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『新仁義なき戦い』安藤昇が広島の大親分を演じた実録作品 [懐かし映画・ドラマ]

新仁義なき戦い

『新仁義なき戦い』(1974年、東映)を久しぶりに観ました。「仁義なき戦い」シリーズの第1作目で使われた原作をもとに、別の角度からストーリーを構成したシリーズ第6弾といわれる作品です。そこでは、ストーリーのカギを握る広島の大親分役に、訃報が話題になっている安藤昇が出演しています。



今年の夏、『東京スポーツ』で、俳優・安藤昇を振り返る特集があり、本人のインタビューも連載されていましたが、本人も最期を覚悟されていたのかもしれませんね。

経歴については、ネットでいろいろ出てますので、いまさら知ったかぶって私が書くことはないかもしれませんが、戦後間もなく法政大学在学中に、学生の仲間たちと渋谷で東興業(安藤組)を立ち上げ、その世界では一世を風靡したようです。

古典的なヤクザ組織とは違い、東興業(安藤組)は刺青や指詰めは厳禁。グレーの背広が「制服」で、盃事もせず同志的なつながりであったことや、安藤昇氏自身に渡世歴がなかったことから、安藤組はヤクザ組織ではなく愚連隊と定義されていますね。

借りた人から、金をきちんと返さない横井英樹に腹を立てて襲撃。

その懲役中に、花形敬など幹部が命を奪われ、悲しむその人たちの親を見て、葬儀の場で組解散を決意したといいます。

東興業には、とくに幹部は大卒や大学中退が多かったのですが、それは高学歴というだけでなく、実家がきちんとしている⇒帰るところがある、ということであり、それもすみやかに組の解散を決意できた背景にあったのかもしれません。

そして俳優に。松竹→東映と行動をともにした菅原文太や、松方弘樹らと歩いている当時の写真が上記の『東京スポーツ』に掲載されたのを見た時は、もっとも格好良く写っているように思いました。

そして、俳優引退後は、著述やプロデュース業に転向。

安藤組(東興業)にしろ、俳優業にしろ、スパっとやめてしまう潔さが、「転職」後の世界でも成功できた要因の一つではないかと私は思います。

まだ「映画俳優」として稼げる時代に、松竹とは破格の金額で契約。映画界が斜陽になると俳優をやめています。

タイミングを間違えば、高額な契約金や出演料も入らなかったし、俳優廃業時が遅れたら、出演作が不入りで俳優として不名誉な思いをしたかもしれません。

以前、桜井章一氏の書籍『ツキの正体』をご紹介しましたが、桜井章一氏は、決断力のはやさが大切だと説いています。

『ツキの正体』野生のカンは自分に素直に生きることから

「今」はあくまでその瞬間。状況は刻一刻と変わっており、時間をかけて答えを出しても、もうそれは過去のものになっており、「今」に対しては「今」対応するしかないということです。

凡人は、転身をはかるときは、ついいろいろグスグズ考えてしまい、結局タイミングを逃して前に進めないことが少なくないものです。

安藤昇氏はそうではなかった、ということでしょうね。

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広島の大親分を演じる


安藤昇
Google検索画面より

私は世代的に、松竹時代の安藤昇についてリアルタイムで映画を観たことはないのですが、東映移籍後の「仁義なき戦い」に始まった実録シリーズ第6弾、『新仁義なき戦い』(1974年、東映)は観ました。

海津卯之吉という役名でしたが、これは戦後広島の大親分に君臨した組長のことだといわれています。

広島博徒の大親分が原爆で亡くなり、その後は激しい戦いの後にその組長が統一したのですが、警察のマークやそれまでの戦いから体調を崩し引退。

その組の跡目を継ぐと言われたタクシー会社社長の舎弟と、実際に継いだ、というより自分の組に合併したキャバレーのオーナーによる抗争(代理戦争)が、『仁義なき戦い』のベースになっているといわれています。

ですから、安藤昇の役どころはかなり大物がキャスティングされるところで、たとえば、『仁義なき戦い代理戦争』では、山口組三代目と思われる組長役を丹波哲郎がセリフ無しで演じています。

最近は、暴力団排除の法律もできて、今やコンビニにあったピカレスクロマンの書籍もほとんど消えてしまいましたが、その一方で、「仁義なき戦い」シリーズは、レンタルDVDがいつも予約でいっぱいとか。

暴力団の是非とは別に、いや、否だからこそ、演者やスタッフによる、踏み込んだ制作姿勢が改めて評価されているのでしょう。

安藤昇氏の書籍はよく読みましたが、映画の方は、まだ観ていないものも多々あるので、これから少しずつ鑑賞していきたいと思います。

新 仁義なき戦い [DVD]

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