SSブログ

『だいこんの花』向田邦子が描く父親と“星の王子様”のドラマ [懐かし映画・ドラマ]

『だいこんの花』(1970年~1977年、NET=現テレビ朝日)のDVDをひと通り鑑賞しました。息子・竹脇無我のラブロマンスと、父親・森繁久彌の“暴走老人”としてのエピソードをおりまぜながら、それでもお互いを尊重しあう父子の日々を描いたドラマです。脚本家・向田邦子の代表作とも言われています。



『だいこんの花』は、1970年代に人気を誇ったNET=現テレビ朝日を代表するホームドラマです。

このドラマを含めて、『にんじんの詩』『黄色いトマト』『じゃがいも』『ねぎぼうずの唄』など、同局は木曜日21時枠に、野菜を含めたタイトルのドラマを放送し、テレビドラマ史的にはこれを「野菜シリーズ」と呼んでいます。

私は子供の頃、このシリーズを毎週楽しみに見ていました。

その第1弾である今回の『だいこんの花』は、1970年から1977年まで合計5部にわたって制作され、その第1部と第2部がDVDで販売されています。

5部を通じて、森繁久彌(父親)と竹脇無我(息子)の“父子家庭”で、竹脇無我の役名は永山誠。森繁久彌が永山忠臣といいます。

森繁久彌は軍隊時代は元海軍大佐巡洋艦艦長。当時の部下が近所に住んでいて、森繁久彌にいつも振り回されているという展開です。

ただ、竹脇無我の職業や、元艦長の部下の面々は毎回若干変わります。

“星の王子様”との結婚に夢を描いた時代


竹脇無我の相手役は、“行儀見習”と称するほぼお手伝いさんの川口晶(第1部)、栄養士の関根恵子=現・高橋恵子(第2部)、第3部ではまた川口晶ですが今度は連れ子のいる設定。第4部はホステス役のいしだあゆみ。第5部がやはりいしだあゆみでしたが、森繁久彌の嫁教育に耐えられずに家出した設定です。

竹脇無我は、いずれもエリートサラリーマン。

要するに、昔のような格や釣り合いでみたら、選ばないのではないかと思える相手です。

ドラマのタイトルは、「だいこんの花のように清楚で美しかった亡き妻(母)」という父子の思いを表現したものです。

森繁久彌は、いつも息子に「だいこんの花のような女性と結婚しろ」と言っています。

しかし、ヒロインのキャラクターは、一見それとは全くかけ離れた女性たちです。

でも、見かけはそうではなかったけれども、心は「だいこんの花」だったことに気づき、“身分違い”を克服して結婚するという展開です。

同じ頃、『ありがとう』という、石井ふく子プロデューサーによるホームドラマのお化け番組がありました。

やはりこのドラマも第4部までありましたが、大きな病院の跡取り(石坂浩二)と、母子家庭の看護師(水前寺清子)が結婚する第2部は、今も記録に残る視聴率をたたき出しています。

当時(昭和40年代)はまだ、女性の幸せが、どんな星の王子様と結婚できるか、ということにあったのでしょう。

女性に希望をもたせ、男性の“度量”を見せることで、お茶の間の庶民に夢と希望と感動を与え、人気を獲得したのでしょうね。

私は当時子どもでしたが、面白いドラマだと思っていました。

勝手なことばかりする森繁久彌に振り回されても、大坂志郎以下、昔の部下とその連れ合いたちは何も文句が言えないのです。

ところが、牟田悌三の妻役の春川ますみだけが、はっきりモノを言う人で、「ちょっと永山サン!」と毎話1回はブチ切れ、牟田悌三が必死に止めるのです。

私のように、それを待っている視聴者も当時はいたんじゃないかと思います。

私はこれで春川ますみのファンになりました。

CSでも放送しないし、もう2度と見ることはできないかなと思っていたので、また春川ますみのブチ切れシーンを見られて満足です。

メインライターは、第1部が松木ひろしで、以後は「葉村彰子」という集団脚本家名で一緒に仕事をしていた向田邦子に代わっています。

向田邦子の描く父親は、寺内貫太郎のようなキャラクターが多いのですが、『だいこんの花』の父親は、それとは違う“おもしろ困った”人です。

どちらが、向田邦子の父親のモデルなんでしょうね。

だいこんの花 [DVD]

だいこんの花 [DVD]

  • 出版社/メーカー: エムスリイエンタテインメント
  • メディア: DVD


nice!(299) 
共通テーマ:テレビ

nice! 299

Facebook コメント

Copyright © 戦後史の激動 All Rights Reserved.
当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます