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『本日ただいま誕生』植木等の主演作、悲運の男が僧侶になるまで [懐かし映画・ドラマ]

本日ただいま誕生

『本日ただいま誕生』(1979年、東映)を観ました。原作は、曹洞宗大垣法永寺住職・故小沢道雄の自伝的小説『本日ただいま誕生 足無し禅師』です。植木等主演。脚本は下飯坂菊馬と千田由治。監督は降旗康男、撮影は田中正です。昨年の夏に、日本映画専門チャンネルで放送されたのですが、忙殺されてなかなか観る機会がなく、先日はじめて鑑賞しました。(画像は日本映画専門チャンネルより)



昨年、日本映画専門チャンネルと、時代劇専門チャンネルとの「戦後70年共同企画」の一環として、「植木等劇場」という枠があり、植木等全盛時の映画が集中放送されました。

その最終作として放送されたのが、今回ご紹介する植木等主演の『本日ただいま誕生』です。

といっても、本作は、これまでこのブログでご紹介した、東宝クレージー映画とは全く別の作品です。

そして、現在までDVD化もされていません。

放送した日本映画専門チャンネルによると、1979年のわずかな公開以来、30年以上行方がわからなくなっていた植木等幻の主演作で、2012年に、偶然、渡辺プロダクション所有の倉庫でフィルムが発見されたそうです。

「わずかな公開」で消えてしまったというのなら、いったいどんなマニアックな作品なのだろうと思っていましたが、作品自体は原作に沿って作られた、オーソドックスなものでした。

原作のある映画は、短編でない限り、尺の関係で、原作の大事な部分をかいつまんで構成されます。

そのため、どうしてもストーリーが飛び飛びと言うか、唐突に感じることがあります。

この『本日ただいま誕生』も、例外ではなかったのですが、両足を失った実在の人物が、どうやってその後生きたのか、という苦悩や悟りが十分伝わってくる、なかなかおもしろい映画でした。

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ネタバレ御免のあらすじ


本日ただいま誕生出演者

第二次大戦で徴兵された大沢雄平(植木等)は、抑留されたシベリアで凍傷におかされ、現地の軍医(北村和夫)に、麻酔無しで両足の膝から下を切断されます。

その上、引き揚げの際、自分で歩けない雄平(植木等)は、同じ班だった坂本(中村敦夫)や横田(川谷拓三)らに裏切られ、置き去りにされます。

現地の中国人にゼスチャアで助けを求め、やっと帰国。

しかし、母(原泉)や弟(河原崎建三)の話では、実家の寺は別の跡継ぎが入ってしまい、自分の居所はありませんでした。

戦死した上官の家に居候していた時、雄平(植木等)は、上官の娘・実緒(山口いづみ)に励まされ、清水技師(高岡健二)の指導のもとで、義足で歩けるようになります。

しかし、実緒(山口いづみ)はよその男と結婚してしまいます。

雄平(植木等)は、実緒(山口いづみ)のいとこの高子(宇津宮雅代)と関係。

やっと生きる希望がわいてきて、改めて仏門を目指そうと、曹洞宗立の駒沢大学に入ります。

ところが、今度は切断した足の骨が伸びたため、再手術で大学は挫折。高子(宇津宮雅代)とも疎遠になります。

社会復帰してまもなく、雄平(植木等)は坂本(中村敦夫)や横田(川谷拓三)らと偶然再会。

雄平は怒りを抑え、横田が「3人で事業をやろう」という提案に乗ります。

朝鮮戦争の特需に乗って、いったんは上昇気流に乗った事業ですが、休戦とともに下降。

挙句の果てに横田に金を持ち逃げされます。

さらに、横田の後を追った坂本は、警察官の暴発で絶命し、横田も罪を犯して逮捕され、雄平はいっぺんに友を失います。

その頃、高子(宇津宮雅代)とは結婚しますが、赤貧のため高子は堕胎し、さらに体も売るようになり、結局関係は破綻します。

そんなこんなで、何かをしようとすると、必ず災いが起こる雄平(植木等)は、自分の人生をはかなみ、定住・定職を断念して三たび剃髪。流浪の僧侶になります。

そして、冒頭とラストのシーンでは、雄平が大きな寺でお経を上げるシーンが出てきます。

要するに、現世の定住・定職を断念し、安心立命(心を安らかにして天命にまかせる)の心境になったら、皮肉にも、寺に「定住・定職」が見つかったという結末のようです。

どのくらいの脚色があるのかわかりませんが、こういう悲運の人生はあるんですよね。

本人に過失はないのに、頑張ろうとすると、そのたび悪いことが起こってしまう。

そして、いっさいを諦めると、道が開けてくる。

天の配剤だとしてたら、あまりにも気まぐれで罪深い配剤ですよね。

植木等は、父親が浄土真宗の住職でありながら、日本共産党員というだけで戦争中に逮捕された理不尽な経験があり、自身も東洋大学出身なので、経を読む「演技」は本物。まさに適役でした。

本作を観て、私は、自分も出家することになるのかな、なんて一瞬考えましたが、現実に僧侶の修行には耐えられそうにないので(汗)、現世から安心立命の心境で生きていこうとすぐに思いなおしました。

続・本日ただいま誕生 (1980年)

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  • 作者: 小沢 道雄
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