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『2015年4月福島調査報告』楢葉町に住む人の被ばく線量調査 [(擬似)科学]

2015年4月福島報告2

『2015年4月福島調査報告』(安斎科学・平和研究所)について、28日のブログで書きました。そこでは、常磐線・木戸駅付近の2軒の民家と神社についての測定結果をご紹介しましたが、今日は福島県双葉郡楢葉町に住む人の被ばく線量と、スギや月見草について書かれていることをご紹介します。

安斎育郎氏ら、科学者と技術者で構成された「福島プロジェクトチーム」は、2011年3月の福島第1原発事故以来、定期的に福島各市・各町を訪れ、民家や公道、神社、食材などの線量を計測したり、地元の人々に除染のアドバイスを行ったりして、その活動内容は先月ですと『2015年4月福島調査報告』で明らかにしています。

2015年4月福島調査報告

前回は、福島プロジェクトチームが4月23日に行った測定結果をご紹介しました。

『2015年4月福島調査報告』福島県双葉郡楢葉町の民家と神社調査

今回は、翌4月24日に行った人とスギ、月見草についてです。

楢葉町に住む人の被ばく線量


福島プロジェクトは4月24日、楢葉町のお寺の住職(お寺と住職のお名前は伏せます)について、3月18日~4月21日の被曝量を調べてその結果を公表しています。

3月~4月の被ばく線量

棒の部分に書かれている地名は、その日、書かれている場所に赴いたということです。

それによると、平均3.61マイクロシーベルト/日で、365倍して年間被曝線量に換算すると、およそ1.3ミリシーベルトとなります。

これは、「外部被曝線量」(体の外から浴びる線量)で、自然放射線と原発由来の被曝の合計です。

では日本人の自然放射線被曝の平均値はというと、0.55ミリシーベルト/年と見積もられています。

ということは、住職の被曝量は、平均よりも約0.75ミリシーベルト多いということになります。

いうなれば、約0.75ミリシーベルトが原発由来の被曝ということになります。

もちろん、これは本来被曝する必要のないものですから、たとえ0.01ミリシーベルトであっても、歓迎すべきではありません。

しかし、だからといってこれが、個人の価値判断を超えて、医学的(科学的)に危険と判断できる「福島には住めない」数値といえるかどうか。

法律では、一般の人が原子力施設から放出される放射性物質から受ける線量は、年間1ミリシーベルトを超えないことと定められています。

それは、世界共通の「全く健康影響を心配する必要がない値」です。

言い方を変えると、約0.75ミリシーベルトが原子力施設から放出されていても、「全く健康影響を心配する必要がない」ということになります。

これは、御用学者や陰謀論で決まっているわけではありません。

もちろん、数字にかかわらずストレスがかかるからと、その「約0.75ミリシーベルト」のないところを探して、移住する選択肢はあると思います。

でも、たとえば自然被曝量は、東日本より西日本のほうが高いとか、飛んでくる黄砂にも放射性物質を気をつけなければならない、といったことがあり、「被曝のより少ないところ」を求めるといっても、どこも似たようなものではないでしょうか。

すでに2013年の時点で、「(福島県)相馬市の空間線量は西日本と大差なくなった」(『アピタル』で坪倉正治氏)という報告もあります。

たとえ日本国内に「差」があっても、人間ドックでCTを1回受けたら、そんなものはあっという間に意味がなくなります。

私個人は、というより常識的に見て、「年間1ミリシーベルト」を基準に、それを超えないところなら、ライフプランを立て直す覚悟までして、動かなければならないものなのだろうか、という気がします。

原発事故直後は東京も、発表される線量の掛け算をして、「年間1ミリシーベルト」かどうかを確認して、一喜一憂した人も少なくなかったのではないかと思います。

が、一方で被曝線量は、5年間でトータルどのくらいか、という点からも見ていきますから、短期的な計測で「年間1ミリシーベルト」を出るか出ないかという数字で真っ青になり、東京から関西に慌てて移住するという選択は、科学的に見ても有効とはいえないと思います。

月見草


月見草の花の咲き方が変わっている、という写真です。

月見草

2013年の秋に、上記楢葉町のお寺の境内に咲いた月見草で、当時の咲いている写真がB、その乾燥試料がAです。

通常の月見草とは違い、太い幹状の茎から花が咲いています。これが、原発事故由来の異常な現象なのかどうか、調べるそうです。

スギ


スギについても測定が行われました。

杉の葉の放射能分析結果

1,古い枝葉(事故時に木に付いていて汚染し、この4年の間に落枝したが、腐葉土になる程は年月を経ていない枝葉)の放射能汚染は著しく高い。
2.現在木に付いている枝葉については、幹に近い程(古くて)放射能が高く、枝先に行くに従って放射能濃度が減少する傾向にある。これまでの調査の経験的知見によれば、屋敷林などの高い放射線量率の原因は、事故時に木に付いていて汚染した枝葉がその後落枝して腐葉土となり、表面に降り積もっていることが主原因であると考えられる。今回、古い(しかし腐葉土化するには至っていない)枝葉が強い放射能汚染を示し、現時点で木に付いている枝葉が、「幹の近く(おそらく古い葉) 」から「枝先(おそらく新しい葉)」に行くに従って放射能濃度が系統的に低くなる傾向が示唆されたことは、今までの推論が妥当であることを支持するものと言える。

と書かれています。

要するに、4年前の葉は高線量を示し、それが落葉することで地面を汚染してきたが、新しい葉はそうではない、ということでしょうか。

また字数が2000字近くなりましたので、食材(山菜やイノシシ肉等)の測定は次回とさせていただきます。

原発事故の理科・社会

原発事故の理科・社会

  • 作者: 安斎 育郎
  • 出版社/メーカー: 新日本出版社
  • 発売日: 2012/09
  • メディア: 単行本


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