橋本圭司医師(高次脳機能障害リハビリ)の主宰する、子どもの高次脳機能障害グループに参加してきました。東京・世田谷にある、はしもとクリニック経堂で毎月定期的に行われているグループリハビリです。今日のテーマは「高次脳機能障害児者の就労」でした。高次脳機能障害であるなしにかかわらず、人の生き方について示唆を与えてくれるお話がありました。
橋本圭司医師は、子どもの高次脳機能障害のリハビリ医として有名な方です。
Google検索画面より
ネットを検索するとインタビューも出てきますが、橋本圭司医師の『障がい者リハビリ』の持論は
「
できないところではなく、できるところが大事」
「
健常者と同じになろうとするのではなく、自分の『できる』『得意』を知って伸ばせばそれでいい」
ということです。
橋本圭司医師は、言葉が出ないからと言語、記憶が続かないからと記憶力のリハビリをしても、あまり効果がないといいます。
なぜなら、言語中枢がダメージを受けて言葉が出てこない人に対して、いくらそこを鍛えようとしても難しい。
損傷した脳は元通りにはならないので、「元に戻そうと思わないこと」といいます。
では、そういう人は人生を諦めるべきか?
そうではなく、だめになったところを直接なんとかしようとするより、残っているところを刺激するほうが効果的だというのです。
高次脳機能障害の人でいえば、直接高次脳をリハビリするのではなく、低次脳を鍛えることによって脳を活発化させ、高次脳機能の損傷を補えるようにするといいます。
「高次脳」というのは、記憶や言語、遂行機能など社会生活をおくるうえで必要な機能で、「低次脳」の機能というのは、生命を維持するために必要な呼吸や嚥下、運動などです。
要するに、散歩やストレッチなどの運動で、脳を活性化させ使えるところを伸ばして活路を見い出せ、ということです。
私は、リハビリとは、失った機能を取り戻すためにするものと思っていました。
しかし、橋本圭司医師は、
苦手なところをいいところで補うのがリハビリのゴールなのだと言います。
高次脳機能障害を「補った」人の就労例としては、歌を歌うのが大好きだったので、家族が毎日カラオケに連れていき、ついに歌手デビューしCDを出した、という人がいるそうです。
また、作業所で粘土をこねるのが得意だったので、奥さんがパンをこねるのもできるんじゃないかとパンを作らせ、今では超人気のパン屋さんになった人がいます。
このパン、『天使のパン』というのですが、いろいろなメディアで紹介されたので有名です。
http://gateaudange.com/ より
一日に数斤しか焼けないので、現在は14年(!)待ちだそうです。
それ、待つ人もすごいですね。
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まとめ
橋本圭司医師は、脳に損傷を負ったことを逆手にとるといい、と言います。
脳損傷なんて経験している人はそうはいないから、高次脳機能障害者として仕事をすれば、それだけで人を勇気づけることができるのだと言うのです。
自分の苦手なこと、弱いことを逆手に取る、というのは、高次脳機能障害だけでなく、他の障害、もとい、障害に関係なく、人の生き方として普遍的に当てはまることだと思いませんか。
たとえば、ジャイアント馬場が、中学生の頃から大きくなりすぎて自分のことが嫌だった。
でもプロレスに進んだことで巨体が武器になった、という話を思い出しました。
不器用な役者が、逆にその不器用さで一騎当千の演技と評価される、なんて話もあります。
きっと、パラリンピックの競技者の生き様にも、そのような考え方が反映されているのかもしれませんね。
まあ、人間というのはそもそも無謬でも万能でもありませんから、勝負できるものを見いだせるかどうかという点では、健常者であろうが障がい者であろうが、そうかわりはないのかもしれません。
我が長男の場合、まだ、できないことが訓練によって回復している段階のため、そもそも「苦手なこと、弱いこと」が何かも確定していないのですが、発達障害の回復の限界と言われる17歳を過ぎると、そうした発想は求められてくるのだろうなと思いました。
記事を読んで山下清画伯のことが思い浮かびました。突出した才能が発揮されることもあるんですね。
by yamatonosuke (2016-09-19 00:27)
「弱い・苦手だということを逆手に取ること」が将来自分自信を認める要素になるかもしれないと思うと、弱い・苦手だからと落ち込んだりあきらめたりするのは勿体ないですね。(弱い・苦手だと認めたくないという思いもあるでしょうからなかなかその通りにはいかないのですが…)
by ナベちはる (2016-09-19 00:47)
一見何でもできそうな健常者の方が、勝負できるものを
見つけるのは難しいような気がします。
by うつ夫 (2016-09-19 00:53)
目からウロコです。
by 斗夢 (2016-09-19 05:41)
好きこそものの上手なれと言いますが、店やCD出しちゃうのかぁ。俺努力全然足りないなぁ。
by pn (2016-09-19 06:21)
漢方薬は麦門が中心です。
気管支の薬になります(^_^;)
by green_blue_sky (2016-09-19 07:10)
何かの機能を失って他の機能で突出した才能を見せる人いますね。
健常者の方が選択肢が多くて何かを見つけるの難しい?
by 土芽 (2016-09-19 08:55)
ありがとうございます。
そうですね。喧嘩もあるからね~
昆虫同士のも・・・ね。
by ryuyokaonhachioj (2016-09-19 09:36)
脳出血の術後のリハビリで見た目はそれなりに
元気な姿に見えたものですから意地で
障害者申請をせずに「今は仮の姿」で絶対に
良くなるんだと頑張った私でしたが
3年過ぎた頃に「これが現実で仮の姿じゃない」と
悟りました。
術後9年が経ちましたが・・・
下記の言葉は「その通り」だと思います。
>「できないところではなく、できるところが大事」
>「健常者と同じになろうとするのではなく、自分の
>『できる』『得意』を知って伸ばせばそれでいい」
by makkun (2016-09-19 10:44)
何だって一定の成果を上げられたなら
人は認めてくれるのです。ですがその多くは❓
と、考えもします、が、周りの者の気遣いがそこにある気が
します。ではまた、
ありがとうございました。
by PopLife (2016-09-19 11:06)
自分の『できる』『得意』を知って伸ばせばそれでいい。
これは。。(^^)障害に関係なく、皆そうあってほしい。
常に思います。
by DEMIりん (2016-09-19 14:20)
今日のお話も大変興味深く読ませていただきました。
by JUNKO (2016-09-19 17:23)
脳梗塞で後天的高度脳障害となってしまった知人が、リハビリの過程で理解していたことに通じ、大変感銘しました。
いったん破壊された脳細胞が復活することはありませんが、リハビリによってそれまで活動していなかったところが活性化され、目に見えてできることが増えてくると言っていました。
人間の脳というものの不思議さに感嘆するとともに、人間だれしも得手不得手があって、個性はそれこそ千差万別だと納得した次第です。
by 伊閣蝶 (2016-09-21 15:42)
中途障害で高次脳機能障害者になりました。
出来ないことが段々とわかりはじめ、就労していますが、やりがいなく働いています。
出来ることを伸ばす発想に、少し元気がでました。
by スギに~ (2016-12-27 18:11)