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『加山雄三のブラックジャック』原作とは違うから面白いのに…… [懐かし映画・ドラマ]

加山雄三のブラックジャック

『加山雄三のブラックジャック』(1981年1月8日~4月9日、松竹/テレビ朝日)の話を久々に書きます。またFacebookの話題ですが、『加山雄三のブラックジャック』について盛り上がっています。原作と比べて出来が気に入らない、というコメントが書き込まれています。


以前書いたように、『加山雄三のブラックジャック』は、放送当時はあまり評判がよくなかったのです。

理由は、

原作のイメージを壊した
加山雄三はキャラクターが違う
衣装やメイクが安っぽい……


といった理由で、まあはやくいえば、原作至上主義です。

その意見は、現在でも根強いようです。

私も、このブログではこれまでさんざんご紹介してきましたが、当時は加山雄三に対する理解も関心もそれほどなかったので、高い評価はしていなかったと思います。

【加山雄三のブラックジャック関連記事】
『加山雄三のブラックジャック』ふたつの愛、加山雄三、村野武範
『加山雄三のブラックジャック』復讐こそわが生命、音無美紀子
『加山雄三のブラックジャック』えらばれたマスク、日色ともゑ
『加山雄三のブラックジャック』灰色の館、入川保則
『加山雄三のブラックジャック』助けあい、前田吟
『加山雄三のブラックジャック春一番』秋吉久美子、五十嵐めぐみ

ところが、平成になり、ネットで個人が趣味のサイトを作れるようになると、『加山雄三のブラックジャック』を懐かしがり、また観たいと表明するサイトがボチボチ出始め、Web掲示板でも盛り上がりをみせました。

つまり、賛否両論、毀誉褒貶が混在(でも否定派が多数かな)のドラマというわけです。

そして、メーカーがそのニーズを敏感に感じ取り、DVD化されてCSでも1度放送されました。

テレビ朝日で放送された当時は学生だった私も歳をとり、ドラマの質がすっかり変わってしまった、平成のテレビドラマに馴染めずテレビ離れをしていたので、懐かしさもあって改めてDVDを鑑賞。

すると、同作は、昭和の温かみを感じる、そして独自の雰囲気を持った個性的なドラマだったんだなあということがわかり、原作と比較した主観の、何と矮小なこと、と思うようになりました。

本作にかぎらず、原作と、映画やドラマ化されたものを単純に比較し、後者に文句をつける意見があります。

が、翻案作は、元の作品から独立した別個の作品ですから、そもそもコンセプトが違うので、単純に比較しても無意味です。

『加山雄三のブラックジャック』というのは、まさに、若大将シリーズなどを実績とする加山雄三が、ブラックジャックを演じた作品です。

手塚治虫は、別に加山雄三をモデルに描いていたわけではないでしょうから、原作と違って当たり前なのです。

まあ、過去観たドラマの中で最高傑作、とまでは思いませんが、そんなにクソミソにけなすような失敗作とも思いません。

ということで、今回は事実上の最終回だった第12話を観ました。

原作には出てこない、ブラックジャックの普段の顔である画廊オーナー・坂東次郎の友人である、倉持警部(藤岡琢也)の話です。

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犯人と警部、そしてブラックジャックの友情


奇妙な友情
『奇妙な関係』より

定年間近の倉持警部(藤岡琢也)は、かねてから追い続けていた1億円強奪犯を、やっと時効間際でおいつめます。

ところが、犯人・曽根カズオ(岩谷隆広=谷隼人)の恋人、チャコ(根岸季衣)の運転ではねられて倉持警部は崖から転落。

その際、倉持警部はカズオを撃ったため、ともに重傷を負いました。

2人を見つけたのは、ブラックジャックファミリーのピノコ。

ブラックジャックは、カズオの腎臓を倉持警部に、倉持警部の肝臓の一部をカズオに移植して、2人は一命をとりとめました。

2人は同じ病室でカーテンで仕切られているため、会話はできてもお互いの顔を知りませんが、お互いに命を助け合った同士として奇妙な友情が芽生えます。

カズオは入院中に時効が成立。

しかし、ブラックジャックは肝移植の費用として1億円の手術料を要求し、結局カズオは、せっかく時効になった強奪の1億円を、そのままブラックジャックに支払います。

ブラックジャックは、倉持警部に対し、自分への詮索をやめることを条件に、手術代を無償、そして強奪した1億円を渡すと提案しました。

事件は時効で犯人は助かりましたが、強奪金を取り戻して倉持警部の顔も立たせるという大岡裁きです。

「どうして、そんなに私に気を使ってくださるんですか?」と倉持警部が尋ねると

「友達だからな……倉さん」と、答えるブラックジャックに、倉持警部はその正体を察します。

結論


ドラマと原作との違いは、ブラックジャックが、周囲の人に助けられたり、また逆に医学的処置以外で周囲の人を助けたりと、人間ドラマになっていることです。

すべてを絵で完結できるマンガなら、シンプルなキャラクターですむかもしれませんが、実写となれば、その人の生活を描かざるを得ません。

ブラックジャックは普段は何をしているのだろう。

ドラマでは、画廊オーナーであり、執事と暮らして留守を預かってもらっているという設定で、その疑問に答えています。

では、加山雄三でなければもっといい作品ができたのかといえば、おそらくは誰が主役でも、原作至上主義者からは、また違ったないものねだりの不満が出てきたのではないかと思います。

私は、ドラマや映画は、アラ探しよりも、創作性を肯定的に楽しみたいと思っています。

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