『無責任遊侠伝』(1964年、東宝)が、明日7時から、CSの日本映画専門チャンネルで放送されます。これは、時代劇専門チャンネルとの「戦後70年共同企画」の一環として、1月から集中放送されている「植木等劇場」の一作です。香港とマカオを舞台にしてクレージーキャッツが活躍するストーリーです。
『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』(Vol.36)より
『無責任遊侠伝』については、以前も簡単に触れましたが、『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』(Vol.36)に収録されました。
植木等主演の映画は、上映順に、
『
ニッポン無責任時代』(1962年7月)、
『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』(Vol.1)より
『
ニッポン無責任野郎』(1962年12月)、
『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』(Vol.3)より
となっているのですが、1作目から2作目にかけて、「無責任」のキャラクターが、明らかな詐欺や盗みにあたる行為に進んでしまい、明るく楽しい東宝映画の社風から外れてしまいました。
そこで、3作目からは、そのバイタリティをどでかい自己実現に向かうように描いた
『
日本一の色男』(1963年7月)になり、
『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』(Vol.6)より
以後、「日本一の××」というタイトルの「日本一男」シリーズに変わったのです。
ところが、今回はまた『無責任遊侠伝』と、「無責任」がついています。
植木等が、ウイルス性肝炎で倒れてしまい、復帰した作品ということもあるのだと思います。
本作は香港ロケがあるのですが、クレージー映画の前作だった
『
香港クレージー作戦』(1963年12月)
『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』(Vol.12)より
と一緒に、舞台となった当時のイギリス領香港、ポルトガル領マカオでロケーションロケをしたといいますから、企画自体はもしかしたら「日本一シリーズ」の前に進んでいたものだったのではないかと思われます。
監督は、『香港クレージー作戦』も手がけた杉江敏男。
『お姐ちゃん罷り通る』(1959年、東宝)や『社長洋行記』(1962年4月)などで香港ロケの経験があり、それを買われてのことではないかと思います。
脚本は、『
クレージー作戦先手必勝』や
『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』(Vol.24)より
『
長崎犯科帳』の池田一朗です。
ネタバレ御免のあらすじ
今回の植木等の役名は上田ヒトシ。パチンコ、麻雀、競馬となんでもござれで、勤務先のホテルでは、客の花木常務(ハナ肇)と花嫁(浦山珠実)の靴やヒップのサイズなどで賭けをする始末。
それが原因で植木等は式場を解雇されてしまいますが、責任をとれと社長(有島一郎)の娘(淡路恵子)に言われ、また植木等の婚約者のカネ子(浜美枝)の勤務先でもあることから、花木の会社に勤務します。
植木等は、お得意の賭け事で、外国人バイヤー(ジョージ・ルイカー)との商談をまとめますが、バイヤーはマカオの悪漢、張天玉(平田昭彦)の仲間で詐欺。契約金を持ち逃げします。
一方、植木等は、陳秀明(谷啓)、秀玉(パイピン)と知り合いますが、彼らも張天玉に騙されてカジノを取られてしまった被害者でした。
そこで、契約金と陳兄妹のカジノを取り返すために、クレージーと淡路恵子、浜美枝らがマカオへ乗り込みます。
見どころバイプレーヤーは
私は、毎回1~2シーン程度しか出演しない端役にどんな人が出ているかを観るマニアックなところがあるのですが、今回もお馴染み、東宝の大部屋陣が出演しています。
とくに冒頭のシーンでは、田武謙三、浦山珠実、加藤春哉、大友伸などか出演。
浦山珠実といえば、社長シリーズの後期におけるお手伝いさん役、クレージー映画などで、塩沢ときとともにコメディリリーフとして活躍しました。今回もヒップサイズを賭けに使われる花嫁役で出ています。
杉江敏男監督は、当時の東宝の人気娯楽シリーズである「社長シリーズ」「クレージー映画シリーズ」「駅前シリーズ」「若大将シリーズ」と、そのすべてにおいて1作以上監督をつとめています。
出演者の個性を活かして見せ場を作ることがうまい監督なので、出演者みんなのファンになってしまいます。
その杉江敏男監督が、そうしたバイプレーヤーたちを含めて、出演者をどう光らせるかが見どころの一つといえるでしょう。
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