SSブログ

『日本プロ野球 トレード大鑑』移籍をめぐるドラマ [スポーツ]

日本プロ野球 トレード大鑑

『日本プロ野球 トレード大鑑』(ベースボールマガジン社)というムックを読みました。これまでの、プロ野球選手の移籍の記録を、移籍後、それらの選手がどうなったかという寸評とともにまとめたものです。実際にトレードを経験した元選手のインタビューも掲載されています。



私は、世間にいるごくありふれた少年・青年として、プロ野球に熱中していましたが、プロ野球中継の地上波の撤退とともに、以前ほどは夢中ではなくなってしまったように思います。

理由は、戦い方もシステマチックで、チームの編成の仕方が、以前よりもつまらなくなったように思えるからです。

まず戦い方。

昭和のプロ野球は、先発ピッチャーの間隔はもっと短く、かつリリーフを兼ねることもありました。

たとえば、負けている試合を、9回の表でひっくり返すと、その裏は、翌日先発予定の投手が登板する、なんてハプニングも有りました。

でも今は、そういう試合展開でも、まず「翌日先発予定の投手」は出てこないですよね。

先発ローテーションは週1回。

抑え投手は、勝ってる試合に1イニングだけ。その前には「セットアッパー」なるつなぎのポジションもいつのまにかできてしまい、複数回投げると「回またぎ」などと大騒ぎ。

昭和40年代後半は、ベンチに入る投手は6人でしたが、今は10人ぐらい入ることもありますよね。

そんな過保護な環境で、80試合や90試合投げたって、稲尾和久の記録を破ったとは言われたくないですよ。

要するに、簡単なアルゴリズムですすめる野球ゲームのようなものです。

(もちろん故障者とか、試合を作るまでの采配は必要ですが)

もうひとつは、魅力的なトレードがなくなってしまったことです

FA制度ができて、選手の意志と球団の裏交渉で、ほしい選手を一本釣りできるようになりました。

昔は、ほしい選手とのトレードに、自軍から誰かを差し出さねばならず、そこでまた別のトレードを行ったりと、編成が今よりも複雑でした。

そして、戦力外通告とトライアウトも表向き公明正大にやりますが、昔は、12月1日の自由契約選手公示日になって、急に余剰戦力が出てしまい、その争奪戦が勃発するなど、自由契約の時期にもドラマがありました。

そんな、プロ野球をおもしろくした「トレードの歴史」をまとめたのが本書です。

2001年以来改訂を重ね、今回は2015年シーズンまでが記載されています。

ああ、あの時のトレードはこういう狙いだったのか、と、当時を思い出しながら熟読しています。

スポンサードリンク↓

トレードだけでなく自由契約にも興趣がある


インタビューは、江本孟紀[東映ー南海ー阪神]、鹿取義隆[巨人ー西武]、上川誠二[中日ーロッテ]、淡口憲治[巨人ー近鉄]の各氏が登場しています。

彼らの話ももちろんリアリティがあって有意義でしたが、2001年版の上田利治、落合博満の各氏のような「超大物」のインタビューを、のまま掲載できなかったのがちょっと残念ですね。

上田利治氏は、阪急監督時代、中日にトレードに出すことが決まっていた森本潔三塁手が、事実上日本一を決める本塁打を打った時に涙が溢れて本人の顔が見られなかったとか、アンダースローの高橋直樹(日本ハム)対策に、関西大学後輩の左打者・藤井栄治(阪神ー太平洋ー阪急)を、自由契約になったところを獲得して成功した、といった話をしていました。

トレードの妙・ドラマといえる話だったので、私は本書も含めてそれが最高のインタビューだと思っています。

今は、自由契約⇒戦力外⇒トライアウト、という図式しか頭に浮かびませんが、上田利治監督の話にあるように、昔は、自由契約になることは、場合によっては自分の新たな商品価値が見いだされる機会でもあったのです。

たとえば、王貞治も、落合博満も、選手としては自由契約で終わっているはずです。

本来、野球選手というのは、一匹狼の職人なんだ、ということなんでしょうね。

そういう意味では、現在は、組合となった選手会が、あまりにも成果を出しすぎたかもしれません。

FAやポスティングもあり、代理人やマネジメント事務所も使う選手が出始め、オフシーズンも確保した。

これだけプロ野球選手の身分が向上している以上、はたして今のような桁外れの報酬が必要なのかどうか懐疑的です。

1球団の選手報酬枠が約30億。

その半分でいいんじゃないの、という気もしますけど、どうなんでしょうね。

日本プロ野球トレード大鑑―移籍が男を強くする! (B・B MOOK 1221)

日本プロ野球トレード大鑑―移籍が男を強くする! (B・B MOOK 1221)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ベースボールマガジン社
  • 発売日: 2015/08/03
  • メディア: ムック


nice!(308) 
共通テーマ:スポーツ

nice! 308

Facebook コメント

Copyright © 戦後史の激動 All Rights Reserved.
当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます