『松本清張の熱い空気 家政婦は見た!夫婦の秘密「焦げた」』(1983年、テレビ朝日)を観ました。視聴率は27.7%(関東地区・ビデオリサーチ社調べ)をたたき出し、後に市原悦子の代表作ともされる「家政婦は見た!」シリーズにつながるその第1作です。(画像は本作より)
世田谷線の通る東京・下高井戸にある協栄家政婦紹介所(所長は野村昭子)。
そこに登録して住み込む、要するに専従の家政婦・河野信子(市原悦子)が主人公です。
“同僚”の家政婦には、石井富子(現石井トミコ)、野中マリ子、西川ひかるらがいます。
当時の家政婦サービス料金は、9時~17時で5800円、という説明テロップも出ます。
そのうち10%が紹介所の取り分だそうですが、つまり、フルタイムで580円。
しかも、彼女たちはそこで晩御飯も食べています。
食事付きで、しかも市原悦子のように住み込んでいたら、紹介所は利益出るのだろうか、という余計な心配までしてしまいました。
それはともかく、信子(市原悦子)はどんなに慣れて楽な仕事でも、1度行った家には興味がありません。
新しい家を求めて、今回は大学教授・稲村達也(柳生博)、春子(吉行和子)夫妻の家庭に行きます。
そこには、息子2人と、足腰の弱った老母・ツネ(鈴木光枝)がいます。
達也(柳生博)は研究一筋、春子(吉行和子)は教育熱心、子どもたちも従順。非の打ち所のない家庭に見えます。
しかし、信子(市原悦子)は、そんなものは嘘だと思っています。そして、自分がその家庭の虚構ぶりを暴いてやろうと意欲を燃やします。
なぜ、信子(市原悦子)がそう思うようになったのか。
かつて自分の夫は浮気し、離婚後は愛児を失う不幸を経験したため、幸せな家庭なんてあるものかという人生観、人間観を抱いているからです。
案の定、達也(柳生博)の弟子・大津(中丸新将)が遊びに来ると、春子(吉行和子)は妙に浮かれていることを知ります。
そして、達也(柳生博)の部屋の掃除をしていると、ホステスらしき女性からの恋文も出てきました。
信子(市原悦子)は、わざとそれを目につくところに置き、春子(吉行和子)に見せます。
憤慨し、動揺した春子(吉行和子)は、夫への貞操を守るべきかどうか迷いつつも、時々大津(中丸新将)と会うようになります。
またしても速達で達也(柳生博)に送付されたラブレターを、信子(市原悦子)は、わからないように開封。
先方が会いたいという日時を確認すると、達也(柳生博)をうまくそそのかして、会いに行くように仕向けます。
これだけですと、家政婦としてやってはならない信書開封まで行って、家庭を壊す仕掛けを施すならず者になってしまいます。
が、達也(柳生博)の相手は、ホステスではなく、信子(市原悦子)の予想を超えたどんでん返しがあり、信子(市原悦子)の策略など小さなことで、いずれ露見する家庭崩壊だったという結末になっています。
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夫婦や家庭の脆さを考えさせる
リアルタイムで放送されていた頃は、あまり熱心には観ていなかったのですが、今回はつい面白くて、これだけでなく続編も観てしまいました。
最初は、自分の不幸体験の憂さ晴らしを、仕事先の家庭でやっているように見えたので、なんとも寂しい話だな、なんて思いました。
でもまあ、しっかりした絆で結ばれた夫婦や家庭なら、家政婦が悪意で突っついたって、びくともしないはず。
それでおかしくなってしまうのは、一見幸福そうに見えても、ちょっとしたことで壊れてしまうという、家族の脆さであるわけです。
かといって、人間ですから、ましてや夫婦は他人ですから、どこかに隙があったとしても、それをもって「至らなかった」というのも酷な話。
要するに、夫婦というのは、添い遂げるのも、何かがきっかけになって関係が破綻してしまうのも、時の運の影響を受ける“紙一重”なのかもしれないなあ、なんて思いました。
また続編もいずれ記事にしたいと思います。
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