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『時間ですよ』森光子が束ねたドラマ史に残る久世光彦ワールド [懐かし映画・ドラマ]

『時間ですよ』森光子が束ねたドラマ史に残る久世光彦ワールド

『時間ですよ』(1970年2月4日~1990年10月15日、TBS)の第三部をDVD鑑賞しました。同作は、1970年代に、東京都品川区五反田(大崎広小路あたりか)の銭湯を舞台とした人気ドラマでした。舞台となった松の湯では、庶民感覚の文化や時代の価値観を感じさせ、ドラマにバラエティを絡めた独特の構成が新鮮でした。



『時間ですよ』は、初期の設定では、第一部(第1回~第30回、1970年2月4日~8月26日)、第二部(第31回~第65回、1971年7月21日~1972年3月15日)、第三部(第66回~第95回、1973年2月14日~1973年9月5日)と放送され、以降も設定と出演者を変えて、単発スペシャル番組も含めると1990年まで全11シリーズ放送されました。

最後のシリーズには、SMAPの中居正広も出演していましたが、それでも1990年ですから、ほぼ昭和のドラマといえるでしょう。

当時は、『ハレンチ学園』という漫画が社会問題になっていましたが、このドラマは銭湯が舞台ですから、当然裸の女性が出てきます。当時のドラマとしてはそれだけでもインパクトがあったと思います。

今回は、私が一番印象に残った第三部をDVD鑑賞しました。

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個性豊かな出演者が多数出演


銭湯「松の湯」のおかみ・松野まつ(森光子)は、夫・祥造(船越英二)とともに、一人息子・一郎(松山英太郎)と、芙美(松原智恵子)夫妻が、転勤先の徳島から帰ってくるのを楽しみに待つところから第三部は始まります。

しかし、一郎は次長に昇格。いったんは松野家に帰ってきたものの、夫婦だけでマンションに別居したいと考え、何かというと両親と衝突。むしろ嫁の芙美が、まつに私淑しているために別居せずにいます。

ドラマの基本は、この親子の相克という、家族の普遍的なテーマを抱えています。

しかし、それを深刻な展開にせずに、喜劇のテイストで包み込んでしまうのが、プロデューサー兼演出の久世光彦の世界です。

松の湯の従業員は、けんちゃん(堺正章)と浜さん(悠木千帆、現在の樹木希林)。3人目はシリーズごとに代わり、第一部は川口晶、第二部は西真澄、第三部は本作がデビュー作になった浅田美代子です。

この3人が、“トリオ・ザ・銭湯”と称して、ドラマの中で何度もギャグを披露します。

笑いのシーンではあるのですが、天才肌の堺正章と、努力型の悠木千帆が、いずれが視聴者の評価を得られるかを競っている“熱さ”を私は感じました。

近所や松の湯の客の面々は、個性豊かな役者たちが、もったいないほどたくさん出てきます。

けんちゃんの憧れは、となりのまりちゃんこと天地真理

浜さんの憧れは、質屋の釜田さん(かまやつひろし)。質屋の従業員でけんちゃんの友だちは猫田(鈴木ヒロミツ)。

祥造の悪友は、和菓子屋の徳さん(江戸家猫八)とだるま食堂の平さん(由利徹)。

徳さんは、毎週女湯に“間違えて”入るのがお約束です。

時間ですよ
『時間ですよ』より

実際にそんな人がいたら、店の評判や信用にかかわりますから、現実にはあり得ない設定ですが。まあ男性視聴者の願望を表しているのかもしれません。

徳さんの妻(近松麗江)は、お岩(武智豊子)やお千代(山田桂子)とともに松の湯の常連客。

平さんの一人娘は研ナオコ。

この頃の研ナオコは、歌手になる前で、娘らしい膨よかさがありました。

銭湯の客の男性陣は、チンピラの浅太郎(左とん平)、当時田中角栄のそっくりさんとしてタレント扱いだった葬儀社社長の豊島泰三、60~70年代の喜劇のおまわりさん役といえばこの人をおいて他にない曾我廼家一二三などがいます。

警官が、官服で銭湯につかりに来るはずがないのですが、第3回で曾我廼家一二三はタオルを腰に巻き、制帽をかぶって出てきました。

『天才バカボン』もそうですが、警官を笑いの対象にするのは、庶民目線のカリカチュアなのでしょうか。

ホームドラマにつきものの小料理屋は、紫の着物を着ている女将・お涼さん(篠ヒロコ)。

お涼さんはヤクザと心中して生き残った設定で、そのヤクザの兄貴分が風間さん(藤竜也)。

いつも店の隅っこで、静かに升酒を飲んでいます。

最終回のひとつ前でお涼さんは病死し、最終回で小料理屋は更地になるのですが、楽しいドラマから死人を出したことは当時子どもの視聴者だった私には大変ショッキングで、「ああ、今度こそ本当の最終回で第四部はないんだな」と寂しく思ったものです。

このドラマからは、そのお涼さんこと篠ヒロコ、天地真理、浅田美代子など、女性の人気タレントを誕生させ、文学座時代から演技は認められていた樹木希林が、テレビドラマの役者として認められるきっかけになりました。

ちなみに、このドラマが終わってまもなく、内田裕也との結婚が報じられました。

1970年代の地上波コンテンツを楽しむ価値観で鑑賞


ドラマの中にバラエティがあるのか、バラエティの中にドラマがあるのか、とにかく賑やかです。

そして、出演者が多いので、テンポよく進みます。

それぞれ個性を活かしたキャラクターだとは思いますが、それだけでは拡散したドタバタになってしまいます。

そこを束ねて要になったのは、おかみさん役の森光子だったと思います。

このドラマは、当時水曜21時30分からの放送でしたが、その前に、20時からは石立鉄男主演の『パパと呼ばないで』を観て、21時からは、マントをかぶった人の不思議な経験や特技を当てる『特ダネ登場!?』を見るのが、私の毎週決まったスケジュールでした。

今はBS、CS、DVD、インターネットなど、コンテンツを配信するメディアは増えましたし、もう地上波の番組を、“何曜日は何時から何を観る”と毎週楽しみにすることはないと思います。

ですから、そんな頃を懐かしみながら観ていました。

時間ですよ1973 BOX1 [DVD]

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  • メディア: DVD


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