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タマネギの健康情報、本当の話 [健康]

タマネギ

タマネギの健康法にはエビデンス(実証的根拠)がない、という記事が今日発売の『週刊文春』に出ています。国内生産量が115万4千トンを誇る主要野菜が、健康食品になるならこんな嬉しいことはありませんが、健康情報としての認定は体験談だけでは足りません。



記事のタイトルは、『「体験談」だけでエビデンスなし、酢タマネギ、タマネギ紅茶、タマネギ氷…「タマネギ健康法」にダマされるな! 』というものです。

たとえば、「酢たまねぎ健康法」でネットを検索すると、15万6000件も候補が出てきます。

それらを順に見ていくと、動脈硬化や高血圧の予防、コレステロールや中性脂肪を減らす、不眠や便秘の解消など、健康効果がいろいろ書かれています。

しかし、よく読むと、「酢玉ねぎにして食べることで、お酢と玉ねぎのこれらの効果がより高まる」(NHK『ためしてガッテン』公式サイトより)と書かれていて、要するに、「酢」と「タマネギ」それぞれの成分をもとに、従来いわれてきたそれらの健康効果を単純に足したものになっています。

しかし、酢タマネギの健康効果を客観的に示すなら、酢タマネギを食べた場合と、普通の玉ねぎや他の野菜などを食べた場合、さらに何も食べない場合などと比べなければわからない、という話が、記事には書かれています。

これは、タマネギに限らず、あらゆる健康法にいえるもっともなことです。

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その健康情報は本当に信用できるのか


理系の方とっては「いろはのい」にあたる話ですが、疫学調査は、対照実験によって結果の差を推計統計学的に考慮して、有意差があったかどうかを判定しなければなりません。

「対照実験」というのは、酢タマネギを食べたグループと、そうでないグループを設定することです。

そして、一定期間後にその違いを見て、グループごとの明らかな差があるものから、初めてその効果を考察できるのです。

ですから、「酢タマネギを食べたら不眠症が解消された」という体験談がいくらあっても、それだけで酢タマネギに不眠症の健康効果があるとはいえない、ということです。

あっと驚くスクープを連発する『週刊文春』にしては、きわめてオーソドックスな内容です。

このブログでは以前、医学的に信頼の置ける健康情報となるには、5つのステップがあるとご紹介しました。

補完代替療法の効果、安全性、信頼性を見極める方法は?

健康情報のフローチャート

「酢玉ねぎで体の調子が良くなった」という体験談だけの健康情報は、ステップ1の段階で「それ以上考慮しない」ことになります。

要するに医学的には、本気にすんな、というレベルの「情報」でしかありません。

根拠となる研究があっても、試験管や動物実験のものだけでは「話半分」。

学会発表されても、まだ「研究価値の価値は未確定」で、上記のように対照実験でなければ「重視しない」。

さらに、複数の研究で支持されていることが条件です。

巷間、出回っているダイエットや健康情報のほとんどは、ステップ1かステップ2、せいぜいお手盛りの学会で発表されたステップ3止まりでしょう。

タマネギは色が違うと抗酸化の力も違うか?


ところで、私たちの食卓でよく使うタマネギには、白いタマネギと紫色のタマネギとがあります。

白いタマネギ

紫タマネギ

最近は、辛味や刺激臭が少ないタイプとして、紫玉ねぎが注目されています。

この色の違いは、栄養価や健康作用に違いをもたらすのでしょうか。

『食べて健康のウソマコト』を書いている加藤秀夫氏(県立広島大学名誉教授)は、かつて『日刊ゲンダイ』(2012年5月29日付)でこうコメントしています。
「では、黄玉ねぎと紫玉ねぎでは、どちらが抗酸化作用が強いのでしょうか。玉ねぎの抗酸化作用は、外皮に含まれる「ケルセチン」という成分の働きによるものです。しっかり色がついた紫の方が有利に思えます。
 そこで、こんな実験をしました。A「活性酸素溶液+水」、B「活性酸素溶液+黄玉ねぎ」、C「活性酸素溶液+紫玉ねぎ」という3つのビーカーを用意して、活性酸素に反応して青く変色する試験紙を浸します。玉ねぎはそれぞれスライスして生食時と同じく1分ほど水にさらし、それをすり潰して液状にして加えました。
 その悪果、A「水」は真っ青でしたが、B「黄」、C「紫」は、どちらも薄い色のまま。いずれの玉ねぎも同様の抗酸化作用があることが分かりました。玉ねぎサラダを食べる時は、色を気にする必要はありません。」

このブログでは、これまでにも、食材の色や種類の違いで栄養価が変わるのか、という記事を書いてきました。

キウイ、サクランボ、色で栄養は違うのか
トウモロコシとメロン、色による味と栄養の違い

これまでは、若干違いがあったのですが、今回のタマネギは「抗酸化」について調べたところ、違いはないということです。

週刊文春 2015年 6/18 号 [雑誌]

週刊文春 2015年 6/18 号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/06/11
  • メディア: 雑誌


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