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『水滸伝』中村敦夫主演テレビ版と原作の違い [懐かし映画・ドラマ]

水滸伝

『水滸伝(すいこでん)』といえば、「中国四大奇書」の一つとして我が国でも有名な物語です。中国の北宋末期、汚職官吏や不正に対して、それぞれいわれなき理由で世間からはじき出された好漢たちが、梁山泊と呼ばれる要塞に集結。悪徳官吏を打倒し、国を救うことを目指すようになる話です。私は、テレビドラマ化された中村敦夫主演の『水滸伝』(1973年10月2日~1974年3月26日、国際放映/日本テレビ)以来、この物語に関心を持っています。(画像も同作より)



『水滸伝』は、明代の中国で書かれた伝奇歴史小説が原作です。

12世紀初めに、36人が梁山泊の近辺で反乱を起こした史実をもとに、108人の義賊による壮大な物語に創作されたと言われています。

天傷星、天狐星など、108の魔星が各地に飛び散り、その生まれ変わりといわれる人々がいろいろな経緯から梁山泊に集まり、義賊として時の権力者の打倒を目指す展開です。

日本には江戸時代に輸入され、翻訳されたり、日本の作家によって日本版の小説として著されたりしています。いわゆる翻案ですね。

また、『水滸伝』としてではありませんが、滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』のように、ストーリーや設定こそ異なるけれど、明らかに影響を受けている作品もあります。

映画やテレビドラマもつくられています。

何より、私にとってもっとも印象深いのは、1973年に国際放映・日本テレビで作られた、横山光輝原案の中村敦夫主演ドラマです。

日本テレビの開局25周年作品として制作され、毎週火曜日の夜、1時間ドラマとして半年間(26話)放送されました。

同年の春クールでは、NHKが『ひょっこりひょうたん島』以来の帯番組ヒット作として、『新八犬伝』を放送しています。

辻村寿三郎の人形と、坂本九のナレーションが懐かしいですね。

同作は、『南総里見八犬伝』に、やはり滝沢馬琴の『椿説弓張月』をアレンジしたオリジナル作品ですが、「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」という文字が浮き出る8つの玉をそれぞれ持つ八犬士が、悪代官・悪党・怨霊らとたたかい活躍するストーリー。108の玉が飛び出す『水滸伝』の影響を受けていると思われます。

ですから、同作のヒットが、『水滸伝』に対する関心を高め、同年秋クールの日本テレビ開局25周年ドラマの企画にもつながったのではないかと思います。


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テレビドラマは豹子頭・林冲が主人公


梁山泊というのは盗賊のアジトです。

といっても、彼らはもともと、官吏や軍人、商人など、お金や権力を持った社会的に信用される立場にいた優秀な人たちで、それがゆえに時の権力者から自分を脅かすものとして恐れられ、罠にはめられて“反社な人”のレッテルを貼られてしまうのです。

梁山泊はあくまでも義賊であり、民衆のためにたたかうことをモットーとしています。

彼らは、その恨みを晴らすとともに、民衆の社会にするために彼らを倒すのです。

梁山泊の首領は、天魁星・呼保義・宋江(大林丈史)といいますが、日本テレビ版では、槍の名手である元軍人の天雄星・豹子頭・林冲(中村敦夫)が主人公として描かれています。

中村敦夫
『水滸伝』(国際放映/日本テレビ)より

林冲は、小蘭(松尾嘉代)を妻にもち、腕もたち人望もある軍人。

民衆のために暴れている男・武松(ハナ肇)に対しては、立場上成敗するふりをしながらわざと負けて見逃します。

武松は、そんな林冲に、民衆に対する義を感じます。

実は武松も、108の魔星のひとつである天傷星・行者・武松でした。

上司である近衛軍総司令・呼延灼(丹波哲郎)も林冲に期待を寄せていましたが、金でその座を買い取った高求(佐藤慶)に追われ、僻地に左遷させられてしまいます。

原作では、天威星・双鞭・呼延灼ですが、ドラマでは、その後も、山賊に身を落としても義の心をもつ林冲を成敗せず見逃す軍人として描かれています。

そしてドラマでは、もっぱら悪役を引き受けているのが高求(佐藤慶)です。

梁山泊に集まった好漢たちは、必ずといっていいほど、高求の策略から梁山泊に行かざるを得なくなっています。

26話中、1度も休まず全話出演しているのは、林冲と高求だけです。

このブログでは、これからこの26話に出てくる好漢たちについて書いていきたいと思います。
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