『貧乏人が激怒する ブラック日本の真実 「情弱一人負けの時代」を生き抜くヒント』(午堂登紀雄著、光文社)を読みました。「情弱」「ブラック企業」という言葉が、数年前から流行していますが、同書でいう「ブラック」というのは特定のブラック企業ではありません。この国の制度(税金、法律)や企業、マスコミなど国民の思考と財布を振り回す勢力全体を指しています。
そして、振り回される搾取からの解放には、私たちが情弱でなくなることが重要であるとし、情弱が情弱であるのはどのへんに問題があるのかを説いています。
午堂登紀雄氏については、先日、新刊『グーグル検索だけでお金持ちになる方法-貧乏人が激怒する2020年のマネー戦略』(光文社)をご紹介しました。
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『グーグル検索だけでお金持ちになる方法』情報強者のマインド
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『グーグル検索だけでお金持ちになる方法』検索長者の手法
今回の『貧乏人が激怒するブラック日本の真実』は、それよりも前に上梓されています。
一部重なるところもありますが、それは一貫している午堂登紀雄氏の持論なのでしょう。
要するに、思考停止になるな、という話です。
同書は、国や企業、マスコミなどに振り回されないための書籍ではありますが、それらのふるまいや政策などについて検証するのではなく、受け手である国民の「情弱」ぶりを問題にしています。
同書曰く、「情弱とは、情報に振り回されて精神と時間を浪費したり、お金を失ったりする人のこと」。
大仰な宣伝や悪徳商法に騙されてお金を出す人。逆に、ネガティブなレビューや報道を調べもせず鵜呑みにしてチャレンジをせず機会を失っている人。情報に対する感情をネットにぶちまけるだけで、そこから建設的な提案や仮説などを出せない時間の無駄遣いばかりしている人、などがそれに該当します。
同書は、それらについて、騙す側ではなく、騙される側を問題にしているわけです。
もちろん、為政者や企業などと国民の関係から考えれば、仕掛ける側と、受け手である国民という関係である以上、騙すほうが悪いに決まっています。
しかし、司法やジャーナリズムとしてならともかく、個人の生き方として考えた場合、国や企業はケシカラン、といっているだけでは、自分の人生は何も開けてきません。
ましてや、「マスゴミ」などとののしりながら、結局彼らの情報を鵜呑みにして、反射的にネットで感情的な書き込みを繰り返す人々は、思考停止の情弱の典型だと著者は言います。
著者曰く、情弱がなぜ情弱から逃げ出せないかというと、本質は何かと深く考えることを面倒くさがり、考え続ける思考体力が衰えているからといいます。
2年前、プロ野球の楽天が日本一になった時、東北バンザイ、震災を乗り越えた楽天サイコー、などと単純に興奮する書き込みがネットに溢れかえりました。
が、私は、チームのがんばりにケチを付けるつもりはないけれども、あえて懐疑的な記事を書きました。
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楽天優勝で本当に乗り越えるべきものは?
2年後の現在、案の定、メジャーに行った田中将大投手は右肘に不安を抱え、楽天球団はオーナーの現場干渉が原因でチームがうまくいっていなかったことがバレています。
被災地だって、楽天優勝で何かが変わったわけでもないでしょう。
マスコミに振り回されず、本質を見ろ、という著者の意見は実によく分かるのです。もちろん自戒を込めて……。
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騙す「ブラック」より騙される「情弱」の方が悪い?
今の話は批判精神の欠如ですが、逆に、批判精神の使い方を間違っている例も著者は示しています。
たとえば、企業のCMに著名人が出て、その企業がトラブルを起こすと、一部ネット民は、その著名人をスケープゴートにします。著者は、それも「情弱」のふるまいであるとしています。
たとえば震災後に破綻した和牛投資。ある政治家がその和牛投資を推奨していて、彼に対して裁判を起こそうという人もいるようですが、20年以上も問題なく続く、なんてことが20年前からわかるはずもありません。
広告塔になった人が悪いのではなく、広告塔の発言を信用し、自分で確認することを怠ってお金を払った本人の自己責任です。
もっとも、落選中の海江田万里元民主党代表のことを執拗に責める一部のネット民は、投資をしたわけではなく、ただ非難したいだけなんだろうと思いますが……。
著者は、情弱でなくなる対策として、企業のマーケティングを疑えといいます。
その1つの方法として、たとえば、テレビCMを見て、「缶コーヒーとハリウッドの俳優はなんの関係もねえだろ?」とケチをつけたり、「この資格を取得すれば転職にも有利!」とあれば、実際に求人があるのか、すぐに転職サイトで調べたりなど、「広告を見てツツコミを入れる」ことを奨めています。
情報に従順ではいけないし、それを克服するためには、日頃から懐疑する癖をつけなければならないということです。
また、「ノマド(オフィス以外の様々な場所で仕事すること)」や「起業」する人々について、嫉妬ともいうべき中傷も、「建設的ではない」と批判しています。
そういう人は、いつまでたっても終身雇用制の価値観から抜け出せない「正社員絶対主義」であるとともに、いつも「自分にはチャンスがない」とぼやき、チャンスがあっても、「新聞やテレビで批判していた」「それはネットで評判が悪かった」などと、ネガティブなことばかり言って、何もチャレンジしようとしない人だといいます。
チャンスとは、「恐怖」や「リスク」というお面をかぶって流通している、チャンスは自らつかみ取りに行くものであって、向こうからやって来るのを待つようなものではない、と著者は戒めます。
また、結婚相手に年収を求めて、なかなか結婚できない婚活女性については、「年収というのは、現時点でのスナップショットにすぎない」と注意しています。
「相手が今、いくら稼いでいるか」よりも、「この相手となら貧乏生活でも楽しめるか」「一緒に成長していけるか」などを見ろと書いていますが、もっともな話です。
そういう女性は、ネットに様々な
婚活ブログがあるので、そうしたものを読んで、価値観を広げたほうがいいかもしれませんね。
ほかにもいろいろ書かれています。
正直申し上げて、戦争についての考え方など、同意できない点も一部ありますが、著者は、「あえて極端に振った」と書いており、読者の闊達な意見を求めているようです。
もちろん、建設的なものに限る……ですが。
自分は情弱ではない、とお考えの方でも、同書の指摘には、考えさせられることもあるかもしれません。
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