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『白い巨塔』(1978年版)紳士然としている人間こそ裏がある!? [懐かし映画・ドラマ]

『白い巨塔』(1978年版、田宮二郎主演、フジテレビ)の第1部をDVD(1巻~3巻)で鑑賞しました。この作品は、リアル放送時、再放送、CSフジテレビでの放送とその都度見ていましたが、DVDを鑑賞するのは初めてです。10年ぶりに観ましたが、作品の魅力は全く色褪せることなく一気に第10回まで観てしまいました。



『白い巨塔』(1978年版)は、1978年6月3日~1979年1月6日にかけて全31回放送されました。

うち第1部の「教授選挙」までが10回(DVD1巻~3巻)、第2部といえる「教授としての誤診と裁判第一審勝訴」(DVD4巻~6巻)が10回、それ以降は原作では『続・白い巨塔』として執筆されたものです。

『白い巨塔』は、言わずと知れた山崎豊子さん原作の作品。

『アサヒ芸能』(2013年10月17日号)より
『アサヒ芸能』(2013年10月17日号)より

その時点で2回映像化されていましたが、

1966年、大映(田宮二郎主演)
1967年、NET(佐藤慶主演)

どちらも、『続・白い巨塔』までは含まなかったので、『白い巨塔』(1978年版)は、初めての『白い巨塔』『続・白い巨塔』を全て映像化した作品になりました。

映画版は山本薩夫監督。医師の権力欲や、誤診を真っ向から厳しく問う社会派の作品に仕上がっています。

予告編より
予告編より

予告編が、いかにも山本薩夫監督らしいですね。

一方、テレビドラマの方は、全31回(合計24時間)という長丁場で、登場人物の人間性を掘り下げたヒューマンインタレストな作品に仕上がりました。

財前五郎(田宮二郎)の人間的な弱さ、東貞蔵(中村伸郎)の策略家ぶり、里見脩二(山本学)の医師としての誠実さなどをじっくり描いています。

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見どころ


あらすじは、浪速大学第一外科の東教授が、定年退官するにあたって、消化器外科の名医として医局員の信頼も厚い財前助教授に嫉妬。母校の東都大から移入教授を目論むことで、ポストや研究費助成、そして現金までが飛び交うダーティーな選挙戦になったという話です。

要するに、教授職は財前五郎の野望でもあるわけですが、そもそも教え子に嫉妬して様々な策略を巡らせた東教授こそが、選挙戦をダーティーにしてしまったおおもとの原因です。

世の中は、紳士然としている人間こそ裏がある、という懐疑心を当時少年だった私はドラマから教わりました。

その偽善な策略家を、中村伸郎が好演しているのが見どころです。

ただ、救いといいますか、どんなにダーティーな面を描いても、財前や東には、ときおり医師としての良心や挟持を見せることがあるのです。そのへんがよかったですね。

後半は、財前五郎、というより田宮二郎と同年代で、同じような経歴をもちながら対照的な俳優人生を送った児玉清も登場するので、それもまた楽しみです。

第1部の2つの謎


『白い巨塔』(1978年版)の第1部には、以前から2つの謎があります。

なぜ医院のままで病院にしないのか


ひとつは第2回。岳父・財前又一(曽我廼家明蝶)の財前産婦人科医院が繁盛しているので、五郎は、「お義父さん、どうして病院になさらないのですか?」と尋ねますが、又一は、その方が儲かる、どうしてそうなのかはそのうち教えると答え、結局最終回まで教えるシーンはお目にかかれませんでした。

病院と医院(診療所)の違いは、患者を20人以上収容する医療機関であるか、患者19人以下もしくは収容施設を持たない医療機関であるかですが、それだけでは「どちらが儲かるか」はわかりません。ドラマを見た限りでは、又一は往診も行っているようです。

往診を行うことで、あまり他人様に知られずに治療を受けられる対価が多いのかな? なんて考えもしましたが、未だに答えはわかりません。

『ナニワ金融道』という青木雄二氏のまんがでも、産廃業者が株式会社として登記せず、個人事業にしたほうが儲かるという話が出てきたと記憶しています。

世の中には額面通り考えていたらわからない裏があるのでしょうね。

16票の内訳はどうだったのか


もうひとつは、第10回の教授選決選投票の内訳です。

第1回の投票で財前が12、東教授の推す菊川(米倉斉加年)が11、野坂教授(小松方正)のグループが推す葛西が7でした。

そこで、財前派、菊川派によって、小松方正の持つ7票の奪い合いになります。

菊川派は、今津教授(井上孝雄)を使者にして、東都大学船尾教授(佐分利信)の影響力を使った、小松方正の整形外科学会理事の椅子と、他3人の研究費助成を約束します。

財前派は、鵜飼医学部長(小沢栄太郎)の権限を使った新設小児外科の人事権と、医学部同窓会の口添えと、財前又一から1票あたり100万円で投票を依頼。

結果的に、財前16、菊川14で財前が勝利しますが、単純にかんがえると、小松方正が財前4、菊川3に票を割り振ったと考えられます。

研究費助成を約束された人が3人菊川に投票して、小松方正が財前に入れたと考えるのが順当です。

結局勝ち馬(第1回の得票が多い財前)に乗ろうという結論になったのかもしれません。

が、テレビでは、「なぜ16票しか集まらなかったのか」という話になった時、小沢栄太郎の表情がうつり、小沢栄太郎が菊川に寝返った可能性もうかがえる演出をしています。

原作は、票の内訳を明らかにしていません。

つまり、ここは読者・視聴者が、いかようにも推理できるようになっています。

『白い巨塔』ファンのあなたはどう推理されましたか。

白い巨塔 DVD-BOX1~浪速大学医学部教授戦~

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