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『俺たちの旅』金沢碧の出ない「40年後」の「旅」はもうない!? [懐かし映画・ドラマ]

俺たちの旅

『俺たちの旅』(1975年、ユニオン映画/日本テレビ)が、CSの日テレプラスで、今月から5話ずつの「一挙放送を夕方に行っています。同作は最終回の後も、10年後、20年後、30年後に単発で「続編」が放送され、40年後にあたる昨年秋も期待されましたが実現はしませんでした。監督やモデルが亡くなったこともありますが、ヒロインの金沢碧演じる洋子を早逝させたことが大きな理由ではないかなあと私は思います。(以下敬称略)



このブログを、『俺たちの旅』で検索すると10記事以上出てきます。

ですから、毎日熱心に読んでくださる方にとっては、「また『俺たちの旅』かよ」と思われるかもしれません。

が、それらはいずれも記事の文中に登場するだけで、『俺たちの旅』をメインテーマに書くのは、実は今回が初めてです。

『俺たちの旅』

今なら青春群像劇として最大級の評価をしますが、リアルタイムで放送した時は、てんで馴染めないドラマだなあと思っていました。

われら青春!』で純朴な教師役だった中村雅俊が、元不良の模範的でない大学生役。

友人のオメダ(田中健)は何ともインキなキャラクターで、第1回からマドンナの金沢碧にトップレスのシーンもあり、ちょっとこわい感じすらしました。

ところが、何度も再放送を見ていくうちに、だんだんおもしろくなっていったのです。

作品が、視聴者に迎合せず淡々と作られていたことがわかり、また私もだんだん歳をとって、劇中の登場人物の年齢に近くなったことで、作品を理解できるようになったのかもしれません。

いつもいう、インカムゲイン型の名作なのだと思います。

ネタバレ御免のあらすじ


カースケ(中村雅俊)とオメダ(田中健)は、バスケットに熱中する以外は、自分探しの最中にあるモラトリアム大学生です。

ひょんなことから、カースケの郷土の先輩であるグズロク(秋野大作)と再会し、以来3人でいろいろな出来事を経験。挫折や、社会矛盾による動揺や、若さゆえの失敗などにぶち当たります。

それらの日々を称して「俺たちの旅」というわけです。

脚本の鎌田敏夫の、シナリオ学校時代における、親友2人との付き合いが、『俺たちの旅』の下敷きになっていると、『来て!見て!感じて!』という書籍には書かれています。

放送は1年続いたので、ストーリーに変化をもたらすように、途中、設定が動きます。

グズロクが下宿先の娘・典子(上村香子)と結婚したり、カースケの不良仲間(石橋正次)が登場したり、カースケとオメダが新しい下宿先(名古屋章、水沢有美)に引っ越したり、そこで4人目の「旅」の仲間(森川正太)や金貸し(結城美栄子)と出会ったり、グズロクの勤めていた会社が倒産し、上司(穂積隆信)や同僚(関谷ますみ、丘淑美)が焼き鳥屋を始めたり、4人で何でも屋の「何とかする会社」を作ったりします。

でも、3人(4人)の関係に変化はなし。

そういう展開だと、何年先でもドラマは続けられるんですね。

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カースケと洋子が結ばれない「旅」だった


ドラマのポイントは、マドンナ・洋子役の金沢碧です。

金沢碧
Google検索画面より

カースケたちとは大学の同級生で、洋子はカースケを想うのですが、オメダが密かに洋子のことを想っています。

そしてカースケはというと、手広くどなたでもウエルカム(笑)

オメダは、今でいうとシングルマザー(八千草薫)の家庭で育ち、対外的に自分を表現するのが得意でない不器用で控えめなキャラクター。

やはり母子家庭ながら、性格的には吹っ切れているカースケに対して、憧れながらも一方で嫉妬するという複雑な思いを抱いていました。

『週刊現代』(2015年1月17・24日号)における、岡田晋吉(プロデューサー)×柏原寛司(脚本家)対談によると、放送当時は、「オメダと洋子を一緒にしてくれ」という投書が多くて迷ったそうです。

『週刊現代』(2015年1月17・24日号)より
『週刊現代』(2015年1月17・24日号)より

これは初耳でしたが、少なくとも脚本家の鎌田敏夫の眼目は、決して三角関係ではなく、あくまでカースケと洋子の「すれ違い」であったと思います。

最終回では、カースケと洋子が一夜を共にしたようなシーンがありますが、将来を約束したわけではなく、むしろお互いの道で頑張ろうという別れの儀式のようなものでした。

10年後のドラマで2人は再会しますが、またしても洋子が最後で結ばれるチャンスを逸します。

20年後に洋子は、貧乏学者(角野卓造)と結婚していますが幸せな結婚ではありません。カースケも妻(石井苗子)に愛想が尽きたので、いよいよ洋子に対して本気になったと思ったら、何とここでも洋子はつまらない嘘をついてまた2人は結ばれません。

そして、30年後には洋子は森本レオと再婚した末に、何と亡くなった設定になっています。

要するに洋子は、カースケを思いながらもカースケとは結ばれたくないのです。

「ツムラくんはいつも勝手なんだから」と言いながら、一方的に背中を追いかけている、報われない愛が自分とカースケには合っていると思っていたような設定です。

そういう愛し方もあるのかなあ、と思いました。鎌田敏夫、切な過ぎます。

ネット掲示板では、金沢碧についてすごく印象に残る書き込みがありました。
笑顔でもどこか困ったような微妙な表情するんだよね、この人
なんか不幸が付いて回ってるような感じの負のパワーを感じる
http://gappancho.sitemix.jp/?p=16

私が思ってたことがそのまま書かれているんで、自分が書いたのかと思ったぐらいです。

男女7人夏物語』『男女7人秋物語』など、鎌田敏夫作品は、演者のリアルな人間像と登場人物のキャラクターが重なるといわれますが、もしかしたら金沢碧こそ、洋子そのものだったのかもしれません。(実生活は知りませんけど)

洋子の早逝という決定的な別離をさせてしまった以上、30年続いた「旅」も終わりということ。

だからきっと、「40年後」はもうないだろうと私は思っています。

こちらには更に詳しく

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