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『あっと驚く科学の数字』森永卓郎氏も勧める知的な居酒屋ネタ [(擬似)科学]

科学の数学

『あっと驚く科学の数字 最新宇宙論から生命の不思議まで』(数から科学を読む研究会、講談社)を読みました。タイトル通り、本書は、化学、医学、宇宙物理学などで解明された、地球や人についての様々な話を、科学ライターの執筆と諸分野の研究者の協力により、数字を導入として紹介しています。



本書の目次を見ていくと、数字を使ったタイトルが並んでいます。

「宇宙の地平線」までの距離は470億、宇宙全体で観測可能な物質の割合は4.9%、太陽の中心を出た光が地球に届くまで1000万年、地球上の生物の種類は174万種、最後の氷河期が終わったのが1万年前、日本人が一生の間に排泄する糞便の量は5トン、蘇生可能な最低体温の記録は13.7度、人間の体内に住んでいる細菌の数は600兆……など。

といっても、トリビア的に数字を知ってもらえばそれでいいという紹介の仕方ではないのです。

あくまでも数字は導入で、中の文章は関連する話題についてじっくり書いています。

日本人が一生の間に排泄する糞便の量は5トン


たとえば、「日本人が一生の間に排泄する糞便の量は5トン」というのは、日本人の1日あたりの排便は約200グラムであり、80年生きるとしてその合計が5トンという話です。

これは戦前の400グラムを下回っているそうです。

なぜそれほど少なくなったのか。戦前の日本人は、1日平均30グラムの食物繊維を摂っていたのに、現代はその半分の15グラムしか摂っていないのだそうです。

この数字は欧米人の80~120グラムに近づいており、食生活の欧米化の影響を見て取れると著者はいいます。

何の栄養にもならない不消化物の食物繊維が、健康上多くの利点を持つという説は、ウガンダ人の排便量が470グラムと欧米人に比べて多いことがわかり、また欧米人に比べて、大腸がんや糖尿病、肥満、胆石、痔、便秘などが少ないことがわかったこと(1974年)に始まっているといいます。

また、日本人は腸が長いといわれてきましたが、つい最近の2013年に、日本人、アメリカ人650人ずつを大腸3D-CT検査で調べた結果、日本人の平均が154.7センチ、アメリカ人が158.2センチで、実は大差なかったという新しい説も紹介しています。

人間の体内に住んでいる細菌の数は600兆


「人間の体内に住んでいる細菌の数は600兆」というタイトルも興味を引きました。

よくいわれるのが、人間の細胞の数は約60兆という数字ですが、ちょうどその10倍もの細菌が体内に住み着いているわけですね。

最近は、腸内フローラという言葉が、検索キーワードとして急上昇するほど、腸内細菌が注目されています。

「腸内フローラ」サプリメントで自閉症や糖尿病は予防できる?

その腸内細菌は、指紋のように個人を特定すらできるのではないかと思われるほど人によって様々で、どんな要因でその人の持つ腸内細菌が最終的に決まるのかは、まだわかっていないそうです。

このように本書は、数字だけでなく、中の読み物自体が、既説、新説を織り交ぜ紹介されているのです。


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科学は「わからないこと」があるから存在する


私がこの『あっと驚く科学の数字 最新宇宙論から生命の不思議まで』を知ったのは、『日刊ゲンダイ』(6月8日付)に出ていた森永卓郎氏のレビューでした。

以前書きましたが、私は森永卓郎氏の価値観に共鳴するところがあったので本書を読んでみました。

『優雅な暮らしにおカネは要らない』必要なのは教養と生きがい

森永卓郎氏は、具体的に同書のどこが面白かったかを書いています。
例えば、原子核には陽子と中性子が入っているということは知っていた。しかし、陽子や中性子がクォークという素粒子からできているということは、学校では習わなかった気がする。陽子はアップクォーク2個とダウンクォーク1個から、中性子はアップクォーク1個とダウンクォーク2個からできていて、原子核の外には電子があるから、すべての物質は、たった3種類の素粒子からできていることになる。ところが、世の中には12種類の素粒子が確認されていて、残りの9種類が何のために存在しているのかは、よく分かっていないのだという。

森永卓郎氏は、このことをもって「何という訳の分からなさだろう。でも、科学はこうだから楽しいのだ。森羅万象すべてが分かってしまったら、科学する心など、吹き飛んでしまうだろう。」と述べています。

要するに、科学は、「ここまではわかっている」という既知の大系ですが、別の言い方をすると、「わからないこと」があるからこそ科学は存在する、ということもいえるわけです。

森永卓郎氏は、本書の内容について、居酒屋でのネタにすることを奨めています。

酒席での話題。引き出しを増やして、たまにはこうした話で周囲を「ほーっ」と思わせるのもいいかもしれませんね。

あっと驚く科学の数字 最新宇宙論から生命の不思議まで (ブルーバックス)

あっと驚く科学の数字 最新宇宙論から生命の不思議まで (ブルーバックス)

  • 作者: 数から科学を読む研究会
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/03/20
  • メディア: 新書


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