『浮浪雲』渡哲也、桃井かおり、伊藤洋一、柴俊夫、石原裕次郎 [懐かし映画・ドラマ]
『浮浪雲』(1978年4月2日~9月10日、石原プロ/テレビ朝日)のDVD第1巻を観ました。心筋梗塞の手術が報じられた渡哲也が主演する、ジョージ秋山原作による同名の漫画のドラマ化です。勧善懲悪の、切った張ったとはまたひと味ちがう娯楽時代劇として今も楽しめます。(画像は『浮浪雲』より)
若い頃から大病を繰り返してきた渡哲也が、今度は心筋梗塞の手術をしていたと報じられました。
Google検索画面より
石原プロの社長の任を解かれて、俳優業に専念することになったら、今度はまた大病というのはツイてないですね。
もっとも、1970年代後半から1980年代前半にかけて放送された、『大都会』の黒岩軍団、『西部警察』の大門軍団団長のような仕事は、さすがに年齢的にないでしょうが、
久々のスペシャル版として放送された『西部警察 SPECIAL』(2004年10月31日放送)で演じた、ちょっととぼけた昼行灯のようなキャラクターは今後もあるかもしれません。
その、『西部警察』の大門軍団団長を演じていた当時に作られた「昼行灯」役のドラマが、『浮浪雲』です。
放送されていた日曜20時は、ゴールデンタイムです。裏番組には大河ドラマもあります。
当時の私は、日本テレヒで放送していた中村雅俊主演の青春ドラマ『俺たちの祭』『青春ド真中!』を最優先で観ていたため、プロ野球中継でそれらが放送されない日に『浮浪雲』を観ていました。
ですから、今回のDVDで初めて観た話もありました。
本当に凄い人は凄いところを見せない自由人
舞台は幕末の品川宿。
元は武士でしたが、今は飛脚問屋を営む「夢屋」のカシラが雲(渡哲也)。女房はかめ(桃井かおり)。
息子は新之助(伊藤洋一)。原作には娘もいるのですが、ドラマは3人家族です。
「夢屋」は番頭・欲次郎(谷啓)が切り盛りし、志賀勝、小鹿番、佐藤蛾次郎、苅谷俊介、片岡五郎、岩尾正隆らの“雲助”を抱えています。
欲次郎(谷啓)は時折、雲(渡哲也)にしっかりはたらくよう説教はするのですが、“雲助”たちは仕事のじゃまをされたくないので、「カシラは遊んでいてください」といいます。
雲(渡哲也)はその指示に従って、昼はナンパ、夜は芸者・おちょう(岡田可愛)と酒を飲んで「あっち向いて、ホイ」や野球拳で遊んでいます。
江戸末期にそんな遊びがあったのか、というツッコミは愚問です。
何しろドラマの冒頭に、「このドラマはフィクションであり、時代考証その他、かなり大巾にでたらめです」と開き直っています。
かめ(桃井かおり)はピンク・レディーの歌を歌いながら部屋を掃除し、お座敷では、1978年当時流行した『演歌チャンチャカチャン』をみんなで歌うシーンも出てきます。
新之助(伊藤洋一)は、青田師範(柴俊夫)の主宰する寺子屋に通う真面目な子ども。
時々雲(渡哲也)の生き方に疑問を抱くのですが、ご近所の長老・渋沢老人(笠智衆)に相談に乗ってもらい、逆に父の器の大きさを再評価することになります。
ドラマは毎回、勝海舟や沖田総司、清水次郎長、坂本龍馬など歴史上に名を残す人物が、雲(渡哲也)と関わりを持ち、最後に品川宿を出るところで終わるパターンです。
たとえば、第1回には沖田総司(三浦洋一)が出るのですが、雲(渡哲也)は彼に後をつけられていることにすぐに気づいたり、誰も見ていないところでは“雲助”を狙う悪漢を斬ったりしながら、沖田総司(三浦洋一)には後ろから殴られても殴られっぱなしになって絶対に凄いところを見せません。
近所に住む岡っ引きの春秋親分(山本麟一)は、そんな雲(渡哲也)の凄さに気づかないのですが、沖田総司(三浦洋一)は気付き、あの人にはかなわないと品川宿を去ります。
そのときの沖田総司(三浦洋一)の心中ナレーションが、「前略、おふくろ様……あの人にはかなわないと思ったわけで……」と言い出すのですが、それもそのはず、本作の脚本は『前略おふくろ様』を手がけた倉本聰なのです。
今回の第1巻には入っていませんが、本作の最終話には、一昨日が祥月命日だった石原裕次郎も出演します。
『青春とはなんだ』を石原裕次郎さんの命日に思い出す
「時代考証がデタラメの時代劇」というと、ともすれば無原則な失敗作に終わりそうですが、それをドラマ盛り上げの適切な演出と感じられるかどうかは、脚本や演出家や演者の力量にかかっています。
その点で、本作は「デタラメ」が程よく、肩の力を抜ける楽しいドラマに仕上がっていると思います。
当時は、このドラマを見て楽しみ、気分転換をして日曜日を終え、新しい週の学校生活に気持ちを切り替えました。
時は流れて歳もとった21世紀のこんにちですが、本作は今も同じような役割を果たせるドラマとして、十分通用する秀作だと思います。
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