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「たばこ病」は“自業自得”か?

2003年10月21日、東京地裁(浅香紀久雄裁判長)は長年の喫煙で肺がんなどになったとして、患者たちが日本たばこ産業(JT)や国などに損害賠償を求めた「たばこ病訴訟」の判決公判で、患者の訴えを退けている。

浅香裁判長は、「喫煙は、肺がん・喉頭がん・食道がんなどの疾病に罹患するリスクを高める。このようなリスクは、もはや社会の常識」としたが、販売側の責任については、「ニコチンは依存性があるが、アルコールや禁制品の薬物に比べ弱く、喫煙者の意思で禁煙できる」と判断。

「たばこがし好品として社会に定着している事情も考慮すると、製造・販売自体が違法とは言えない」とJTの主張を支持した。つまり、禁煙は喫煙者の努力の範囲で解決するものだ、としたわけである。

患者側は、自動販売機での販売禁止、有害表示の強化、マナー広告を含めたコマーシャルの全面差し止めなども求めたが、いずれも退けられた。

伊佐山芳郎・弁護団長は、「5年間の審理で判決に期待していたのに。米国に比べると30年前の判断で、世界から著しく遅れた判決だ。喫煙が病気のリスクを高めることは、社会で認知されていると判決はしたが、ならば世界レベルの警告表示にすべきなのに、認められず残念だ」と述べた。

日本のたばこ対策は、大蔵省・財務省が一貫して税収確保を優先し、人々の健康を守る公衆衛生がおざなりにしてきたとの指摘も少なくない。

ちなみに、厚生労働省は2003年12月18日更新のホームページで、「たばこに依存性があることは確立した科学的知見」で、「独立した疾患として扱われて」いると明言している。

つまり「たばこ依存」は疾患と認定しているのである。

それでも、「たばこ病訴訟」については結局上告も棄却され、原告は全面敗訴している。
タグ:たばこ病
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「不謹慎・自粛ムード」で誰が喜ぶのですか?

「買い占め、買いあさり」「政府、東電批判タブー」に次いでもうひとつ。

「不謹慎・自粛ムード」も、私は気に入りません。

今回の地震は、被災者の皆さんの精神的肉体的苦悩も、原発も解決していません。
つまり、まだ進行中の事故です。

そこで、予想通り、ネットでは自粛・不謹慎ムードがいまだに蔓延しています。

楽しんではいけない。楽しんだことを書き込んではいけない。浮ついた表現はいけない。

とにかくしめやかにしてろ……。

そうなると、話題にも表現にも最大限の注意を払わなければならず、
消極的な表現活動にならざるを得なくなります。

まったく生産的ではない、馬鹿げたムードだと思います。

そんなことをして、たとえば原発の問題が解決するのでしょうか。
日本国中を暗い気分にすることで、何かが生まれるのでしょうか。


ずっと昔のこと、私が父親を亡くした時、自分は悲しく不幸であるのに、
テレビも週刊誌も、学校の級友の生活も、みな普段通りで、一瞬ムカツキました。

何だ、自分だけ不幸かよ、みんなも不幸になればいいのに。
心の中ではそう思いました。

でも、しばらくして、いや、これでいいのだ、とも思いました。

周囲にしめやかにされても、父が帰ってくるわけではないし、
自分のために周囲に歩調を合わされても、不毛でありかつ負担です。

そんな同情よりは、こちらが困っている時に
出来る範囲で助けてくれればいいよ、と思いました。
困った時はお互い様、というふうにすればいいと。

今回、被災者の人々にとって、何がいいのか、と考えた場合でも
同じではないかなと思います。

普段通りの生活の中から、支援などできることをする。
それでいいのではないでしょうか。

もちろん、「普段」といっても中には議論のあることも承知しています。
節電が必要な時に、照明を煌々とつけるプロ野球開催を
「被災者を励ます」などという現実的でない大儀で実施すべきかどうか……

でもね、個人ブログで自由な表現活動をすることぐらい
コストもかかりません。

いずれにしても、何かをすれば、何かが生まれる可能性はありますが、
自粛からは何も生まれないと思います。

自粛したい人の邪魔はしません。
でも、自粛しない人の邪魔もしないで欲しいです。
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「政府、東電批判を手控えろ」論は被災者にとっていいことなのですか?

