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『いっしょに走ろう』中途視覚障がいから“人生を生還”させた [スポーツ]

いっしょに走ろう

『いっしょに走ろう』という本を読みました。芸術新聞社から発行されています。著者は道下美里さん。視覚障がい者のマラソンランナーです。膠様滴状角膜ジストロフィーを発症。ほとんど視力を失いましたが、盲学校在学中に陸上の才能が開花し、2006年のジャパンパラリンピック視覚障がいT12部門の800m走と、1500m走で日本記録を樹立しました。(上画像はGoogle検索画面より)



道下美里さんは1977年、山口県下関市に生まれました。

小学校4年の時に目の異変に気づき、中学2年で右目の視力を失いました。

短大を卒業して調理師免許を取得後、レストラン在職中の25歳の時に、左目にも右目と同じ症状が出たため退社。

その後は実家の書店で働いたものの、次第にできることが制約されました。

遺伝子の検査で判明した病名は、膠様滴状角膜ジストロフィーという難病でした。

その後、山口県立盲学校(現在の山口県立下関南総合支援学校)理療科に入学。

前向きに生きる学友たちにびっくりし、そして励まされ、自分もそうあろうと考えます。

在学中には、スキューバダイビング、サマーキャンプなども経験しました。

目が見えていた時は最初から諦めていた、NHKののど自慢で華原朋美の歌も歌いました。

弁論大会にも出ました。

そして、ダイエットがきっかけになった放課後のランニングから、視覚障がい者マラソンランナーとしての歩みが始まりました。

盲学校のグランドは、視覚障害者が走りやすいように、芝生と土でラインのコントラストが確認しやすかったのです。

2006年のジャパンパラリンピックでは、視覚障がいT12部門(伴走者と走るか単独で走るか選択できる)の800m走と1500m走で日本記録を樹立しました。

2008年の第1回下関海響マラソンを皮切りに、フルマラソンに転身後、大濠公園ブラインドランナーズクラブに所属。

2014年のIPCマラソンワールドカップ(ロンドンマラソン)では銀メダルを獲得しました。

同年の防府読売マラソンでは3時間を切る2時間59分21秒を記録。

2015年のIPCマラソン世界選手権(ロンドンマラソン)では銅メダルを獲得しています。

そして、2016来年のリオデジャネイロ・パラリンピックの視覚障害女子マラソンでは、日本代表推薦順位1位が内定しているそうです。

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誰にとっても前向きに生きられる社会であること


中途障害は、大きく分けて2つの段階があります。

1.遷延性意識障害のように、精神的・肉体的活動を全面的に奪われるような状態になった場合は、自覚的に動けるようになることが目標になります。

2.その障がい自体は命を脅かしたり、他の機能に直接影響を及ぼしたりするわけではないけれども、受傷前と同じ生活ができない場合、新たな生きがいや役割を自覚して活路を求めることになります。

「1」は、「生命活動を生還させる段階」です。

そして、「2」は、「自覚的人生を生還させる段階」だと考えています。

したがって、「2」をクリアしたことを、「人生を生還させた」と私は密かに名づけています。

本書『いっしょに走ろう』の著者・道下美里さんは、この「2」をクリアした方です。

ただし、お断りしておきたいのは、中途障害のすべての人が、2→社会復帰、もしくは1→2→社会復帰という順番に必ず回復できるわけではありません。

本書『いっしょに走ろう』の道下美里さんはクリアしたが、ある障がい者は「2」をクリアできなかったからといって、その障がい者の生き様が悪いとか、怠惰である、ということではありません。

障がいの箇所や深刻さによっては、自分にその意志はあっても、「新たな生きがいや役割を自覚して活路を求め」られない場合もあるのです。

今回の道下美里さんは、自分にはまだ「新たな生きがいや役割を自覚して活路を求め」るチャンスがあることを知り、それを走ることに求めた、という話です。

で、以下は余談です。

私たちが暮らす社会は、どんな国づくり、どんな町づくりが求められると思いますか。。

足の悪い人も、目が悪い人も、誰もが暮らせる社会がいい、ということに異論はないでしょう。

問題は、ではそれは具体的にどういう形で実現させるのか、ということです。

つまり、「暮らせる」というのは、健常者の同情や施しで「暮らせる」ということか、障害のある人自身が自立的に「暮らせる」ということか、そこには大きな違いがあります。

もちろん、求められるのは後者です。←ただし、我が国では前者すらできていませんけどね。

たとえば、横断歩道で手を引くことは、決して否定するものではありませんが、より望ましいのは、障がい者が自力で自覚的に横断歩道を渡れることです。

つまり、障がい者が誇りを持って自立した生き方をできる、そのための支援こそが障害者に対する理解と支援ではないかなと思います。

いっしょに走ろう

いっしょに走ろう

  • 作者: 道下美里
  • 出版社/メーカー: 芸術新聞社
  • 発売日: 2015/06/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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みつ

このような方がいたのですね。ただ単純に感動致しました。
こういった前向きな強さを少しでも見習いたいものです。
by みつ (2016-04-16 08:40) 

kiki

自分が全盲になった時に、楽しんで、生きていけるのかしら。
たおやかな精神を持っていられるのかしら。
自信がありません。
強い人は素敵です。
by kiki (2016-04-16 21:38) 

うつ夫

「目が見えなくなってありがとう」とは
普通の人は言えないでしょう。
緑内障や白内障の治療の意味がなくなるし。
パラリンピックで記録を出したからこそ、
言えるという面はあると思います。
by うつ夫 (2016-04-16 23:43) 

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