『社長道中記』(1961年、東宝)。以前ご紹介したのですが、今日はBS11(日本BS放送)で放送していました。1956年~1970年までに33本製作された、タイトル通り社長と、重役、秘書、宴会部長(役職は営業部長)などが登場するシリーズの10作目です。(上記画像はBS11公式サイトより)
同作の脚本を書いた、笠原良三氏の息子さんの笠原宗之さんがFacebookで話題にされていたので、今日は私も見てしまいました。
Facebookより
1960年代の東宝が上映する作品には、4つの人気シリーズがありました。
その中の一つが、本作を含む「社長シリーズ」といわれている作品です。
高度経済成長時代らしく、森繁久彌社長の会社が大きな取引をまとめるというビジネスを前面に出したストーリーで、かつ東宝らしいちょっとハイソで明るく楽しい展開が特徴です。
社長……森繁久彌
重役……加東大介
秘書(回を重ねて最後は社長まで出世)……小林桂樹
宴会部長……三木のり平
そして、途中からは、取引先の怪しいバイヤーとして、フランキー堺が出演しています。
森繁久彌社長は、仕事をしながらも、途中で浮気を試みるのですが、いつも成功しません。
その相手を、マニアの間では「マダムズ」と呼んでいるのですが、草笛光子、淡路恵子、新珠三千代、池内淳子、団令子などが毎回2人ずつ、代わる代わる出演しています。
今回の『社長道中記』は、源氏鶏太の『随行さん』が原作です。
「シリーズの中でも良くできた1作」(『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジンVol.25』で泉麻人氏)と評されています。
ストーリーは、森繁久彌社長の缶詰会社が、大阪の商社(三橋達也社長)と念願の取引にこぎつけたという話。
新幹線がない時代の「こだま」や、当時はなかなか行けなかった国内随一の観光地・南紀白浜などが登場し、ロケーションもお宝です。
邦画の喜劇については、コバカにする人がいるのですが、ありがちだな、とか、やらないかもしれないけどやりたいとは思うだろうなというような、他愛ないことがツボにはまる、スモールコメディの良さを知ってほしいなと思いますね。
たとえばこんな感じで……
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『水戸黄門』に通じるマンネリズム
大阪出張で、「こだま」(新幹線ができる前の特急)の2等車(今のグリーン車)に乗った森繁久彌社長と小林桂樹随行社員。
小林桂樹社員の隣には、妙齢の美女(飛鳥みさ子)が座りました。
(『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジンVol.25』より)
観客はここで、森繁久彌社長が黙っていないだろうと予想します。
案の定、森繁久彌社長は強引に席を変えてもらい、美女の隣りに座ります。
ところが、美女は祖母(飯田蝶子)の代わりに座っていただけで、森繁久彌社長は落胆。
席を変えられた小林桂樹社員の隣には、これまた美しい女性(新珠三千代)が。
すると、またいろいろ理屈をつけて、小林桂樹社員に席を変わってもらう森繁久彌社長。
大の男が、隣席の女性を理由に、ぐるぐる席を交代する光景がなんとも滑稽です。
さらに、森繁久彌社長は助平心を起こして、自分と女性のためにジュースを買いに行きますが、その間に、小林桂樹社員と新珠三千代が席を交代したため、森繁久彌社長が戻って来たら、小林桂樹社員にジュースも飲まれてしまったというオチ。
この間のテンポの良さと、席を替えさせる森繁久彌社長の屁理屈がクスっと笑えます。
冒頭の画像にもあったように、今回のマダムズは、新珠三千代と淡路恵子。
新珠三千代というと、悲劇のヒロイン『細うで繁盛記』を挙げる人が多いのですが、このシリーズでは毎回のようにコミカルな役柄を演じています。
『社長洋行記』(1962年、東宝)より
『社長紳士録』(1964年、東宝)より
このシリーズは、森繁久彌社長が浮気しそうでできない展開が「お約束」なのですが、その意味では観客も、浮気までは行かないんだろうなと最初から結末はわかっていて、森繁久彌社長がどう自滅するかを楽しんでいるわけです。
社長シリーズについては、「毎回同じようなものを飽きもせず撮った」というようなことを森繁久彌自身が生前振り返っていましたが、高度経済成長で日々変わるからこそ、人々は「同じようなもの」を安心して観たのではないでしょうか。
テレビ時代劇『水戸黄門』に通じることかもしれませんね。
ちなみに、初代水戸黄門は、森繁久彌で内定していたのに、東宝の主演俳優が東映撮影所の作品に出演するのはいかがなものか、という横やりから、森繁久彌の友人の東野英治郎に代わったといわれています。
1960年代の明るく楽しい東宝喜劇。
今回のようにBSやCSで放送されることがありますので、機会があればぜひご覧頂きたいと思います。
社長道中記 【東宝DVDシネマファンクラブ】 -
偉大なるマンネリは今のご時世ウケないんすかねー?