東日本大震災。

私が気に入らないのは、再三書いている「買い占め、買いあさり」とともに
「政府、東電批判を手控えろ」論です。

テレビの画面に出てくる、官房長官や東電幹部の「懸命」な説明、
悲惨な被災地と危機感のある原発の映像と説明にすっかり興奮し、

とにかくそこに関わる「立派な」人の「がんばり」には一切意見を言わずに
見守ろうという観念論が、ネットの一部にあるようです。

私は、これはいかがなものかと思います。

いや、たんに個人的な好みとしての異論反論ではなくて、
それは結局、解決を遅らせ新たな禍根をもたらすことで
被災者の人々のためにならない、という点で「まずい」と思っています。

菅総理のやらずもがなの視察パフォーマンスが、
原発1号機人災説につながっていることは
すでにマスコミが書いています。

その一方で、肝心の補正予算、自衛隊出動、避難区域指示など
すべき決断が致命的なくらいに遅れたり後手後手に回ったりしていることも。

昨日も書きましたが、総理が東電幹部をしかりつけて、さかしらに
「オレ様は原子力の専門家だから、東日本がつぶれる可能性があるのも分かっている」と
言いはなったというニュースは、それでも一国の総帥なのかと
背筋が凍る思いがしました。

屋上屋としかいいようのない、マスコミに露出の多い女性議員の関係ポスト任命も
何だかなあと思っていましたが、案の定、れんほうという大臣が
やらずもがなの「周知メール」を出したことが物議を醸しています。

東電についても、現場の作業員の労苦と、
幹部の隠蔽体質を区別しないミソも糞も一緒くたにした「温かく見守り論」は、
情に弱い、というより無原則な日本人らしい観念論です。

命の危険も厭わず頑張る現場の作業員を中傷したがる人間などいやしません。

ただし、彼らの大半は、東電の社員ではありません。
下請け、もとい、孫孫請けぐらいの無権利な労働者です。
日当9000円ぐらいで命賭けて……
その立場からして私は涙が出てきます。
彼らの労苦に報いるためにも、
隠蔽体質と後手後手の対応である東電がきちんと
世間の批判を受けるべきであると私は考えます。
違いますか?

ところが、政府、東電擁護論者は、こう言います。
「批判はこの事態が収束してからでイイ!」

「それは間違っている」「こうした方がいい」ということを
今、言わないでどうするのですか。
後になって、こうすればよかったと
あれこれ愚痴る方が、よほど不毛です。

擁護論者は、被災地で、飢えと寒さに震える人々に
「政府と東電を温かく見守れ、批判は後にしろ」と、胸を張って言えますか?

今一番大事なことは、被災者の方々の安全と安心であり
政府や東電の顔色ではないはずです。

被災者にとって、不利益・不都合なことは、
言い訳無用の「悪いこと」なのです。

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やっぱり……

昨日、スーパーの棚から納豆が消えたことを書きましたが、
納豆だけでなく米もインスタントラーメンもパンも牛乳も、
そして、スーパーによっては卵も「完売」です。

インスタントラーメンは袋、カップを問わず。
米は、一般の精米だけでなく「サトウ」とか「加ト吉」のパックご飯も売り切れです。

スーパーだけでなく、コンビニも。
そして、普段は「安売りものマニア」でなければ買わない
ディスカウントショップのものまできれいに売れています。

これ、おかしいですよね。
東北からの入荷がない、だけでは説明が付きません。

昨日あたりから、マスコミでも「品不足」を、やんわりとですが
批判的に報じ始めました。

私も少しそういうお店に話を聞いてみたのですが
1人暮らしの人が、本来ならそんなに食べないだろう、という量を
買っていくケースは確かに少なくないといいます。

統計をとったわけではないですが
要するに、一部消費者の買い占め、買いすぎという、私の推理が
残念ながら外れてはいなかったということになります。

宮城や福島のような被害のど真ん中にある地域ならともかく、
部屋のモノがちょっと散らばったぐらいの首都圏で、
なぜそんな終戦後のドサクサのような
なりふりかまわずの状態になってしまうのでしょうか。

入荷が少なくなるといっても、
東北、北海道地域からだけで、日本全国が壊滅しているわけではありません。

こういう時だからこそ、みんなが普段よりも少しだけ我慢することで、
大変な時期を乗り越えられるのではないでしょうか。

それなのに、世間が困ろうが、自分だけは困りたくないというすこしずるい心が働き、
みんなが買いすぎに走ったことも、突然の品不足の一因になっている
のではないのでしょうか。

ネットでは、募金とか、善意に基づいた呼びかけがされています。
それは必要なことであるし、いいのですが、
綺麗事や大向こう受けする善意の前に
自分の生活のもっと基本的な部分で
考えるべきことがないかどうか、自省してみることも
必要ではないでしょうか。
タグ:地震
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買い占め?

