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『2015年4月福島調査報告』山菜、イノシシの肉、木戸川の名水 [(擬似)科学]

いのしし

『2015年4月福島調査報告』(安斎科学・平和研究所)についてのご紹介3回目です。福島プロジェクトチームから、もう5月分の「調査報告」をいただいているのですが、まだ4月分の続きをご紹介していなかったので、本日書きます。今回は、双葉郡楢葉町を流れる「名水」と呼ばれた木戸川や、山菜、イノシシの肉などの測定です。(以下、図表は『2015年4月福島調査報告』より)


安斎育郎氏ら、科学者と技術者で構成された「福島プロジェクトチーム」は、2011年3月の福島第1原発事故以来、定期的に福島各市・各町を訪れ、民家や公道、神社、食材などの線量を計測したり、地元の人々に除染のアドバイスを行ったりして、その4月の活動内容は、『2015年4月福島調査報告』で明らかにしています。

それによると、福島プロジェクトチームは4月24日、楢葉町のお寺の住職(お寺と住職のお名前は伏せます)について、3月18日~4月21日の被曝量を調べてその結果を公表しています。

『2015年4月福島調査報告』福島県双葉郡楢葉町の民家と神社調査(4月23日調査)
『2015年4月福島調査報告』楢葉町に住む人の被ばく線量調査(4月24日調査)

今回は、4月24日に測定された食材(山菜やイノシシ肉等)、楢葉町を流れる木戸川、です。

山菜とイノシシの肉


「調査報告」によると、福島プロジェクトチームは、イノシシの肉と、ミツバおよびウコギを分析用に預かったとしています。

食品分析器の測定結果は、表のとおりです。

山菜

ゼンマイは、4月24日に測定した寺の裏山で採取したものに加えて、4月23日に測定した神社境内で採取したものも加えて一緒に測定したそうです。

したがって、測定結果は汚染の数字の源泉を特定できません。

ただ、「報告書」によると、ゼンマイの放射能は神社で採取した試料に由来する可能性が高いので、また機会があれば、神社のゼンマイを単独で測定してみたいとしています。

測定に関する具体的な評価は以下のようになっています。原文から固有名詞は私がはずし「」でくくりました。

上表の測定結果は「お寺」の山菜類の汚染は思いの外「低かった」という印象を与える。イノシシは汚染した山のタケノコやミミズなどを食べており、もっと高い汚染の可能性があると推定していたが、285ベクレル/キログラムで、当初の食品基準(500ベクレル/キログラム)の半分程度であった。また、他の山菜類は、ゼンマイを除いて、概ね現在の食品基準(100ベクレル/キログラム)程度で、低かった。参考までに、われわれが日常食べている食品中の自然放射性核種カリウム40(半減期:12億5000万年、セシウム同様、ベータ線とガンマ線を放出する)の食品別濃度は、下表のごとくである。数十~数百ベクレル/キログラム含まれている。

カリウム濃度

カリウムは、私たちの体に必須の物質で、血圧の調整や 酵素の活性化に大切な役割を果たし、腸の収縮も含めて筋 肉の働きを良くし、腎臓からの老廃物の排泄を促して「む くみ」を改善したりするのに役立っています。私たちは、 毎日、必要なカリウムを食事を通じて補っています。自然界のカリウム原子の8500個に1個は「カリウム40」と呼ばれる半減期12億5000万年の放射性原子で、私たちの体には成人の女性で3000ベクレル、男性で4000ベクレルぐらいのカリウム40 が含まれています。これによって、年間約02ミリシーベルトぐらいの内部被曝を受けています。参考までに、いろいろな食材中のカリウム40の濃度(ベクレル/キログラム)を示します。食材からカリウム40だけを除去する方法はありません。


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木戸川


続いて木戸川の測定です。

楢葉町の第三発電所を通って太平洋に抜ける川です。

木戸川

「名水」とされる郭公水、第3発電所(青い点)で水試料採取、茶色い点で土試料採取による測定を行っているそうです。

その結果は以下のとおりです。

木戸川測定結果

木戸川の土の汚染も予想よりもかなり低かった。大まかに言って、上表の最下段に示した自然 放射性核種カリウム40と同程度と言える。 土は放射性セシウムを吸着する性質をもっているため、川底がこの程度の汚染の場合に、そこを流れる水に有意の汚染を生じることはなく、2月調査時に上表の4ポイントについて川の水を採取して測定した結果は、いずれも「不検出」であった。

「名水」地点の放射能濃度測定結果

名水.png
郭公水も第3発電所上の名水も、事故前は列をなして水汲みに行っていた名所だそうだが、今は、放射能汚染のため誰も来ないという。測定結果が示す通り、いずれも「不検出」だった。

とのことです。「名水」が人々の信用を取り戻す日が来て欲しいですね。

原発事故の理科・社会

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  • 作者: 安斎 育郎
  • 出版社/メーカー: 新日本出版社
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