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『社長えんま帖』唐津くんちのド迫力とスピード感溢れる巡行! [東宝昭和喜劇]

『社長えんま帖』(1969年、東宝)を鑑賞しました。33作上映された社長シリーズの30作目です。当時のポスターにも“30本製作記念”と印刷されています。私が印象に残るシーンとして第一に挙げたいのは、佐賀・唐津のお祭りである唐津くんちのシーン。本物の曳山のド迫力、巡行のスピード感などがリアルに撮れています。

『社長えんま帖DVD』(東宝)より
『社長えんま帖DVD』(東宝)より

社長シリーズは、60年代の東宝の屋台骨を支える人気シリーズでした。

が、さすがに長く撮り続けて俳優もスタッフも疲れてきたのか、27作目の『続・社長千一夜』をもって、三木のり平、フランキー堺とレギュラーが降板。森繁久彌社長の浮気しそうな相手であるマダムズも入れ替わってしまいました。

それが、結果的に、社長シリーズの「終わりの始まり」になったと私は先月書きました。

『社長繁盛記』マンネリズムに手を付けることの難しさ

今作『社長えんま帖』は、“30本製作記念”であるとともに、シリーズの“ラス前”にもなってしまいました。

自家用機で大阪・唐津に出張


本作の舞台はマルボー化粧品。カネボウ化粧品のもじりでしょうね。

森繁久彌と久慈あさみ夫妻に、浦山珠実のお手伝いさん。娘役は2年ぶりに岡田可愛。朝からデモに行くことになっています。東大安田講堂事件の年の作品らしい設定です。

企画宣伝部長が小林桂樹、総務部長が加東大介、営業部長(宴会担当)が小沢昭一

森繁久彌社長が、浮気しそうで未遂に終わる相手役、いわゆるマダムズは、草笛光子と団令子です。

大阪の親会社社長(大社長)が東野英治郎。看護婦と称する愛人が沢井桂子。前作『社長繁盛記』のマダムズでした。

いつもフランキー堺が演じていた取引先の怪しいバイヤーは、今回は日系アメリカ人という設定で藤岡琢也です。

そして、秘書は黒沢年男に代わって関口宏。その恋人役は、小林桂樹の妹という設定で内藤洋子です。

内藤洋子は三越の店員という設定になっています。実在のデパートにしているということは、撮影に協力をしてもらうなど、何かタイアップがあったのでしょう。

ストーリーは、東野英治郎に「攻撃は最大の防御」とはっぱを掛けられた森繁久彌社長が、ライバル社に負けじと自家用セスナ機(関口宏が操縦)を購入。

例によって京都の芸者、団令子と浮気をしようと大阪でおちあいますが、そこで藤岡琢也と小沢昭一にばったり出くわし、唐津に視察に行くと出任せを言うと、藤岡琢也も一緒にいくと言い出し、全員がセスナ機で唐津に行きます。

藤岡琢也との契約は、本編ではまとまらず、続編で締結されます。

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で、見どころは……やはり唐津くんち


喜劇にふさわしい言葉かどうかわかりませんが、コメディリリーフとして貢献した三木のり平のポジションは、今回小沢昭一が演じています。

小沢昭一
小沢昭一を紹介するGoogle検索画面

といっても、宴会屋の三木のり平のカーボンコピーではなく、気に入らないと相手が社長でも拗ねるセンシティブな役どころです。

個人的には面白いキャラクターだと思いましたが、結局小沢昭一が宴会担当を演じたのはこの作品だけです。

単純明快な宴会屋の三木のり平の存在が偉大だったので、それを凌ぐまでには至らなかったですね。

そして圧巻は、「祭り期間中の人出は延べ50万人を超える」「国の重要無形民俗文化財」(Wikiより)の唐津くんちです。

映画では、まず唐津神社の鳥居をアップで写し、そこからひいて14台の曳山が巡行するシーンが映しだされます。

唐津くんち
『社長えんま帖』より

この巨大な曳山が、笛や太鼓、鐘など「鳴り物」に合わせて曳き子たちの掛け声とともに、旧城下町を練り歩くわけです。

曳山に乗っている人って、建物でいうと3階ぐらいの高さですね。

高所恐怖症の私にはできないことです。

これは、実際に唐津くんちが行われている日にロケを行ったようです。

森繁久彌社長が、本物の開催者に、唐津くんちの歴史や特徴など話を聞いているシーンも出てきます。

くんちの歴史や特徴など
『社長えんま帖』より

今は、Youtubeでこうした催しも観ることができますが、プロが撮影した本作はさすがに出来が違います。

当時は、これを映画館の大画面で見たわけですよね。

凄いんですよ、迫力とスピード感が。

ここを観ただけで、唐津に行ってナマで唐津くんちを見物したい気持ちになります。

とくにこのシーンを私は大変気に入っているのでこれも画像転載御免。

看板や建物も昭和40年代の雰囲気
『社長えんま帖』より

先導する警官がリアルで、看板や建物も昭和40年代の雰囲気が出ていると思いませんか。

社長シリーズは観光映画ともいわれていますが、今回ほどロケのシーンに魅入られたことはありません。

これはもう、祭り好きにはおすすめの作品です。

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  • 出版社/メーカー: 講談社
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