過激な演出のその先はやはり短命だと思うんですが。
by pn (2018-04-04 23:19)
『社長道中記』ちょっとハイソで明るく楽しい喜劇映画を振り返る・・・本日、鑑賞いたしました。おもしろかったです!実はその前に『スパイダーマン ホームカミング』を観てたのですが、これがつまらなくて(笑)、比べても仕方ないですが、『社長道中記』の方がずっとおもしろいです。「こだま」のシーン、笑いました。こうしたネタも、サイレント時代からの伝統を踏まえておりますよね。間違いなく、「台詞なし」でもおもしろいギャグだと思います。
それにしても、「社長シリーズ」って33作も作られたのですね。凄いですね。しかも『社長道中記』は黒澤明の『用心棒』と2本立てで公開されたとありました。何と贅沢な!現在の日本と文化レベルがまったく違います。来週もこのシリーズが放送されますよね。ぜひ観ようと思っております。
ブログメンテナンスがこのところまた激しいですね~(笑)。昨夜もそのこと忘れていたら、2時くらいにいきなりメンテ画面になってびっくり。どうしても安定飛行にならないところがサスペンスなブログサービスですね。
実は夕方、妙な不具合がありまして、Sonetの方に次のような報告を行いました。
・・・
4月4日14時から後にアップされているはずの記事がわたしのPCでは「ブログトップページ」に反映されません。
14時アップの記事をクリックすると、「次の記事」としてアップされているのは確認できますし、niceを押してくださっている方もいらっしゃるので、PCによってはトップページに反映されている場合もあるのだと思います。
しかし「PCによってはトップページに反映されない」という状況では困ります。
原因を特定し、速やかに対処をお願いいたします。
・・・
間もなくトップページでもアップが閲覧できるようになり、別に報告しなくても直っていたかもしれませんが、とにかく理由の分からない状態で置かれるのは困りますね。
>「特別なんですよ」感を強制されるような気がして。
これはもう、わたしもず~~~~~~~~~~~~っと同様の気分を感じ続けてまして、やや大仰な言い方になりますが(←大仰な言い方、大好きなのですが 笑)、日本の文化レベルそのものに関わっている重大事の一つだと考えております(←やはり大仰になってしまった様子 笑)。でも本当にそう感じるのです。あたかも大河ドラマが「俳優としてのキャリアの最高峰」のようなNHKの態度ですよね。出演者に対しても、視聴者に対しても実に押しつけがましい。
本当にそれだけのクオリティがあればまだしも、ぜんぜんそんなことありません。大河や朝ドラマについてはまたわたしのブログなどでも書こうと思ってるんですが、登場人物が結局ほとんど皆、「いいこちゃん」になってしまって退屈この上ないです。だから一部報道で『西郷どん』の主役は最初は堤真一にオファーが行ったけれど、彼が断わったために鈴木亮平になったという話を見た時は、(よくやってくれた、堤真一!)と思いました(笑)。毎回のように、必ずほのぼのシーンが挿入されるのもすごく嫌なんです(笑)。
などと書きながら、もちろん好きではないのであまり観たことないのですが(笑)、『軍師官兵衛』はだいたい1年通して観てしまったので、感じはしっかり分かりました。
わたしも日曜夜は裏番組を観ておりました。『天才たけしの元気が出るテレビ』なんかは、途中まではとてもおもしろかったです。それにしてもこのところ毎日たけしの事務所のネタが民放テレビを独占していますね。春先から辟易させられます。
