もしくは直接のメッセージなどをいただいています。

ツイッター、使ってますか?ブログ生活が変わるかもしれませんよ!

ですから、わかってくれる人はいるんだな、このブログも一応存在価値はあるみたいだな、などと善意に解釈して悦に入っています。

大衆のメンタリティに必要な権威や実績


森永卓郎氏は、『年収300万円時代を生き抜く経済学』を書いた時に、「さんざんテレビ出演や本の執筆などで稼いでいるくせに300万で暮らせとは何事か」という批判があったそうです。

同書の著者も貴族。貴族のくせに何がわかるか、というような評価もあったそうです。

しかし、実際にはこれは逆なんです。

稼いでいる森永卓郎氏だからこそ、貴族だからこそ、人生の幸せとはカネではなく価値観と教養なんだ、ということを唱える説得力があるのです。

だって、私のような正真正銘の無一文がそんなことを述べても、負け惜しみにしか思われませんから(苦笑)

このブログで以前書きましたが、プロブロガーのイケダハヤト氏が、人との関係で優位に立ちたいから、ありふれた県立高校から一念発起して、早稲田大学政経学部に合格した、という話を思い出します。

大衆は、発信者が人であれ団体であれ、発言の内容ではなく、権威や実績で判断します。

そんな大衆のメンタリティを、高校生の時点で見抜いていたイケダハヤト氏の慧眼はさすがです。

もっとも、そのわりにイケダハヤト氏の現在のブロガー生活は、炎上が売り物になっているようですが。

余談ですが、私がイケダハヤト氏を「炎上帝王」と名づけてツイートしたら、ご本人からわざわざ「……」(←絶句という意味?)というリプライをもらいました。

日本有数のアルファブロガーから、リプライを頂いて光栄ですが、彼はたぶん、私のセンスがイマイチだと抗議をしたのかもしれません。

そういうネーミングのセンスひとつとっても、もっともっと教養と独自の視点が必要なんだなあと改めて思った次第です。

優雅な暮らしにおカネは要らない―貴族式シンプルライフのすすめ

優雅な暮らしにおカネは要らない―貴族式シンプルライフのすすめ

  • 作者: アレクサンダー・フォン シェーンブルク
  • 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
  • 発売日: 2006/03
  • メディア: 単行本


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