『帰ってきた若大将』(1981年、東宝)を観ました。これまで何度かご紹介した“若大将シリーズ”が、加山雄三芸能生活20周年記念作品として、10年ぶりに制作されたものです。加山雄三はたんなる主演ではなく、エグゼクティブ・プロデューサー、池瑞直亮として作品にかかわっています。(画像は劇中から)
『帰ってきた若大将』が上映された10年前に、シリーズ最終作品として、『若大将対青大将』が制作されました。
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『若大将対青大将』加山雄三、大谷茂、田中邦衛、酒井和歌子
ここで、「若大将」は加山雄三から大矢茂に、「青大将」は田中邦衛から高松しげおに継承されたことになっているのですが、今回はシリーズ復活ではなく特別編なので、初代の加山雄三、田中邦衛がそれぞれ若大将、青大将を名乗っています。
ヒロインは、星由里子や酒井和歌子ではなく、今回は坂口良子。そして「恋敵」はアグネス・ラム。
懐かしいですね、アグネス・ラム。
基地のない平和な政府を目指す若大将顧問
若大将シリーズは、国内外のロケが必ず入りましたが、本作『帰ってきた若大将』の冒頭に登場したのは、西太平洋。
サザンクロス諸島上空をヘリコプターで取材していたTVプロデューサー皆川純子(坂口良子)が、カメラマン(山本紀彦)を煽っているうちに機内から落ちてしまいますが、セスナ機からそれを見ていた田沼雄一(加山雄三)がスカイ・ダイビングして純子を助けるという、豪快なシーンから始まります。
スポーツも若大将シリーズの定番ですが、スカイ・ダイビングは、シリーズ16作目の『俺の空だぜ!若大将』(1970年)以来です。
17作目は、冒頭に述べた2代目若大将への継承作ですから、本作は16作目の続編、という見方もできます。
若大将は、サザンクロス島の大統領の片腕、自治政府顧問になっていました。
サザンクロス島は、基地のない平和政府を目指し、アメリカとの交渉が待っています。
TVのスポンサー、三丸商事は、石山信吉(田崎潤)がオーナーで、息子の新二郎(田中邦衛)が副社長。
その縁で、青大将と純子は知り合います。
ニューヨークで外務書記官をつとめるフローラは、アグネス・ラム。
サザンクロス島使節団が、大統領補佐官シュナイダーと交渉を行うために、若大将と協力して補佐官を追跡します。
若大将の実家、田能久は、久太郎(有島一郎)、江口(江原達怡)、照子(中真千子)らは相変わらず。
祖母のりき(飯田蝶子)の7回忌が行われ、昔の使用人、マリ(賀原夏子)が、お店や久太郎の世話を焼くことになりました。
若大将シリーズにおける、飯田蝶子の存在は大きかったので、劇中で7回忌を行ったのは良かったと思いました。
若大将は補佐官を追跡に、青大将は誤信した手紙を追って、それぞれニューヨークに飛びます。
補佐官はシティマランンに参加することがわかり、セントラルパークで練習中のところを接近。いったんは護衛に捉えられますが、なんとか面談にこぎつけ、若大将がシティマランンで補佐官に勝ったら交渉するという約束を取り付けました。
ここから先は、シリーズのパターンです。
若大将はシティマランンで補佐官に勝ち、交渉権を獲得します。
若大将を祝福したアグネス・ラムのことを誤解した純子(坂口良子)は、いったんは青大将のプロポーズを受け入れます。
しかし、若大将は最後の最後で「良い奴」になり、若大将が好きなのは純子なのだと純子に打ち明け、自分は身を引きハッピーエンドです。
シリーズが作られていた頃は、東宝には専属俳優がたくさんいて、脇役、端役もお馴染みのメンバーでしたが、専属俳優がいなくなった本作は、田能久の人々以外では、当時のメンバーでは藤木悠ぐらいしか出ていません。
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『続サラリーマン忠臣蔵』藤木悠は壮絶な糖尿病闘病を語っていた
同窓会的な作品だったのに、そこは少し寂しかったですね。
もっとも、飯田蝶子や左卜全のように亡くなった人や、専属契約解除後は廃業してしまった人もいるので、全員が揃うというわけにもいかなかったのでしょうが。
今回の若大将たちの年齢は、38歳と設定されています。
でも実際の年齢は、加山雄三が44歳。田中邦衛に至っては49歳です。
田中邦衛と坂口良子(当時26)は、もう父娘でもおかしくありません。
田中邦衛の秘書役で出演している樹木希林でさえ、一回りも若い37歳でした。
男は、40歳過ぎても独身の「若大将」を演じ、ヒロインはもっと若いのに、より若い人に交代。
女子アナだけでなく、女優も「旬」の期間は短いんですね。
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