私の住む東京城南地区は、JR某駅の駅ビルも、駅前商店街の一部も「臨時休業」。
もちろん、地震のためです。
総菜とか、買おうと思ったのですが、残念。

近所のマーケットも、欠品も多く、棚は空っぽが目立ちました。
野菜、魚などは棚がガラガラで
肉や肉製品はいつも通りでした。
魚がないことについては
ああ、塩釜も気仙沼もそれどころでは
ないんだよなあ、と改めて思いました

それにしても、いつもはたくさん残っている納豆まで空というのはどういうことでしょう。
「いつもより売れる」というのはあるかもしれませんが、
お店では、毎日値引きしてさばくのに苦労していたようですし
入荷がなかったとしても、完売ということは普段はあり得ないのです。
みんな、いつからそんなに納豆好きになったの?

こういうときに限って、買い占める人がいるんですね。
買い占めというほどでなくとも、こういう時期なので
必要ないものでもいつもより多めに買ってしまう
のかもしれません。

そういえば、93年の米不足の時も、
米自体が不足している上に、
買い占める人がいました。

夏になって早場米が出回る頃から、ニフティのBBSなどを使って
買い占めた米を処分していましたが、
それは不愉快でした。

別に納豆ぐらいしばらく食べなくても、食生活が成り立たないわけでは
ありませんが、推理したような、買い占め、買いすぎで
ないことを願いたいです。

だって、みんなが困ってる時に、早い者勝ち、自分さえよければなんて、
何か嫌ですよ。


……と、書きましたが、これはたんに買えなかった私のヒガミで
別に事情があるのかもしれません。

決めつけや思い込みはいけませんね。

店員は忙しそうだったので聞けませんでしたが、
明日真相を聞いてみようと思います。

タグ:地震
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地震で遮断機が上がらなかった……

規模は国内観測史上で最大のM8.8!

今回の地震は凄かった……
被害に遭われた方へ、心よりお見舞いを申し上げます。
亡くなった方々へ……心よりお悔やみ申し上げます。

当方、東京は城南地区におりましたが、いつにない横揺れで、
断続的、そしてその都度長く揺れるんで、気が気ではなかったですね。
今回ばかりは、地震、怖いなと思いました。

木造の建物のため、やばいな、つぶれるかもと思い、
急いで机の下に潜り込みました。
実際、積んであった本は部屋中に散らばりました。

困ったのは、電車が不通なのに、
電車の踏切がカンカン鳴って遮断機が下がったまま。

当然、車は渋滞。最初のうちは、みなさん真面目に待っていたのですが
20分も30分もそのままなので、
遮断機をこじ開けて渡っていきました。私も含めて……

何かのトラブルで電車が動かなくなると、すぐにそうなるのです。
電車が動かない時は、遮断機はあげてくれませんか>東急池上線

政府には、緊急の対策や補正予算など
きちんと対応して頂きたいのはもちろんですが、
このドサクサで、外国人献金問題や竹島舌禍問題などについて
責任がウヤムヤになることを心配しています。

それはそれ、これはこれ、とちゃんと区別して理性的に見たいものです。
タグ:地震
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食べ物のリスクと伝え方

8年前、すなわち2003年の明日(3月11日)、東京都内や和歌山県内で市販されている、鯨の内臓を原料にした食品をラットに食べさせると、中に含まれる水銀の影響で腎臓の障害などが起こることを、北海道医療大と第一薬科大のグループが突き止めたと報じられた。

グループが、調べたのは鯨やイルカの肝臓などを塩ゆで加工した食品。「くじらのうでもの(ゆでもの)」などとして知られ、インターネットなどを通じても売られている。

このことは、米・ソルトレークシティーで始まった米毒性学会で発表された。

同医療大の遠藤哲也講師は、「内臓食品を食べた人間にも、水銀による健康影響が出る可能性が高い」と警告している。

一般に、食物連鎖の関係で、大きなものほどそのリスクは高いといわれる。その意味で鯨のリスクは確かに高い。

しかし、ではどれくらい食べるとどの程度のリスクがあるか、ということに対してはきちとんした発表はない。

厚生労働省は2003年と2005年、キンメダイやメカジキなど一部の魚について、「胎児に影響を及ぼすおそれがあるレベルのメチル水銀を含有している」ため、妊婦がそれらを食べるのは週2回以下が望ましい、という注意勧告を行ったことがある。

この勧告で、一時期は一部の魚の取引値が暴落した。結論からいえば、同省がこのリスクの対象としたのは胎児のみである。一般の成人は妊婦も含めてもちろん無問題。乳児は、「母親が通常の食生活をしていれば母乳中のメチル水銀は十分低濃度」であり、小児は「成人と同様にメチル水銀を排泄」するのでやはり問題ない。

だが、リスクの報じ方をひとつ間違えると、風評被害に繋がることがあるので、十分注意しなければならない。

もっとも、風評云々というほど、そもそも鯨の肉が流通しているか、という問題はあるのだが。
タグ: 水銀 リスク
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元オウム幹部の死刑判決で“司法取引”より優先したもの

