『加山雄三のブラックジャック』(1981年、松竹/テレビ朝日)をまた観てしまいました。今回は第9話「助けあい」です。濡れ衣の容疑者にされたところを、アリバイ証言してくれた人が、汚職事件に巻き込まれ、今度はブラックジャックが恩返しするという話です。
『加山雄三のブラックジャック』についてご紹介するのは今回で5回めなのですが、本作の記事は、いつも参照数が増えます。
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『加山雄三のブラックジャック』ふたつの愛、加山雄三、村野武範
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『加山雄三のブラックジャック』復讐こそわが生命、音無美紀子
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『加山雄三のブラックジャック』えらばれたマスク、日色ともゑ
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『加山雄三のブラックジャック』灰色の館、入川保則
『加山雄三のブラックジャック』というのは、もう35年も前に放送され、DVD化やCSの再放送ですら15年も前に行われている、昭和の古き良き時代のドラマです。
原作原理主義者からは、イメージが違いすぎるとコバカにされているのですが、一方で根強いファンも多く、『加山雄三のブラックジャック』をテーマとする個人サイト(ブログ)もあります。
私は原作原理主義者よりも、もっと穏健で(笑)、むしろ、原作にない、画廊オーナーとしての顔や、執事らの存在こそが、ブラックジャックのキャラクターに奥行きを持たせていると思っています。
そして、原作の面白さに加え、加山雄三の悪気のない若大将テイストと、昭和のドラマらしいなんとも言えぬ温かさ、それを松竹という綺麗な映画を作る会社が制作していることで、「なんだよ、原作とイメージ違うなあ」といいながらも、ついつい観てしまう魅力になっているのではないかと思います。
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ネタバレ御免のあらすじ
倉持警部(藤岡琢也)が、いつになく厳しい表情で、ブラックジャックのもうひとつの顔である坂東次郎(加山雄三)の経営する「神武画廊」にやってきました。
殺人事件の容疑者として、坂東次郎を逮捕したのです。
しかし、坂東にはアリバイがありました。
事件のあった時刻、お酒が入っていた蟻谷(前田吟)と公園で意気投合し、『雨降りお月さん』を唄っていたのです。
蟻谷が刑事(今井健二)に証言したことで、坂東は無事釈放されます。
蟻谷(前田吟)が酩酊していたのは、会社の使途不明金の責任を、経理担当の自分に押し付けられようとしていたからです。
蟻谷は遺書まで書かされ、車にはねられます。
ブラックジャックは、執事・遠藤(松村達雄)らと一芝居うち、蟻谷の病室に入り込みます。
そして、息絶えるのを待つだけの、会社とグルの医師(稲葉義男)を一喝して、蟻谷の蘇生手術を行いました。
生き返った蟻谷ですが、新聞報道ではすでに自分は死んだことにされており、また名乗りを上げれば今度こそ会社に消されるかもしれません。
遺書を書かされたのは事実でも、自筆である以上、警察に行っても自分の主張が通るかどうかわかりません。
ブラックジャクは、そのために蟻谷の顔を変えてしまいます。
要するに、蟻谷とは別人として、妻子の隣に住むことにしたのです。もちろん妻子には自分のことを名乗ったうえで。
蟻谷は、坂東のおかけであるとお礼を言いますが、坂東は、
「これはお互い様ですからね。私もあなたに助けられたときは、本当に嬉しかった」
マジレスすれば、別人として生きるということは、戸籍をどこかから買ってくることになりますから、それ自体、法を犯していることになります。
が、バイオリン演奏のBGMで笑顔で握手するラストでは、そういうツッコミなど無用であるという気になります。
前田吟に骨格などが似ている俳優を使っています
昭和のドラマらしい、温かみのあるラストです。
こういう話を観ると、「情けは人のためならず」だなあ、などと一瞬綺麗な気持ちになるのですが、なかなか現実の世の中は、そううまくはいきません。
世の中の人がみんな、坂東や蟻谷のような人たちばかりだったら、きっともっと世の中はよくなるだろうになあ、なんて思います。
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