『近頃なぜかチャールストン』岡本喜八、今福将雄、小沢栄太郎 [懐かし映画・ドラマ]
『近頃なぜかチャールストン』(1981年、喜八プロ・ATG制作/ATG配給)を観ました。岡本喜八監督が、自宅まで撮影場所に使った手弁当作品ですが、映画やテレビドラマでお馴染みの役者が豪華勢揃い。テンポの良い喜八イズムを、出演者みんなが楽しんでいるような心地良さを感じます。(画像は『近頃なぜかチャールストン』より)
先月、文学座の今福将雄さんが亡くなりました。94歳で正式座員でしたから、現役最年長といえると思います。
Google検索画面より
その今福将雄さんの出演していた作品の一つが、『近頃なぜかチャールストン』です。
行きずりの少女を追いかけ、婦女暴行未遂で大作刑事(財津一郎)に留置場に入れられた非行少年・小此木次郎(利重剛)は、国会議事堂で無銭飲食をはたらいて、留められている中高年たちに出会いました。
彼らは、ヤマタイ国という独立国の国民と称していました。
内閣総理大臣(小沢栄太郎)、陸軍大臣(田中邦衛)、文部大臣(殿山泰司)、外務大臣(今福将雄)、大蔵大臣(千石規子)、逓信大臣(堺左千夫)、内閣書記官長(岸田森)の面々です。
次郎(利重剛)は、釈放後も彼らのことが気になり、タミ子(古館ゆき)とヤマタイ国を探すと、そこは、蒸発中の次郎の父・宗親(藤木悠)が無償で提供していたものの、母・政子(小畠絹子)が立ち退きを迫っている家でした。
次郎(利重剛)は、不法入国で逮捕されましたが、ヤマタイ国に「帰化」して労働大臣(雑用係)に任命され、その一員になることで難を逃れます。
ヤマタイ国は小此木家に宣戦布告し、ヤマタイ国には不発爆弾が見つかるなど不穏な動きが。そこに、保険金殺人事件を追う大作刑事(財津一郎)と中町刑事(本田博太郎)、殺し屋・飯室(寺田農)などが絡み、めまぐるしく動き、8月15日に不発弾が爆発、ヤマタイ国は焼失してしまいました。領土を捨てたヤマタイ国の国民は、流浪の旅に出発します。
右傾化社会に対する警鐘か
冒頭のシーンで、大作刑事(財津一郎)が自宅のカレンダーを8月5日にめくり、その24時過ぎ、つまり8月6日に次郎(利重剛)が捕まりますから、ストーリーは「広島原爆投下の日」から「終戦の日」までというわけです。
この当時は、社会科教科書検定で、「侵略」「侵攻」の文言が問題になった頃です。
いわゆる右傾化が云われ始めた頃です。
『ダイナマイトどんどん』にしてもそうですが、平和への思いを表現する岡本喜八監督らしい設定です。
これまで私は、1950年代終盤から70年代にかけての喜劇邦画を中心に記事にしてきました。
本作(1981年)は、製作年を比べればそれらよりもかなり新しいわけですが、それなのにモノクロスタンダードサイズ。で、同じモノクロでも、東宝映画のモノクロと違ってはっきりした画面ではありません。いかにも低予算、ということをあえて自ら演出しているようです。
それにしても、ATGの低予算で、これだけの役者を揃えられるのかということに驚きました。
岡本喜八監督の映画なら、ギャラが安くても参加したい、という人たちではないかと思います。
そして、ストーリーは荒唐無稽ですが、みんな必死に演じています。
なんか、遊び心に徹した映画をつくろう、という一声でみんなが集まって作られた、という感じがします。
岡本喜八監督といえば、このブログでは、『江分利満氏の優雅な生活』と、『ダイナマイトどんどん』をご紹介しました。
【岡本喜八監督関連作品】
⇒『江分利満氏の優雅な生活』武蔵小杉在住60年代サラリーマン
⇒『ダイナマイトどんどん』史上最高の任侠野球娯楽映画の評価も
いずれも、ハチャメチャさも役者が躊躇せず演じてしまうテンポの良さを感じましたが、本作も同様ではないかと思います。
自主映画のモデルのような作品だと思いました。
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