『ゴー!ゴー!若大将』星由里子はSS従業員、祇園芸者浜木綿子 [東宝昭和喜劇]
『ゴー!ゴー!若大将』(1967年、宝塚映画/東宝)を観ました。12月1日は映画の日ですが、私は本作をご紹介します。若さゆえの失敗にも悪びれない、いつもながら明るく楽しい青春娯楽映画は、他愛ない相変わらずのストーリーなのに、観終わると前向きな気持になれます(画像は劇中より)。
ネタバレ御免のあらすじ
『ゴー!ゴー!若大将』の若大将(加山雄三)は、京南大学陸上競技部。
若大将は町内会の夜まわりに駆りだされたとき、赤まむし(堺左千夫)に襲われそうになったすみちゃん(星由里子)を助けて2人は知り合います。
自動車部は、キャプテンの青大将(田中邦衛)が、不注意から事故を起こしてケガをします。
青大将をパートナーに、全日本学生ラリーに出場する予定だった江口(江原達怡)は、若大将に青大将の代役で参加して欲しいと頼み、いつものように嫌と言えない若大将は承諾します。
練習合宿で京都に着いた若大将は、青大将の父親(北竜二)に祇園に連れて行ってもらい、祇園の芸者京奴(浜木綿子)と知り合い、京奴は何かと若大将の世話を焼きます。
今回のすみちゃんがライバルと思い込む相手は、浜木綿子というわけです。
全日本学生ラリーは、自分たちをからかった挙句に事故を起こしたダンプの運転手を、病院に連絡するなどしていたため優勝を逃します。
が、人助けが高く評価され、自動車販売会社社長である青大将の父親は、自動車部に自動車を寄贈します。
明るく楽しい若大将シリーズ、しかも日産自動車が全面的に協力している作品に、車の事故が2度出てきたわけです。
まだ60年代は道路も整備されておらず、事故は起こるものだという認識が、今以上に強かったのかもしれません。
すみちゃんを、田能久に招待した若大将ですが、その日、たまたま京奴(浜木綿子)が訪ねてきたため、若大将の家族(有島一郎、飯田蝶子、中真千子)は、若大将の交際相手を京奴と間違えてしまい、久太郎(有島一郎)は、すみちゃんを邪険に追い返してしまいます。
ショックのすみちゃんは、勤めもやめて身を引こうとしますが、諦めきれず、京奴に若大将との結婚を祝福に行きます。
そこで、京奴から、若大将が好きなのはあなたなのだといわれて、駅伝で走っている若大将のところに向かいます。
そして例によって、走っている最中の若大将に駆け寄って「すきよ、好き好き」と声をかけ、嬉しくなった若大将が逆転優勝するという、毎度おなじみのハッピーエンドです。
すみちゃんにもっとも感情移入できる作品
結末のハッピーエンドは他の作品と同じですが、本作の特徴は、スポーツ大会がひとつ多かったこと。
駅伝は、すでに3作目の『日本一の若大将』に出てきたものなので、今回は臨時で自動車部の部員になり、京都周辺のラリーに参戦しています。
もうひとつは、いつも誤解とスレ違いでじれったくなる、すみちゃんとの関係が比較的スムーズです。
若大将がラリーに参戦するので、しばらく東京を留守にすると告げると、すみちゃんは、「雄一さんのいない間、私寂しくなるわ」と素直に告白しています。
私もどちらかというと“直球勝負”の人間なので、きちんと自分の意思を伝えるやりとりは、面倒もないし気持ちが良いですね。
また、すみちゃん自身が(私個人で観るに)感情移入できる描き方がされています。
いつものすみちゃんの仕事は、今で言う総合職か、逆に結婚までの腰掛け的な店員さんがのどちらかだったのですが、今回は、SS(サービスステーション←要するにガソリンスタンド)で、つなぎ服を着て油にまみれて働いています。
だからといって、顔まで黒くするのはやり過ぎかも
悪気のない若大将に、お高く止まったようなすみちゃんは、あまりいいカップルに見えなかったのですが、真っ黒になって働くすみちゃんならぴったりです。
すみちゃんを学園祭に招待してOKをもらい、店のモーターバイクではしゃぎながら帰る若大将。
なんて無邪気な男なんでしょう。
例によって、マネージャー・江口の大ボケも健在です。
ラリーのコース地図に書かれている「小さな橋」を、「おさなばし」と読んで、道を間違えます。
第1作目の『大学の若大将』におけるトイレの浄化槽マンホール蓋鉄板焼き、第2作目の『銀座の若大将』におけるドッグフード鍋に続く、「珍食シーン」も本作で復活します。
若大将が、合宿の枕を床に叩きつけて中の小豆が散らばると、おしるこにして食べてしまうのです。
「なんだか油くせーな」という部員の反応は笑えます。
若大将は、老舗のすき焼き屋の坊っちゃんですが、悪気のない青年なので、“悪食”を厭わないのです。
こういうエピソードは、他愛無い話ではあるのですが、若さゆえの、無茶やバカバカしさであり、すごく楽しそうな学生生活です。
映画とわかってはいても、観ていて羨ましい気持ちになります。
現在の、大都市集中シネコン公開の大作や、スケールの大きな方向を常に目指している洋画に比べれば、若大将シリーズなど、テレビドラマで間に合う程度のスモールな作品かもしれませんが、私にはこういう生活感漂う娯楽映画こそが、日々の生活の気分転換に合った、心のなかの名作なのです。
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