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『としごろ』和田アキ子、森昌子、石川さゆりの扱いに今も謎が [懐かし映画・ドラマ]



『としごろ』(1973年、松竹)を観ました。「松竹・ホリプロ提携作品」と銘打たれており、和田アキ子と、当時新人賞をとったばかりの森昌子が重要な役で出演、持ち歌も歌っています。その一方で、彼女と“花の中三トリオ”を組んでいた山口百恵は格下の役で歌も披露せず、デビュー間もない石川さゆりに至っては、劇中の不可解な扱われ方が、今もファンの間には謎として語られています。(画像は劇中から)



『としごろ』というタイトルは、後に歌謡界に名を残した、山口百恵のデビュー曲のタイトルでもあります。

としごろ

しかし、映画では彼女は、その他大勢の役。

持ち歌を披露することもありません。

何より、設定された役柄が、後の、山口百恵自身のキャラクターや、出演した映画やドラマでも使われた「薄幸」な役ではありませんでした。

レストランの支配人を兄(東八郎)に持ち、所属する中学のバレー部の食事会を、そのレストランで会費も取らずに主催するお嬢さん役なのです。

山口百恵

ストーリーは、その中学女子バレー部の部員たちの生活を描いています。

としごろタイトル

その中でも、中心人物として描かれているのは森昌子です。

森昌子

持ち歌を3曲も披露しています。

前年、『せんせい』が大ヒットし、第14回日本レコード大賞・新人賞、第3回日本歌謡大賞・放送音楽新人賞を受賞していました。

せんせい

ホリプロとしても、イチオシのタレントであったのだと思います。

映画の舞台は、「小野町商店街」と劇中に出てくるのですが、京急バスが走っているところを見ると、神奈川県横浜市鶴見区小野町ではないかと思います。

要するに、京浜工業地帯が舞台です。

これだけで、いかにも1970年代という感じがします。

森昌子は、山口百恵の1年先輩ということになっていて、卒業後は高校に進まず、実業団のある大きな会社にも入らず、地元の板金工場で働きます。

同僚(夏夕介)と親しく、主任(村野武範)が相談相手です。

当時、森昌子は、『飛び出せ!青春』(1972年2月20日~1973年2月18日、東宝/日本テレビ)で、レッツビギンの河野先生を演じていた村野武範に憧れ、定期入れに村野武範のプロマイドを入れていたと、芸能雑誌のインタビューで告白していました。

レっツ・ビギン
『飛び出せ!青春』より

この共演で知り合い憧れたのか、憧れていたことを知っていた事務所が村野武範をキャスティングしたのかは定かではありませんが、そんなエピソードを思い出しました。

和田アキ子は、バレー部出身者で、卒業後もコーチをしている設定です。こちらも持ち歌も歌っています。

和田アキ子

「松竹・ホリプロ提携」ではありますが、ホリプロ所属ではない西城秀樹や堺正章も出演。やはり持ち歌も歌っています。

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石川さゆりをどうしたかったのか


これだけですと、たんに人気タレントが顔見世して持ち歌を歌っただけのようですが、この映画の“見どころ”はそれだけではありません。

もうひとり、本当はホリプロ3人娘で売り出すはずだった、映画公開の1ヶ月前にデビューした石川さゆりも、バレー部員のキャプテンという重要な役どころで出演しています。

石川さゆり

デビューしたてですから、本当ならこの映画は彼女にとって大切なプロモーションの場であるはずですが、何と彼女は、街のチンピラに因縁をつけられて、衣服を脱がされ暴行されます。

その結果、妊娠してしまい世を儚み、勉強勉強と追い詰められていた同級生の秀才と心中してしまいます。

はっきり裸体も見せています。

そのシーンは吹き替えかもしれませんが、その前の段階の、乱れた下着姿は本人です。

これは、当時15歳だった彼女のアイドルとしての売り出しを、事務所自らが決定的に潰してしまったに等しい行為です。

なぜこんなシーンを入れたのでしょうか。

かりに乱暴されるにしても、わざわざ本当の裸や、はだけた下着姿まで見せる必要はあったのでしょうか。

石川さゆりは、同年暮れには、“青い性典”路線があたった山口百恵の主演映画『伊豆の踊子』で、やはり遊郭で病死してしまう役を演じています。

森昌子や山口百恵に比べて、なぜ自分はそんな扱いなのか、と石川さゆりは考えなかったのでしょうか。

そして、ホリプロは当時、いったい石川さゆりをどういう路線で売っていくつもりだったのか、謎の残るところなのです。

なお、この映画には、『おれは男だ!』(1971年2月21日~1972年2月13日、松竹/日本テレビ)で、主人公・小林弘二(森田健作)の妹役を演じた、松本うたかが、やはり部員役で出演しています。

松本うたか

松本うたかは、『おれは男だ!』では、はつらつと妹役を演じていたのに、その後の出演歴がないので、マニアからは伝説の人扱いなのですが、それにしても、歯の矯正ワイヤーとブラケットをつけたままで、アップでうつるとは……。

当時の映画はおおらかでよかったですね。

そんな感じで、当時を覚えている者からすると、興味深い作品です。

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