『吸血鬼ゴケミドロ』終末思想と風刺を絡めた怪奇作、吉田輝雄 [懐かし映画・ドラマ]

『吸血鬼ゴケミドロ』(1968年、松竹)を観ました。宇宙から円盤で地球にやってきた軟体生物のゴケミドロが、不時着したジェット機に取り残された乗客たちを襲撃。さらに人類を次々襲っていくという怪奇映画です。極限状態の乗客たちが本性をさらけ出す人間ドラマであり、かつ反戦映画にもなっています。

60年代の怪奇特撮モノというと、これまでにご紹介した作品では、東宝の怪奇特撮三部作があります。
⇒『美女と液体人間』白川由美と平田昭彦、佐原健二、佐藤充
⇒『電送人間』鶴田浩二、平田昭彦、軍国キャバレーも登場
⇒『妖星ゴラス』池部良、上原謙、白川由美、水野久美、志村喬
それらは、当時の特撮技術であることを差し引いても突っ込みどころがあり、白川由美の下着シーンがお約束になっているなど、娯楽映画としての興趣を強く感じました。
一方、『吸血鬼ゴケミドロ』は、一見荒唐無稽な怪奇娯楽映画のようで、ディテールにリアリティを感じさせる作り方になっています。

監督は東映の佐藤肇という人で、『悪魔くん』や『キャプテンウルトラ』『キイハンター』『特捜最前線』など“テレビ映画”では馴染みの深い方です。
いろいろいきさつがあって、本作は他社(松竹)で作ることになったようです。
松竹が、予告編をYoutubeにアップしています。
『吸血鬼ゴケミドロ』予告編
楳図かずおのマンガ『漂流教室』を連想するようなストーリーです。
終末論を絡めた人間風刺、社会風刺
羽田を飛び立ったジェット機が、まもなくして空とぶ円盤とニアミス。
操縦不可能になり岩山に不時着します。
副操縦士・杉坂(吉田輝雄)は、生存者は自分を含めて9人と確認します。
スチュワーデス・かずみ(佐藤友美)、代議士・真野(北村英三)、後援者の徳安(金子信雄)と法子(楠侑子)夫妻、生物学者・佐賀(高橋昌也)、精神科医・百武(加藤和夫)、自殺志願の青年松宮(山本紀彦)、ベトナム戦争で夫と死別した婦人・ニール(キャシー・ホーラン)……。
杉坂(吉田輝雄)は助けを求めますが、救助隊はやってきません。
焦り始めた生存者が揉め始めます。
そのシーンにかぎらず、劇中一貫して、生存者は一致団結するのではなく、自分だけは……のエゴむき出しで、足を引っ張り合い結局自滅します。
とことん人間の醜さを表現しています。
その喧騒で、外国大使を暗殺して逃亡中だった男・寺岡(高英男)が息を吹き返します。
というか、もともと生きていて気絶していただけだと思いますが……。
寺岡(高英男)は、かずみ(佐藤友美)を人質に連れだして機外に出ますが、円盤の青白い光体に吸い込まれ、

眉間を裂かれて、そこからドロドロした細菌状の物体に侵入されてしまいました。

これがゴケミドロ
すると、寺岡(高英男)は吸血鬼・ゴケミドロと化し、生存者が次々血を吸われていきます。
血を吸われた者は絶命し、遺体はやがて砂のように崩れて消えていきました。
杉坂(吉田輝雄)は、寺岡(高英男)にオイルをかけて燃やし、ゴケミドロを退治します。
すると、ドロドロした細菌状の物体は寺岡(高英男)の亡骸から飛び出して、今度は生物学者・佐賀(高橋昌也)の眉間を割って入り込み、代議士・真野(北村英三)の血を吸います。
杉坂(吉田輝雄)とかずみ(佐藤友美)も追い込まれますが、佐賀(高橋昌也)のゴミケドロは落石で息絶えます。

副操縦士と乗務員ですが恋人同士みたい
2人は助けを求めて町に出ますが、車はすべてストップして搭乗者はすべて死亡。
近くにあった病院に入っても、患者や職員はみな亡くなっており、ゴケミドロに征服されてしまった光景に慄然とするところで終わります。
観終わって
今から47年前の映画ですが、佐藤友美と山本紀彦(←『気になる嫁さん』のリキマル)が、あまり変わっていないのでびっくりしました。
ストーリーは、要するに、宇宙生物が、人類がエゴむき出しの戦争で争っているので地球征服に入った、という話です。
この映画が作られた60年代終盤は、我が国は高度経済成長時代。
国際的には、一部の国の核開発と東西冷戦、ベトナム戦争などが行われていました。
この映画には、右肩上がりと思って調子に乗ってると、トンデモないしっぺ返しを食うかもよ、というメッセージが込められていたのかもしれません。
すでにこの時期、『ノストラダムスの大予言』が一部の人に取り沙汰されていましたが、終末論と絡めた人間風刺、社会風刺としての仕上がりになっています。
この映画も、個人ブログのレビュー記事で取り上げられることが多いのですが、それだけ面白い作品ということでしょう。
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