『お嬢さん社長』を“お嬢”こと昭和の歌姫・美空ひばりが熱演 [懐かし映画・ドラマ]
『お嬢さん社長』(1954年、松竹)を観ました。昭和の歌姫といわれた美空ひばりが主演です。祖父の代行で社長をつとめるものの、社内の悪徳幹部たちは、たとえ16歳の“お嬢さん社長”であろうが容赦なく策略を巡らせ、社長も堂々と受けて立ち戦うという話。昭和20年代の映画ですが、画質も音質もきれいで、ストレスなく観ることができました。(画像は劇中より)
この作品がDVD化され、映画ファンの間で取り沙汰されているのは、美空ひばり主演ということと、川島雄三監督だから、ではないかと思います。
美空ひばり、芸能戦後史上に欠くべからざる歌姫を偲ぶ
川島雄三監督といえば、『幕末太陽傳』(1957年、日活)が話題になります。
『洲崎パラダイス赤信号』(1956年、日活)もファンがいるようで、以前Facebookの昭和の映画を楽しむグループで同作を話題に盛り上がっていました。
⇒『幕末太陽傳』居残り佐平次がデジタル修復版で蘇った
⇒『洲崎パラダイス赤信号』新珠三千代、三橋達也、轟夕起子
『お嬢さん社長』は、それより少し前の、川島雄三監督が松竹に在籍していた頃の作品になります。
以前ご紹介した『第2回蒲田映画祭』では、かつての松竹キネマ蒲田撮影所で活躍した、監督・俳優の作品ポスター、台本、プロフィールや実績の説明バネル、作品集などが展示されましたが、豊田四郎、吉村公三郎、渋谷実、大庭秀雄、木下恵介、野村芳太郎、小林正樹、家城己代治、山本薩夫の各監督とともに、川島雄三監督も紹介されていました。
ただ、上記2作に比べると、「ああなるほど、川島雄三監督らしいな」と思える箇所は少ないかもしれません。
が、美空ひばりを、会社経営を建て直す社長として描き、歌も歌わせるなど、そのタレント性を生かした構成になっているのではないかと思います。
歌う社長として活躍する設定
舞台は製菓会社(日本一乳菓)。ワンマン社長の小原重三郎(市川小太夫)は病気療養から、孫娘のマドカ(美空ひばり)に社長(代行)を任せます。
マドカは、舞台女優を遊びに連れ出して叱られた縁で、舞台監督秋山(佐田啓二)や、彼が住む浅草裏お稲荷横丁の住人たち、並木敬吾(大坂志郎)、秋山の恋人・菊子(小園蓉子)、桜川三八(桂小金治)らとも知り合います。
「浅草裏お稲荷横丁」というところが、“川島雄三の世界”といえるかもしれません。
マドカは、敬吾(大坂志郎)の指摘で、会社製品のお菓子がパチンコ屋に横流しされていることを発見。
敬吾(大坂志郎)を社長付きで入社させ、会社刷新にのりだしました。
敬吾(大坂志郎)の企画で、会社の業績はぐんぐん上昇。
スポンサードする番組では、マドカ(美空ひばり)自身が出演して歌いました。
それに対して、悪徳幹部である安田専務(多々良純)や三戸宣伝課長(永井達郎)、それに追随する貝谷経理部長(有島一郎)らは、敬吾(大坂志郎)を悪質な詐欺師に取引させ、引責辞任させたうえで、日本一乳菓を競合会社に乗っ取らせようとします。
しかし、浅草裏お稲荷横丁の住人である幇間の桜川一八(坂本武)が、お座敷でその謀議を知ったために、マドカに教えて危機一髪、会社は救われます。
そして、一八(坂本武)は、実はマドカの母方の祖父だったことも明らかになります。
大作、名作というほどではありませんが、ストーリーもテンポよくまとまっていて、中だるみもなく完成度の高い作品であると思います。
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