『長崎犯科帳』というドラマは知りませんでした。実相寺昭雄がメインタイトルですか。それはおもしろそうですね。
>奉行(萬屋錦之介)は、闇奉行として岡っ引きを叩き斬り
いいですね~、錦之助!最近、『赤穂城断絶』という映画を観たのですが、錦之助は大石内蔵助。もう座っているだけで周囲の雰囲気を変えてしまいます。「スター」ですよね。 RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2018-04-04 23:35)
昔は映画会社が強かった時代ですね。
by nikki (2018-04-04 23:57)
森繁が出ているドタバタ喜劇、我々小市民の弱さや隠しているところをうまく表しているので、嫌いではありませんが、ほとんど見ていません。
実は伯父の一人と森繁が旧北野中以来の親友で、本家が東京に移った後も、早大在学中の森繁が裸足でバイクに乗って汚らしい格好でよく来ていたという話を親父から聞かされていましたが、森繁の役どころは、ほとんど演技ではなく、地でやって通用した感のある、というのが森繁なので、そういう意味でわざわざ映画を見る気にはならない、そういう事ですが、地で役どころを演じて通用した、いい時代に生きていたのではないでしょうか。でも森繁が演じていた舞台のような会社、私は結構見聞しているので、笑えます。
by うーさん (2018-04-05 00:29)
「マンネリ」だと、その先の展開がおおよそ判るのが良くないですよね…
by ナベちはる (2018-04-05 00:33)
こういった喜劇映画は、深く考えずに見られるから良いですよね。
社員旅行の企画をした時に、帰りのバスで上映させて頂いたことがあります。
by ゆりあ (2018-04-05 00:51)
マンネリだけど、結果がわかるだけに面白い作品ですね(^_^;)
by green_blue_sky (2018-04-05 07:19)
森繫久彌さんの若かりし頃の作品なんですね~。
あらすじを読んでいても頭に映像が浮かびそうなくらいユーモアのある森繫さんにピッタリな感じがします^^
by Rinko (2018-04-05 08:10)
小林桂樹は好きな俳優さんでした。
TVドラマ『それぞれの秋』での演技が凄かったです。
by johncomeback (2018-04-05 08:49)
昔の映画はどれも純粋に面白かったような気がします ^^
マンネリ大いに結構、ボクの大好きな寅さんのシリーズもほとんどマンネリですよね。
それが分ってても面白いというのが素晴らしいと思います(^^)
by なかちゃん (2018-04-05 11:18)
森繁久弥の「社長シリーズ」の面白さは
堪りませんでしたので大好きな映画でした。
愉快で楽しい映画はマンネリでの良かったと思いますし
悪党が出て来ても最後の「正義が勝」の
水戸黄門のような映画も安心して観ていられるので
私には好きな番組でした。
by makkun (2018-04-05 12:12)
この映画はよく見ました、森繁さんは先輩でもあるんで好きでした。
by 馬爺 (2018-04-05 12:53)
このシリーズよく見ました。役者ぞろいでしたね。後味が悪くなく楽しい気分になれました。
by JUNKO (2018-04-05 13:02)
最後の写真 ユーモアがありますね
バカマツタケ ちょっと楽しみ♪
by チャー (2018-04-05 17:20)
社長道中記は昔散々映画だったかテレビだったか見て楽しんでました。
by 旅爺さん (2018-04-05 19:29)