『読書の技法』(東洋経済新報社)。著者は佐藤優氏です。以前から読書量の多い方であることは聞いていたので、新刊ではないのですが読みました。佐藤優氏の本との出会いから、読み方を身につけるようになった経緯とその方法を披露しています。今回はそのうち、『多読の技法』と『熟読の技法』についてご紹介します。(上の画像はGoogle検索画面より)
佐藤優氏は元外交官で、現在は作家として月に1000枚以上の原稿を書き、テレビに出演したり、雑誌のインタビューを受けたり、客員教授として教壇に立ったりといった仕事をしています。
その佐藤優氏がたくさんの本を読む、ということは以前から聞いたことがあるので、いつもそれを見習いたいと思っていました。
では佐藤優氏は、具体的にどのくらいの本を読んでいるのか。
本書『
読書の技法』には、こう書かれています。
「
献本が月平均100冊近くある。これは1冊の例外もなく、速読で全ページに目を通している。それから新刊本を70~80冊、古本を120~130冊くらい買う。これも全部読んでいる」
つまり、月に
300冊。
それが、佐藤優氏の読書量です。
上記の仕事以外に、300冊を読んでいるというのです。
なるほど、話には聞いていましたが、大変な読書量です。
ただ、人間は、時間も能力も無尽蔵というわけではありません。
佐藤優氏も、「熟読できる本の数は限られている」と述べています。
具体的には、読書に慣れている人でも、専門書なら300ページ程度の書籍を、1ヶ月に3~4冊読むことが精一杯だといいます。
そこで、残りの296冊も読むためには、書籍によって、熟読、速読、超速読などの選別を行う読書術が必要。
重要な本を絞り込み、それ以外は速読するというのです。
「
筆者が毎月目を通している300冊のうち、熟読している本は洋書を含めて平均4~5冊である。500冊を超える場合でも、熟読しているのは6~7冊だ。熟読する本を2冊増やすのは、そう簡単なことではない。
熟読する以外の本は、速読、超速読のいずれかで処理する。」
佐藤優氏は、
熟読する「平均4~5冊」以外は、1冊5分程度で処理する『
超速読』を240~250冊、30分から2~3時間かけて取り組む『
普通の速読』を50~60冊のペースでこなすというのです。
では、その「超速読」および「普通の速読」とはどのようなものか。
その説明の前に、佐藤優氏は、「熟読」について説明しています。
「熟読」の方法が確立するからこそ、「超速読」および「普通の速読」もできると考えるからです。
ということで、以下に「熟読」についての説明から抜粋してご紹介します。
多読の技法
本には、3種類あるといいます。
「簡単に読むことができる本」「そこそこ時間がかかる本」「ものすごく時間がかかる本」です。
佐藤優氏自身が読んでも、先ほど書いたように熟読できる本の数は新書を含めMax1カ月に6~10冊程度。
最大月10冊を読んだとしても1年間で120冊、30年間で3600冊にすぎない計算です。
3600冊というと大きな数のように見えますが、佐藤優氏にいわせれば、中学校の図書室でもそれくらいの数の蔵書があります。
人間が一生の間に読むことができる本の数は、しょせんその程度であり、その時間と能力の中で、真に読むに値する本を選び出す作業の過程で、速読術が必要とされるということです。
つまり、速読の第一の目的は、漠然とたくさんの本を読むためではなくて、「読まなくてもよい本を外にはじき出すこと」、つまり選別のために行うのだといいます。
そして、同一分野の対立するテーマの書籍は3冊、ないしは5冊と奇数に絞って読むこと。
3や5という「奇数」がポイントです。
偶数では、「賛成派」「反対派」と、対立する説が同数に分かれてしまう可能性があります。
その場合、暫定的に多数決に従うために、読む本は奇数にすると佐藤優氏はいいます。
自然科学はもちろん、人文社会分野も、真理は多数決で決まるわけではありません。
しかし、「世の中には対立する意見がある」のまま、結論が出せずに止まってしまう不可知論では、前に進めません。
歴史にしろ科学にしろ、相対的な真理の長い系列にあるもの。
だったら、新しい真実がわかれば、その時書き換えればいいということです。
そして、基礎知識を身につけたい場合、上級の応用知識まで欲張らないこと。
つまり、その本を読む時の目的をはっきりさせておけということです。
そして、現実の出来事を説明できるかどうかが、その本に書かれていることが知識として身についたかどうかを確かめるめやすになるとしています。
こうしたことを、佐藤優氏は、実在する古典(カール・マルクスの『資本論』など)や啓蒙書を例に挙げて説明しているので、その本を読んだことのある人にとっては、わかりやすいと思います。
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熟読の技法
では、具体的に読み方ですが、佐藤優氏は、「熟読」について6つの段階に分けて説明しています。
本の真ん中ぐらいのページを読んでみる
真ん中というのは、つかみと結論にはさまれた、その本の中で一番弱いところだから、そこをつまみ読みすることで、その本の水準を知ることができる、としています。
シャーペン(鉛筆)、消しゴム、ノートを用意する
本は何となく目で追うのではなく、重要な記述と思われる欄外に線を引きなから読む。
特に重要と思う部分はページの端を折るそうです。
ですから、佐藤優氏は、本は図書館から借りるのではなく、購入することを勧めています。
私は、たとえば図書館で借りて、一読して「これは手元に置きたい」と確認してから購入することも少なくないのですが、佐藤優氏に言わせれば、それは時間の無駄で、だったら最初から買え、ということなんでしょうね。
線を引きながらの通読
線を引きながら読みますが、その際、重要な箇所は線を引くだけでなく、わからないところは「?」をつけます。
読了後、逆に線を消すこともあるので、ボールペンではなく鉛筆を使います。
ノートに重要箇所をシャーペンで囲む
10日間かけて、ノートに重要箇所をシャーペンで囲みます。
ただ、どんなに多くても全体の10分の1以内に留めること。
本書にはそうは書いてありませんが、いうなれば、ダイジェストを作るようなのでしょうか。
囲んだものをノートに転記
囲んだものをノートに転記します。
そして、欄外に「わからない」とか、「○◯の言説と対立」というような、転記したものに対する自分の評価も書き添えておくそうです。
結論を3度読む
目次構成を頭に叩き込んだ上で、結論の部分を3度読みます。
ここまで来ると、最初に読んだ時点ではわからなかったことが、よくわかるようになってくるそうです。
まとめ
私は、本書を読んだのも、佐藤優氏の熟読法を知ったのも初めてです。
ただ、偶然ですが、私がこのブログでご紹介する、DVD化された映画やドラマを観る時に、似たような方法で理解をしてきました。
これまでご紹介してきた映画やドラマは、初めて見る場合、3回は観ています。
1度では、すっと頭に入らないし、何かを記事としてご紹介できるのもむずかしいのです。
その際は、最初一通り見てストーリーを確認して、次は見ながら面白いシーンやセリフを繰り返し見たり、メモしたりして、3度目は、ダレ場は早送りして、作品としてのメリハリを確認する、という順番で鑑賞しています。
でも、肝心の本は、面白いところをその都度、メモしたり付箋を貼ったりする程度でした。
これからは、佐藤優式の熟読法で読んでみたいと思います。
この記事はもう3000字近いので、速読法については、また改めてご紹介します。
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