『「これ」を食べればサプリはいらない』サプリメント10の問題点 [食べもの]
『「これ」を食べればサプリはいらない サプリメーカー社長が教える』(田村忠司著、東洋経済新報社)を読みました。著者は、タイトル通りヘルシーパスというサプリメントメーカーの社長です。疲れない、老けない、病気にならないためには、サプリメントよりも食材が大事として、サプリメントの問題点と、体の症状に効く食材&レシピを紹介しています。
みなさんは、医薬品と健康食品。どう区別と両立されていますか。
医薬品というのは、病気と直接対峙するものであり、医師や薬剤師の指導や処方によって使用するもの。
一方、健康食品(サプリメント)は、自己責任で行える範囲の健康管理をサポートする「食品」です。
安倍総理の言う「成長戦略」とやらに基づき、サプリメントなどの健康食品に、健康への効能・効果を表示する規制が緩和されましたが、医薬品と食品は別のもの、ということにかわりはありません。
同じ食品なら、何も高いお金を出してサプリメントを買わなくても、食卓に使われる食材の方が健康のためにはいいのですよ、というのが本書の主張です。
といっても、特定の成分を抽出しているサプリメントなら、普段の食生活を補うことはできるのではないだろうか、と考えがちです。
サプリメントをすすめない理由はこんなにある
しかし、著者は、第1章で次の10点を挙げて、サプリメントを勧めていません。
1.サプリメントは本体の成分より添加物の方が多いほどである
2.名のあるメーカーでも「不当表示」など不誠実な会社が多い
3.合成の際に混入する不要な物質が残ったり、安全管理に不安のある中国生産が多かったりなど、材料が信用出来ない
4.医師の処方のように量が決められているわけではないので、複数サプリメントの重ね飲みによる過剰摂取が心配
5.何が必要か、また必要でないかの判断もはっきりしないまま、栄養素の含有量など情報の不足するサプリメントを宣伝だけで選んでしまう
6.生活習慣の改善という本質的な問題が後回しにされがち
7.アレルギーの原因になるかもしれない
8.三大栄養素などサプリメントで摂取するには不適当な栄養素がある
9.良い食材を購入し、農業、食品メーカー、外食産業などを育てたい
10.本当に体に必要とされるビタミン、ミネラルなどの栄養素がないがしろにされ、摂らなくても命に別状ない成分の宣伝にメーカーは力を入れている
普段、食材を選ぶときは、産地や食品添加物を神経質なほど気にしている人でも、サプリメントは、何が入っていてもあっさり服用してしまうことってありませんか。
10は、いわゆる「抗がん健康食品」に見られる現象ですね。
たとえば、キノコ系健康食品のβグルカンは、腸管免疫を刺激するので免疫力がアップするとかね。
免疫力は無限ではありませんから、いずれにしても、それで進行がん治療や、抗がん剤の副作用を抑えるなどを期待するのはむずかしいのではないかと思うのですが、消費者は希望をもたせるような宣伝文句につられて、他のことには目をつぶって、藁にもすがる気持ちで購入してしまうのです。
詳細については、本書をご覧ください。
第2章は、「これを知ったらもう飲めない! サプリメントの衝撃ウラ事情10連発」と書かれています。
サプリメントの原価はおどろくほど低い、サプリメント広告の「使用前」「使用後」の写真の信ぴょう性は誰にも確かめられない、ネットワークビジネスに巻き込まれている、飲んでもほとんど意味のない成分が売り物になっている……など、第1章と重複するものもありますが、要するにサプリメントの価格と安全性と信ぴょう性という、サプリメントの本質となる3点にわたって懐疑的な内容を書いています。
食材による健康維持
第3章からは、本書のねらいである、食材についての解説です。
たとえば、第3章は、「生活習慣」と「食べ方」についての指南です。
胃腸が悪い時は、食べ方の問題ではなく、胃腸を治すことが先決であるとか、高血圧を気にして降圧すると、せっかく食べても栄養素が回らないとか、血液をスムーズに流すためには、「早足で歩くこと」「のんびりジョギング」に加えて、青魚やナッツ(オメガ3系脂肪酸)、きゅうり・スイカ(マグネシウム)、果物・野菜・お茶・コービー(カリウム)を摂取すると良いなどが勧められています。
糖質制限やコレステロールなどについても触れられています。
第4章は、「お悩み・症状別おすすめの栄養素」として、諸症状の対策として具体的な栄養素と食材とレシピを紹介しています。
内容は、アレルギー、頭痛、肥満・ダイエット、月経前症候群・月経困難症、更年期障害、精力減退、循環器の健康、血圧コントロール、認知症予防、糖尿病予防、アンチエイジング、貧血、がん予防、感染症予防、放射線対策、疲労対策、受験勉強、子供の栄養、と多岐にわたっています。
たとえば、認知症予防には「カレー」だそうです。
カレーの材料であるウコンのクルクミンは、血液中のマクロファージに働きかけ、アミノイドベータという、アルツハイマー病を引き起こす危険物質を取り除くというのです。
これは以前、吉田たかよし氏や川嶋朗氏の記事でご紹介しました。
・『なぜ、東大生はカレーが好きなのか』カレーを食べて脳機能向上
・『ボケたくなければカレーを食べなさい』カレーは代替医療か
ただ、カレーは油を大量に使いますが、一般に健康によい油といえば、値段の高いオリープオイルや、使い方の難しい亜麻仁油といわれていますよね。
でも、カレーの油は、少なくともインスタントカレーやレトルトカレー、外食などで使われているのは、「食用植物油脂」「食用動物油脂」ですから、カレーなら無条件に良い、といえるのかどうか。
そういった注意もあると、もっとよかったのではないかと思います。
最終章の第5章では、「それでもサプリメントを飲みたい人に」という見出しで、補助食品として有効に使うための解説を行っています。
たとえば、パッケージ(原材料や添加物)をしっかり見る、価格も大切(安すぎるのも高過ぎるのも問題)、安全基準を満たしているか、専門家に相談できるかなど、今度は第1、2章の裏返しで、価格と安全性と信ぴょう性について気をつけることを説いています。
第3章以降は、既存の栄養学や保健学の専門家がいろいろな情報を発表していますが、サプリメントでなくても摂れる、という視点で整理されているものです。
第1、2章を読むことで、サプリメントに対する幻想を改め、日々の食事の重要性を再認識できると思います。
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