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『日本一のヤクザ男』未DVD、古澤健吾監督植木等主演最後の作品 [東宝昭和喜劇]

夕暮れ

『日本一のヤクザ男』(1970年、渡辺プロダクション/東宝)を、現在放送中の日本映画専門チャンネルで観ました。植木等主演の一世を風靡した東宝映画「日本一シリーズ」の第8弾、東宝クレージー映画としては第27作目となります。全30作の同シリーズは、本作以降の4本が現在までDVD化されておらず、その意味では「お宝作品」ということができます。

日本一のヤクザ男

植木等の役名は、前作『日本一の断絶男』に引き続き日本一郎(ひのもといちろう)です。

前野組と根本組(安部徹)がいがみ合う街にあらわれた一郎。前野組は親分亡きあと、姉さんの登志子(司葉子)が仕切っていました。

一郎は、かつて前野組組長(田崎潤)に果たし合いを挑んだことがあります。

そのため、真実は違うのですが、前野組組長は一郎がヤッたことになっていました。

そこで、一郎は日本一(にっぽんいち)という偽名(になっているか?)を使い、前野組に接近。

血気にはやる前野組若衆の健次(山下洵一郎)から根本(安部徹)を救い出し根本の客分におさまります。

その一方で「中立」の一郎は、鉄道建設の施主、村井(多々良純)が芸者鶴子(野川由美子)に夢中なのを利用し、建設利権を前野組にもたらそうと企てますが、それは失敗。ただ、鶴子は一郎の男度胸に惚れこみます。

前野組では、若衆の熊井吾郎(藤田まこと)が旅から戻り、一郎に果たし合いを申し込むといいます。

一郎に惹かれていた登志子(司葉子)は、果たし状を一郎に届けるも、一郎にはそれを開封せず町を出て行ってほしいといいます。

一郎は逃げませんでしたが、ただし前野組組長暗殺は自分ではないといいます。

そして果たし合いとなりましたが、吾郎(藤田まこと)が落雷にやられてしまい無勝負。

登志子(司葉子)は前野組二代目を襲名し、鉄道建設の利権も獲得しました。

おさまらない根本組は嫌がらせを繰り返してきたために、前野組は一郎と吾郎を先頭に根本組に殴り込み。

さらに前野組組長暗殺に使った拳銃を、刑事の才太郎(ハナ肇)が見つけたことで、根本組の代貸、横田(名和宏)が暗殺の真犯人として逮捕され一件落着。一郎は、登志子や鶴子が追いすがるも旅立っていきました。


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古澤憲吾の置き土産作品


本作は、日本映画専門チャンネルと、時代劇専門チャンネルとの「戦後70年共同企画」の一環として、1月から集中放送されている「植木等劇場」の一作です。

これまでにも5作品がその枠で放送されたことは過去の記事で書きました。

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東宝クレージー映画、とりわけ植木等が主演する「無責任男」「日本一男」については、古澤憲吾監督によって作られたヒットシリーズと言っていいと思いますが、その古澤憲吾が東宝を離れることとなり、最後の作品が本作です。

それはすなわち、古澤憲吾監督、植木等主演という黄金コンビの最後の作品でもありました。



この頃は、映画の斜陽化を受けて、東宝は制作会社を分社化したり、俳優の専属契約を解除したりと激動の時期であり、古澤憲吾監督の退社もその流れの中にあったのだろうと思われます。

また、本作は植木等の所属である渡辺プロダクションが制作し、東宝は配給(上映)のみとなっています。

DVD化されていないのは、この権利問題もあるのかもしれません。

この頃は、クレージー映画もすでに興収が落ち込んでおり、もはや新作を作ることで大ヒットは期待しにくい状況にありました。

それでもなぜ作ったのか。

これは私の想像ですが、義理堅いナベプロの渡辺晋社長が、60年代の渡辺プロダクションと東宝の屋台骨を支えた植木等映画を、何とか区切りの30作までは作ろうと制作していたような気がします。

同作は、東映で流行しつつあった任侠映画のパロディです。

クレージー映画は、これまで独自の展開でヒット作を次々生んで一世を風靡したのに、今更パロディというところに、クレージー映画の落日を感じざるを得ませんでした。

クレージー映画、最後の2作は、植木等と加藤茶の2枚看板になります。

植木等から加藤茶へのバトンタッチが作品を通して行われているわけです。

その2作も「植木等劇場」で放送されるので、後日また記事にしたいと思います。

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