『同胞』劇団地方公演担当者と青年団による村おこし [懐かし映画・ドラマ]
『同胞』(1975年、松竹)を鑑賞しました。舞台は岩手県岩手郡。東京のミュージカル劇団公演にこぎつけるまでの、劇団の営業担当者や地元青年団の活動を描いた話です。山田洋次、朝間義隆脚本。高羽哲夫撮影。もちろん監督は山田洋次。出演者も『男はつらいよ』組が顔を揃えました。演劇、アコーディオン伴奏によるコーラスなど、思いっきり「昭和」を感じる作品です。
「同胞」と書いて「はらから」と読みます。
同じ腹から、という意味から「兄弟姉妹」を指す場合と、どうほうと呼んで「同じ国民」という意味に使われる場合がありますが、この作品のテーマは後者でありながら、「はらから」と読むところが目を引きます。
山田洋次監督についてはこれまで、国民的映画になった『男はつらいよ』、過去の怪作である『喜劇一発勝負』や『喜劇一発大必勝』、そして高度経済成長のひずみや郷土愛を描いた『故郷』などをご紹介してきました。
今回の『同胞』は、最後のカテゴリに入る作品です。
『故郷』と同様に、出演者はたぶんネイティブに近い方言で話し、ストーリーはセンセーショナルな展開やどんでん返しなどもありません。
地味に、リアルに、でも力強くクライマックスに向けて進んでいきます。
演出やカメラワークなどに奇をてらった“スペクタクルな超大作”により、宣伝効果のあるうちに大都市集中のシネコンで興行収入を叩きだすのが、昨今の映画の売り方ですが、こうしたじーんと静かに心に染み入る感動で観るものを納得させる作り方は、まさに「昭和の映画だな」という気がします。
松竹が予告編をYoutubeにアップしています。
河野秀子(倍賞千恵子)は、岩手県岩手郡松尾村で、東京の劇団・統一劇場のミュージカル「ふるさと」公演を行うことをすすめに青年団を訪ねました。
既存の劇団の公演を青年団に65万円で売り、青年団が宣伝と集客を行い、65万円以上の売上が出たら利益になるという催しです。
秀子は、毎回の理事会に同席。白熱した議論に参加して、終電に間に合わずに青年団の佳代子(市毛良枝)の自宅に泊めてもらうこともありました。
ただ、65万円という値段から、団長・高志(寺尾聡)だけでなく、青年団全体として、当初はあまり乗り気ではありませんでした。
しかし、痛飲した高志は、秀子らの逗留する盛岡の宿に泊めてもらい、彼女たちの希望に満ちた笑顔を見て、公演にかけてみようという気になりました。
高志は、「赤字になったら俺がベコを売って弁償する」と会議で啖呵を切り、忠治(赤塚真人)や愛子(岡本茉利)などが次々賛成して公演を行うことが決定しました。
開催が決まった後は、チケットをさばくのも苦労しましたが、なんとか650枚を売りました。
しかし、土壇場で、会場に予定していた中学校の体育館が、「有料の催物には貸せない」と校長(大滝秀治)に断わられてしまいます。
秀子はそれに対して、「なら無料でやります。芝居を楽しみにしている人たちのために中止することはできない」と啖呵を切ると、校長は彼女の覚悟に負けて特別に許可すると言いました。
公演は、消防団長(渥美清)らの協力もあって1000人を超える観客が集まりました。
ラストは、公演を終えて帰る劇団員、見送る青年団……ではありません。
公演2ヶ月後、収穫期に入った村の様子と、その後も秀子と高志が手紙のやり取りをして、秀子が村や青年団の面々を気にかけていることを示すシーンになります。
そして、別の地方で、青年団の人と交渉を終えて帰る秀子の姿を映してエンディングです。
とくに地方の先乗り営業を経験した人なら、「うんうん、そうだよな」とうなずけることも描かれているのではないかと思います。
成約して公演さえすめばそれっきりではなく、後のフォローも行うということですね。今回は手紙のやりとりですが、今ならFacebookの「友達」でしょうか。
そうしたつながりによって「次」もあるかもしれないし、別の青年団や自治体によい評判が広がるかもしれません。
いずれにしても、いろいろな地方を回るほど、フォロー先も増えていくわけですが、私などはそうなったときの“顧客管理”が苦手で、営業マンとしては成功できませんでした。
営業というのは人と人とのつながりなんだなあと改めて考えさせられます。
「同胞」と書いて「はらから」と読みます。
同じ腹から、という意味から「兄弟姉妹」を指す場合と、どうほうと呼んで「同じ国民」という意味に使われる場合がありますが、この作品のテーマは後者でありながら、「はらから」と読むところが目を引きます。
山田洋次監督についてはこれまで、国民的映画になった『男はつらいよ』、過去の怪作である『喜劇一発勝負』や『喜劇一発大必勝』、そして高度経済成長のひずみや郷土愛を描いた『故郷』などをご紹介してきました。
今回の『同胞』は、最後のカテゴリに入る作品です。
『故郷』と同様に、出演者はたぶんネイティブに近い方言で話し、ストーリーはセンセーショナルな展開やどんでん返しなどもありません。
地味に、リアルに、でも力強くクライマックスに向けて進んでいきます。
演出やカメラワークなどに奇をてらった“スペクタクルな超大作”により、宣伝効果のあるうちに大都市集中のシネコンで興行収入を叩きだすのが、昨今の映画の売り方ですが、こうしたじーんと静かに心に染み入る感動で観るものを納得させる作り方は、まさに「昭和の映画だな」という気がします。
ネタバレ御免のあらすじ
松竹が予告編をYoutubeにアップしています。
河野秀子(倍賞千恵子)は、岩手県岩手郡松尾村で、東京の劇団・統一劇場のミュージカル「ふるさと」公演を行うことをすすめに青年団を訪ねました。
既存の劇団の公演を青年団に65万円で売り、青年団が宣伝と集客を行い、65万円以上の売上が出たら利益になるという催しです。
秀子は、毎回の理事会に同席。白熱した議論に参加して、終電に間に合わずに青年団の佳代子(市毛良枝)の自宅に泊めてもらうこともありました。
ただ、65万円という値段から、団長・高志(寺尾聡)だけでなく、青年団全体として、当初はあまり乗り気ではありませんでした。
しかし、痛飲した高志は、秀子らの逗留する盛岡の宿に泊めてもらい、彼女たちの希望に満ちた笑顔を見て、公演にかけてみようという気になりました。
高志は、「赤字になったら俺がベコを売って弁償する」と会議で啖呵を切り、忠治(赤塚真人)や愛子(岡本茉利)などが次々賛成して公演を行うことが決定しました。
開催が決まった後は、チケットをさばくのも苦労しましたが、なんとか650枚を売りました。
しかし、土壇場で、会場に予定していた中学校の体育館が、「有料の催物には貸せない」と校長(大滝秀治)に断わられてしまいます。
秀子はそれに対して、「なら無料でやります。芝居を楽しみにしている人たちのために中止することはできない」と啖呵を切ると、校長は彼女の覚悟に負けて特別に許可すると言いました。
公演は、消防団長(渥美清)らの協力もあって1000人を超える観客が集まりました。
ラストは、公演を終えて帰る劇団員、見送る青年団……ではありません。
公演2ヶ月後、収穫期に入った村の様子と、その後も秀子と高志が手紙のやり取りをして、秀子が村や青年団の面々を気にかけていることを示すシーンになります。
そして、別の地方で、青年団の人と交渉を終えて帰る秀子の姿を映してエンディングです。
地方の先乗り営業が描かれている
とくに地方の先乗り営業を経験した人なら、「うんうん、そうだよな」とうなずけることも描かれているのではないかと思います。
成約して公演さえすめばそれっきりではなく、後のフォローも行うということですね。今回は手紙のやりとりですが、今ならFacebookの「友達」でしょうか。
そうしたつながりによって「次」もあるかもしれないし、別の青年団や自治体によい評判が広がるかもしれません。
いずれにしても、いろいろな地方を回るほど、フォロー先も増えていくわけですが、私などはそうなったときの“顧客管理”が苦手で、営業マンとしては成功できませんでした。
営業というのは人と人とのつながりなんだなあと改めて考えさせられます。
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