『若大将対青大将』(1971年、東宝)を観ました。加山雄三主演の若大将シリーズ事実上の最終作です。本作で若大将は、若大将の座を後輩に譲り、自分はヒロインと結婚します。一方、青大将も大学をやっと卒業しますが、相変わらず女性にフラれる役どころに変わりはありません。
加山雄三主演の
若大将シリーズは、1960年代の東宝映画を支える人気シリーズの一つでした。
その事実上の最終作品(17作目)が、今回の『
若大将対青大将』です。
「事実上の」と断りが入るのは、一応この10年後と20年後に、『帰ってきた若大将』(1981年)と『社長になった若大将』(1992年)が作られているからです。
が、それらは番外編というか、加山雄三の芸能生活20周年と30周年に、「
加山雄三なら若大将だろう」ということで作ったものですから、60年代に作られた一連のシリーズと同列に見るのはむずかしいかなという気がします。
本人も40歳や50歳を過ぎ、時代も変わったというのに、高度経済成長時代の大学生と同じ映画になるはずがないですから……。
これまで、同シリーズは最初の3作品を含めた4作品を、このブログでご紹介しました。
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それ以外の作品も、観てはいます。
ただ、シリーズの基本的な設定は最初の3作を観れば十分で、あとは毎回、加山雄三が国内外に出かけたり、スポーツをしたり、楽器を弾いたりする、加山雄三のプロモーション&観光映画のパターンです。
まあ、他の作品はまた機会があれば記事にしたいと思います。
「最終」である本作は、若大将がどうなったかといいますと、
「若大将」の異名を大学自動車部の後輩に譲り、自分はマドンナと結婚してしまいます。
マドンナは、“すみちゃん”こと
星由里子から、“せっちゃん”こと
酒井和歌子にバトンタッチしています。
上映されたのは1971年ですから、もう映画は斜陽産業。
大映は倒産。東映はプロ野球球団を売却しましたが、東宝は制作部門を分社化。専属俳優との契約も解除してしまう頃です。
それはつまり、人気シリーズもすべて終了ということです。
東宝の屋台骨を支えてきた、喜劇駅前シリーズは『
喜劇駅前桟橋』(1969年2月15日)、社長シリーズは『
続・社長学ABC』(1970年2月28日)、クレージー映画は『
日本一のショック男』(1971年12月)をもって、シリーズが終了しました。
そのひとつとして、若大将シリーズもこの時期に終了となったわけです。
全盛時は当時で5億円だった興行収入も、本作は1億円を割り込んだそうですから、いずれにしても潮時だったのでしょう。
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若大将も青大将も「卒業」してエンディング
冒頭シーンでは、若大将を勝手にライバル視していた青大将こと石山新次郎(
田中邦衛)が、やっと
京南大学を卒業します。
セリフでは、卒業まで8年かかったそうですが、シリーズ第一作目の『
大学の若大将』からちょうど10年。
途中の作品では、ハワイの大学の留学試験を受けたこともあるので、もしかしたら4年間休学して、
合計12年かかった勘定かもしれません。
それはともかく、卒業祝いは、若大将の大学自動車部後輩・太田茂夫(
大谷茂)の母の春江(
三條美紀)が経営するドライブイン「ピット」で行われました。
そこで、「若大将」は田沼雄一(加山雄三)から太田茂夫(
大谷茂)に、「青大将」は石山新次郎(田中邦衛)から、自動車部マネージャー(
高松しげお)に譲られることになりました。
新旧若大将と青大将
その日、ドライブインの前の道路で、チンピラに絡まれていた森山圭子(吉沢京子)を助けたことで、新若大将(大谷茂)は、圭子(
吉沢京子)との付き合いが始まります。
一方、石山新次郎(田中邦衛)は、自分の父親(
松村達雄)が経営する石山商事に入社。
配属された営業部には雄一(加山雄三)が働いており、隣りの文書課には“せっちゃん”(酒井和歌子)がいます。
例によって、新次郎(田中邦衛)は2人の関係に
横恋慕したり、あわよくばと圭子(吉沢京子)にもちょっかいを出したりしますが、結局どちらも実りません。
雄一(加山雄三)は“せっちゃん”(酒井和歌子)と結ばれ、新次郎(田中邦衛)の策略で、誤解のあった新若大将(大谷茂)と圭子(吉沢京子)も仲直りします。
その後、
新若大将(大谷茂)による作品は作られていませんが、この時は、まだ作る気はあったのかどうか気になります。
当時、大谷茂は、東宝の『社長学ABC』『続・社長学ABC』でも、若手社員役で出演していましたが、なんとも華のない役者で、失礼ながら後継者は
荷が重すぎる気がしました。
この時期、やはり東宝で期待されていた、
東山敬司という役者がいたのですが、
マルベル堂サイトより
こちらは、
セリフ棒読み、というより怒鳴り読みの超大根芝居ながら、もともと加山雄三二世で売り出しましたし、
元気が良くて悪気のない天然のところは、若大将の後継者にピッタリだと思ったのですけどね。
なぜ彼でなかったのか、
外部の人間にはわからない、何か社内事情があったのかもしれません。
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