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『さらば、わが友 実録大物死刑囚たち』磯部勉、永島敏行

さらばわが友タイトル

『さらば、わが友 実録大物死刑囚たち』(1980年、東映)を見ました。戦後史上語りつがれる凶悪事件の死刑囚たちが、仙台拘置所に一堂に会した話です。原作は、シャバに“生還”した実在の元死刑囚の手記。中島貞夫監督が(共同)脚本も手がけています。(画像は劇中より)



いきなり結論を書くと、「いゃあ、面白かった!」

とくに後半の拘置所のシーンからは、迫力、葛藤など、高揚感あふれる作品に仕上がっています。

原作は、おそらくは、『さらばわが友』(現代史出版会/徳間書店)だと思われます。

戦後史上、今も戦慄をもって語り継がれる、凶悪殺人事件の犯人が収監された仙台拘置所における出来事と、死刑囚たちの実態を伝える力作です。

同じような趣旨の本で、『塀の中の懲りない面々』(安部譲二)がありますが、どちらかというと娯楽色が強い仕上がりなのに比べて、こちらはすべて実在した事件の「死刑囚の実態」を描くことを目的としています。

今回の映画では、拘置所には、次の人達が登場します。

カービン銃を使った防衛庁公金横領、高利貸し殺人事件の大沢謙一(磯部勉)←役名は仮名ですが原作者
「三鷹事件」の竹内景助(愛川欽也)
「帝銀事件」の平沢貞通(高橋昌也)
千葉酒屋一家殺し事件の黒木清(永島敏行)
銀座バー“メッカ”殺人事件の正田昭(石田純一)
K子ちゃん殺人事件の坂巻(室田日出男)


主人公以外には、永島敏行が仮名で、室田日出男も苗字しか出てきません。

一方で実名の人もいるのに、その違いは何でしょうか。

実は原作は、他にも有名な事件の犯人が出てくるのですが、映画の尺にあわせて、人物を絞ったのでしょう。

それにしても、帝銀事件と三鷹事件の死刑囚が同じ拘置所で過ごしたという話自体、驚きです。

原作によると、平沢貞通と竹内景助は、大物NO.1の座を争っていたそうです。

自分の置かれた立場は、それどころではないと思うのですが。

さて、判決が出ている死刑囚や、判決前でも、死刑見込みの者に与えられるのは、末尾が0の「証拠番号」。

大沢謙一(磯部勉)は、拘置所に入った時点では未決ですが、320という「見込み」の番号を与えられて改めて愕然とします。

磯部勉

どちらかというとギョロ目の磯部勉が、さらに目の隈を作った表情がリアリティあり過ぎです。

映画のタイトルに「わが友」とあるように、映画は、「0」を与えられた6人の、決して先のない切ない友情を描いています。

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自ら証人尋問を行って生還する!


大沢謙一(磯部勉)は、地裁で死刑判決を受け、流産した内縁の妻(岡田奈々)に別れを告げます。

黒木清(永島敏行)は、妹(マキノ佐代子)から差し入れられた、雑誌ののどに仕込んだ糸鋸で檻を切り裂き脱獄。

一目母親(菅井きん)に会いたくて、わざわざ危険な実家に向かいますが、あえなく捕らえられ、独房に入れたれた後、処刑されます。

処刑前に、死刑囚に挨拶する永島敏行に、「元気でな」と叫ぶ竹内景助(愛川欽也)がなんとも切ない。

それを目の当たりにした大沢謙一(磯部勉)は、「俺は絶対逃げてやる!!」と決意します。

大沢謙一(磯部勉)は、もともと聡明な人間。

当時、「アプレゲールの犯罪エリート」といわれ、刑務官(藤巻潤)からも、「キミは大学出なんだから、つまらないことで懲罰になっても、自分の得にならないことぐらいわかるだろう」と諭されています。

その頭脳を生かして、高裁では自ら証人尋問を行ったり、背丈の厚さになるほどの枚数の上申書を書いたりして、「無期懲役」を勝ち取ります。

同じ(慶応)大学出の死刑囚、正田昭(石田純一)は、その後処刑されます。

大沢謙一(磯部勉)の快挙は、その立場から見れば励みになるかもしれませんが、裁判というものが、しょせん人間(裁判官)の心証で決まってしまうものなのだ、という“軽さ”も感じざるを得ません。

竹内景助(愛川欽也)は、他の日本共産党員容疑者が無罪になってからは、党が支援活動から距離を置くようになったと妻(市原悦子)に報告を受ける寂しい日々を過ごし、最期は獄死します。

16年で出所した大沢謙一(磯部勉)は、自らの体験を書籍にし、それが今回映画化されたわけです。

加害者「美化」論と映画としての価値


被害者感情を考えたら、加害者の友情もへったくれもあるか、と思われるかもしれません。

犯罪者をヒーローのように描くのはけしからん、といった倫理的意見もあろうかと思います。

私も、直接事件の被害者だったらどうかわかりません。

しかし、「凶悪犯」の中には、三鷹事件の竹内景助のように、本当に判決通りの罪を犯したのか、疑わしい人もいます。

そもそも、私たちだって、いつ、何かの間違い(罠?)で、やってもいないのに「証拠番号0」を与えられないとも限りません。

事件自体は事実でも、実はその行為の背後に、裁判では明らかにならなかった真実があったかもしれません。

要するに、刑事事件の受刑者や死刑囚というのは、その時に生きる人間の価値観と、限られた能力や情報で裁かれているに過ぎないのです。

もとより、いかなる凶悪犯だからと言って、マスコミが一方的にどんな報じ方をしてもいいというわけではないし、真実を知る手立てとして、彼らの側からの情報や言い分があってもいいだろうと私は思います。

いずれにしても、窮地に立たされた男が、がけっぷちで生に執着し、シャバへの生還を勝ち取る様子を、倫理に埋没せず、強靭な精神で映画化したことは、十分に価値がある仕事だと私は思います。

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