「腸内フローラ」という言葉を最近よく見かけます。『日刊ゲンダイ』(5月6日付)には、「肥満イライラ老化、すべては腸内フローラのバランス改善で治る!?」という見出しの記事が出ていました。腸(内細菌)が健康を司るという説はよく聞きますが、腸ですべてが解決するって本当なのでしょうか。
「腸内フローラ」というのは、「おなかの花畑」という意味だそうです。
腸の中は、菌が花畑のように群がっているというのが命名の由来とか。
記事によると、ヒトの腸には約100兆個の細菌が存在。
善玉菌、悪玉菌、日和見菌(善でも悪でもない)が合計約1キロあり、理想的な配分は善玉2、悪1、日和見7だそうです。
昔からよく、腸の健康がその人自身の健康につながるという話はありました。
でも私は半信半疑で、とくに関心をもったことはないのですが、今回の記事によると、「近年の研究では、フローラのバランスの乱れが体調に影響を与えると分かってきた」として、具体的な病名まで書いてありました。
フローラと病気の関係も少しずつ解明されてきている。たとえば、自閉症の患者は腸内にクロストリジウム属(悪玉菌のウェルシュ菌など)が多く、糖尿病患者はアッカーマンシア(善玉菌)が少ない傾向が見られたという。
驚かされるのは肥満やイライう、うつ……といった身近な問題も腸内フローラと無縁ではないことだ。メタボやイラ立ち、気分の落ち込み……、犯人はフローラかもしれない。
だから腸内バランスが大事で、大腸まで生きて届く乳酸菌、オリゴ糖などを摂取することは病気の予防にもつながると、西崎統・聖路加国際病院内科名誉医長のコメントで記事は結んでいます。
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記事をどう見るか
まず、自閉症というのは
発達障害であり、病気ではないので、この記事はその点で不正確です。
それと、糖尿病やメタボやイライラにしても、これだけでは「腸内フローラが乱れているから」ということにはならないですよね。
原因と結果が逆で、腸内フローラが乱れるから糖尿病になるのではなく、糖尿病だから結果として腸内フローラが乱れるのかもしれません。善玉菌が減るからイライラするのではなくて、イライラするから腸内の善玉菌も減ってしまうのかもしれません。
もしそうだとすれば、乳酸菌、オリゴ糖などを摂取しても「予防」にはなりません。
ですから、同紙は「病気の予防にもつながる」と書いていますが、治るとは書かなくても、この表現どうなのかなと思います。
こういう記事があると、さっそくやってみよう、なんて私も思ってしまいます。
ただ、ダメもとではすまない場合もありますよね。
腸内細菌で自閉症が解決したら、そりゃすごいですよ。
ダメもとで、対策になるサプリメントを試してもいいかなという気持ちになるかもしれません。
が、糖尿病の人が、善玉菌を増やそうとして乳酸菌飲料を飲みまくったらどうなるでしょう。
糖分摂り過ぎたら、まずいですよね。
試せばいいってもんじゃないわけです。
では、こういう研究は全く無意味なのかというと、因果関係には留保をつけざるを得なくても、無意味とまではいえません。
腸内細菌のバランスが、特定の病気について有意に変化する現象は、病気のシグナルとしての意味を持つかもしれないからです。
つまり、腸内細菌をふやしても糖尿病の予防にはならないが、腸内細菌が糖尿病であることを教えてくれてはいる、ということです。
もっとも、私たちが自分の花畑の状態を知る方法は、「ウンチのにおいです。普段より臭いと感じたら、悪玉菌が増え、バランスは乱れている」(西崎統氏)ということですから、もっかのところ、目分量ならぬ鼻分量しかないようです。
これだけではシグナルとするのも難しいですね。
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