森繁久彌社長シリーズ最終作『社長紳士録』『社長学ABC』鑑賞 [東宝昭和喜劇]
『社長紳士録』『続・社長紳士録』(1964年)、そして『社長学ABC』『続・社長学ABC』(1970年)という東宝昭和爆笑喜劇黄金時代を支えた森繁久彌社長シリーズ“最終回”を続けて鑑賞しました。『続・社長紳士録』は、隔週発売の『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』(Vol.39)に収録されています。
昭和の好きなこのブログでは、1960年代の東宝昭和喜劇映画黄金時代の作品について何度か書いてきました。
当時は、森繁久彌が社長を演じる「社長シリーズ」、伴淳三郎、フランキー堺、森繁久彌による群像喜劇の「喜劇駅前シリーズ」、植木等やクレージーキャッツ全員が出演した「クレージー映画」。さらに60年代中盤から後半にかけては「てなもんやシリーズ」、「コント55号」「ザ・ドリフターズ」といった、明るく楽しい喜劇を作ってきました。
その中核となったシリーズは、森繁久彌が社長を演じる「社長シリーズ」でした。
地上波でもCSでも何度も放送されてきたので、若い世代の方もそのような映画作品がある、ということぐらいはご存知かもしれませんね。
森繁久彌自身も「東宝の表看板はクロサワ映画だが、それを支えているのは社長シリーズ」と言っていたといいます。
そのシリーズの最終話が、『社長紳士録』『続・社長紳士録』、そして『社長学ABC』『続・社長学ABC』です。
でも、最終というなら普通1作ですよね。
なぜ4作かというと、まず、社長シリーズはひとつの設定で正・続編と2作品が製作されるので、「最終話」も2作品でひとつのストーリーになっています。ですから2作品でひとつのお話という解釈をしています。
そして、本来は『続・社長紳士録』で終了する予定だったシリーズは、映画館館主やファンの意向で続行されたため、本当の最終作が『続・社長学ABC』になったので、4作品というわけです。
記録上の最終作は『社長学ABC』『続・社長学ABC』であって、『社長紳士録』『続・社長紳士録』は最終作ではないわけですが、少なくとも『続・社長紳士録』を撮影していた時点では、スタッフも俳優も、「これが最後だ」というつもりで作り、脚本もそのような設定で完成してます。
そこで、「記録上の最終作」は『社長学ABC』『続・社長学ABC』でも、「事実上の最終作」は4作というわけです。
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『社長紳士録』正続編、『社長学ABC』正続編とも、脚本は笠原良三、監督は松林宗恵です。
『社長紳士録』『続・社長紳士録』では、森繁久彌大正製紙常務は、社長(左卜全)の要請で子会社の大正製袋社長に就任。そのとき、一緒に小林桂樹秘書も連れて行きます。
大正製袋には、加東大介営業部長や三木のり平総務部長がいます。
正編の『社長紳士録』では、いったん白紙にされた、フランキー堺演じる鹿児島の澱粉会社との契約を再び締結するまでを描いています。
続編の『続・社長紳士録』は、京塚昌子が芸者役で出演したことはすでに書きました。
ストーリーは、森繁久彌社長が、ライバルである大正製紙専務(中村伸郎)が就任すると見られた大正製紙社長に就任します。
最後のシーンは、森繁久彌社長海外視察のお見送りパーティーという設定で、主演の森繁久彌が、藤本真澄プロデューサー、笠原良三、千葉泰樹、青柳信雄、杉江敏男、松林宗恵といった同シリーズの脚本・監督陣らとの握手。
さらに本編では出演していなかった人も含めて、シリーズに出演した俳優陣が正装して蛍の光を歌います。
まさに東宝黄金期を支えた人気シリーズを、大団円で見送るという東宝らしいフィナーレでした
それにしても、同作の松林宗恵監督がカメオ出演して握手していたということは、そのシーンはいったい誰が監督したのでしょうか。
それはともかく、記録上真の最終作となった『社長学ABC』『続・社長学ABC』は、すでにレギュラーメンバーだった三木のり平、フランキー堺が『社長千一夜』(1967年)で降板。
小林桂樹は加齢で設定が秘書から役員に出世。関口宏が秘書役でした。
また、映画衰退から東宝が制作部隊を別会社に分社化して専属俳優を解雇する前年だったために、お馴染みの大部屋俳優たちもほとんど出演していません。
森繁久彌、久慈あさみ夫妻宅には多い時で5人いた子どもも、同作ではいなくなってしまいました。
ストーリーは、森繁久彌大日食品社長が、親会社である大日物産社長(東野英治郎)に次期社長を要請され、小林桂樹営業担当専務を後釜の社長に、加東大介総務部長を専務に、藤岡琢也営業課長を営業部長に昇格させました。
ところが、大日物産の業績伸び悩みから株主が社長交代に賛成しなかったという理由で、森繁久彌社長の就任は延期に。
しかたなく、大日食品の会長として手持ち無沙汰な日々を送ることになりますが、『続・社長学ABC』で無事大日物産の社長に就任します。
最後のシーンは、フランキー堺がいつも演じていた怪しいバイヤー(小沢昭一)を加えて人工肉の試食会が開かれ、関口宏と内藤洋子のデートシーンで森繁久彌社長シリーズは幕を閉じました。
まあ、こちらも森繁久彌社長が社長に就任するというハッピーエンドではあるわけですが、『続・社長紳士録』のような大団円のシーンはありませんでした。
『続・社長紳士録』のときは、まだ映画界にも東宝にも力が残っていて、社長シリーズも余力があるうちにクレージー映画にバトンを渡す、という趣だったのです。
が、『続・社長学ABC』のときは、もう東宝としても、シリーズとしても、最終作やむなしかな、という寂しさを感じざるを得ませんでした。
でも、「やっぱり『社長紳士録』でやめておけばよかったのだ」とはいえません。
もし64年で社長シリーズを打ち切っていたら、映画界の衰退はもっとはやかったかもしれませんから。
いずれにしても、どちらの「最終」も、その時の背景を考えるとそれぞれ興味深いものでした。
この頃前後して、東宝の駅前シリーズ、クレージー映画シリーズ、加山雄三の若大将シリーズも終了。
他社では大映が倒産。東映も少し時間はズレますが、高倉健や菅原文太などがフリーになるなど、東宝だけでなく我が国の映画界が「古き良き時代」に区切りをつけることになります。
昭和の好きなこのブログでは、1960年代の東宝昭和喜劇映画黄金時代の作品について何度か書いてきました。
当時は、森繁久彌が社長を演じる「社長シリーズ」、伴淳三郎、フランキー堺、森繁久彌による群像喜劇の「喜劇駅前シリーズ」、植木等やクレージーキャッツ全員が出演した「クレージー映画」。さらに60年代中盤から後半にかけては「てなもんやシリーズ」、「コント55号」「ザ・ドリフターズ」といった、明るく楽しい喜劇を作ってきました。
その中核となったシリーズは、森繁久彌が社長を演じる「社長シリーズ」でした。
地上波でもCSでも何度も放送されてきたので、若い世代の方もそのような映画作品がある、ということぐらいはご存知かもしれませんね。
森繁久彌自身も「東宝の表看板はクロサワ映画だが、それを支えているのは社長シリーズ」と言っていたといいます。
そのシリーズの最終話が、『社長紳士録』『続・社長紳士録』、そして『社長学ABC』『続・社長学ABC』です。
でも、最終というなら普通1作ですよね。
なぜ4作かというと、まず、社長シリーズはひとつの設定で正・続編と2作品が製作されるので、「最終話」も2作品でひとつのストーリーになっています。ですから2作品でひとつのお話という解釈をしています。
そして、本来は『続・社長紳士録』で終了する予定だったシリーズは、映画館館主やファンの意向で続行されたため、本当の最終作が『続・社長学ABC』になったので、4作品というわけです。
記録上の最終作は『社長学ABC』『続・社長学ABC』であって、『社長紳士録』『続・社長紳士録』は最終作ではないわけですが、少なくとも『続・社長紳士録』を撮影していた時点では、スタッフも俳優も、「これが最後だ」というつもりで作り、脚本もそのような設定で完成してます。
そこで、「記録上の最終作」は『社長学ABC』『続・社長学ABC』でも、「事実上の最終作」は4作というわけです。
2つの“最終作”の違いは……
『社長紳士録』正続編、『社長学ABC』正続編とも、脚本は笠原良三、監督は松林宗恵です。
『社長紳士録』『続・社長紳士録』では、森繁久彌大正製紙常務は、社長(左卜全)の要請で子会社の大正製袋社長に就任。そのとき、一緒に小林桂樹秘書も連れて行きます。
大正製袋には、加東大介営業部長や三木のり平総務部長がいます。
正編の『社長紳士録』では、いったん白紙にされた、フランキー堺演じる鹿児島の澱粉会社との契約を再び締結するまでを描いています。
続編の『続・社長紳士録』は、京塚昌子が芸者役で出演したことはすでに書きました。
ストーリーは、森繁久彌社長が、ライバルである大正製紙専務(中村伸郎)が就任すると見られた大正製紙社長に就任します。
最後のシーンは、森繁久彌社長海外視察のお見送りパーティーという設定で、主演の森繁久彌が、藤本真澄プロデューサー、笠原良三、千葉泰樹、青柳信雄、杉江敏男、松林宗恵といった同シリーズの脚本・監督陣らとの握手。
さらに本編では出演していなかった人も含めて、シリーズに出演した俳優陣が正装して蛍の光を歌います。
まさに東宝黄金期を支えた人気シリーズを、大団円で見送るという東宝らしいフィナーレでした
それにしても、同作の松林宗恵監督がカメオ出演して握手していたということは、そのシーンはいったい誰が監督したのでしょうか。
それはともかく、記録上真の最終作となった『社長学ABC』『続・社長学ABC』は、すでにレギュラーメンバーだった三木のり平、フランキー堺が『社長千一夜』(1967年)で降板。
小林桂樹は加齢で設定が秘書から役員に出世。関口宏が秘書役でした。
また、映画衰退から東宝が制作部隊を別会社に分社化して専属俳優を解雇する前年だったために、お馴染みの大部屋俳優たちもほとんど出演していません。
森繁久彌、久慈あさみ夫妻宅には多い時で5人いた子どもも、同作ではいなくなってしまいました。
ストーリーは、森繁久彌大日食品社長が、親会社である大日物産社長(東野英治郎)に次期社長を要請され、小林桂樹営業担当専務を後釜の社長に、加東大介総務部長を専務に、藤岡琢也営業課長を営業部長に昇格させました。
ところが、大日物産の業績伸び悩みから株主が社長交代に賛成しなかったという理由で、森繁久彌社長の就任は延期に。
しかたなく、大日食品の会長として手持ち無沙汰な日々を送ることになりますが、『続・社長学ABC』で無事大日物産の社長に就任します。
最後のシーンは、フランキー堺がいつも演じていた怪しいバイヤー(小沢昭一)を加えて人工肉の試食会が開かれ、関口宏と内藤洋子のデートシーンで森繁久彌社長シリーズは幕を閉じました。
まあ、こちらも森繁久彌社長が社長に就任するというハッピーエンドではあるわけですが、『続・社長紳士録』のような大団円のシーンはありませんでした。
『続・社長紳士録』のときは、まだ映画界にも東宝にも力が残っていて、社長シリーズも余力があるうちにクレージー映画にバトンを渡す、という趣だったのです。
が、『続・社長学ABC』のときは、もう東宝としても、シリーズとしても、最終作やむなしかな、という寂しさを感じざるを得ませんでした。
でも、「やっぱり『社長紳士録』でやめておけばよかったのだ」とはいえません。
もし64年で社長シリーズを打ち切っていたら、映画界の衰退はもっとはやかったかもしれませんから。
いずれにしても、どちらの「最終」も、その時の背景を考えるとそれぞれ興味深いものでした。
この頃前後して、東宝の駅前シリーズ、クレージー映画シリーズ、加山雄三の若大将シリーズも終了。
他社では大映が倒産。東映も少し時間はズレますが、高倉健や菅原文太などがフリーになるなど、東宝だけでなく我が国の映画界が「古き良き時代」に区切りをつけることになります。
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