戦後史上、カルト教団のトラブルもきちんと見ておかねばならない出来事である。

先日の2月16日、土谷正実被告の死刑が確定した。

土谷正実被告は、「尊師の直弟子」と1審で自称するなど、麻原彰晃死刑囚に対する強い帰依の姿勢をみせていた。

もう一人、教団幹部には井上嘉浩被告という強い帰依の姿勢をみせていた信者がいた。

彼もまた、死刑判決を受けている。

2004年5月28日、東京高裁(山田利夫裁判長)は、地下鉄サリン事件など10の事件で殺人などの罪に問われた元オウム真理教幹部の井上嘉浩被告に対する控訴審で、無期懲役とした一審・東京地裁判決を破棄し、死刑を言い渡した。教団による一連の事件で一審の無期懲役が覆ったのは初めて。死刑判決は13人目になる。

井上被告は教団「諜報省」の元トップで、元代表・松本智津夫被告の側近と言われたが、逮捕後は積極的に取り調べに応じ、松本被告の公判でも地下鉄事件直前の謀議の様子などを詳細に語って検察側立証の柱になった。

しかし、被告が起訴された10事件は、「諸事情を最大限考慮しても死刑を選択するほかない」(山田裁判長)と結論付けられた。

井上被告については、ジャーナリストの江川紹子氏が、講演で次のように触れている。これはなかなか興味深い。

「例えばオウム真理教の中で,幹部としていろいろな犯罪に関わりながら,今ではオウムで何が行なわれていたかを法廷で明らかにし,むしろアンチオウムの立場になっている井上嘉浩という青年がいます。

彼はもう絶対オウムに戻ることはないと思います。でも何か聞いているとずれてくるのです。どこがずれてくるのだろうということでずっと裁判を見ていましたが,私にはよく判りませんでした。

それについて,カルト問題に関わってらっしゃる心理学の専門家の方が何度も面会を重ねて心理鑑定を行い,法廷で話されたことは,『結局マインドコントロールが100%開放された状況ではない』ということでした。

つまり麻原教からは脱したけれども,今度は別のものが彼を支えているということです。例えば彼の中では,チベット仏教がオウムの柱になっているのですが,彼には弁護士や家族,その他裁判所が特別に認めた人以外とは面会はできないため,正しくその仏教を教えてくれるという人もいません。そのため,本を読みながら自己流にチベット仏教なるものに接近しているようなのです。

ですから,その先生の話によると,麻原教から井上教になったか,あるいは井上流のチベット仏教になっただけで,思考の方法や何かに依存している精神状態は根本的に変わったとはいえないのではないかということです。また,想像力がまだ弱いですから,オウムに感情をマインドコントロールされていたがゆえに起きていた諸々の問題点がまだ全部解消された訳ではないともいわれています。

それを聞いてなるほどと私も思いました。このことから,マインドコントロールというのは行くか出るかではなく,段階的に―白と黒の間にはいろいろな濃さの灰色がありますが―そういった状態であると考えた方が良いのではないかと思う訳です」(講演タイトル、日本におけるカルト教団の実体と問題点)

そもそも死刑という制度自体には賛否両論あるし、オウム関係の被告に対してそれを簡単に申し渡すことで事が解決するのか、という意見もあるが、ここではその点は措こう。

それとは別の視点として、「オウムに感情をマインドコントロールされていたがゆえに起きていた諸々の問題点がまだ全部解消された訳ではない」という、江川講演での井上被告に対する見方に立てば、今回、いくら井上被告が「反オウム」になったからといって、「反カルト」になったとはいえない以上、他のオウム重大事件関連の被告らと比べ「よりまし」であることにはならないから、その者達と“同じ判決”にするというふうに考えれば、今回の判決は辻褄があうのかもしれない。

戦後史上の一大判決だった。
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大相撲・八百長問題、真実は暴露から?

大相撲・八百長問題が深刻化しているさなか、15年前に出版された伝説の書『八百長~相撲協会一刀両断』が緊急復刊されるという。

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外相長女の記事は「プライバシーの侵害」か(後)

東京地裁が2004年3月16日、17日に発売予定の『週刊文春(3月25日号)』の出版を禁止する仮処分命令を出した件の続きである。

法律やマスコミなどの研究者の多くも、「差し止め」には批判的だった。

「出版の事前差し止めは、例外中の例外であるべきだ。『週刊文春』のように政治的、社会的に大きな影響を持っているメディアについて、こうした厳格性、明確性の要件がどのように判断されたかが問題だ」(2004年3月18日付「しんぶん赤旗」で堀部政男中央大教授)

「1人の裁判官による安易な判断があしき前例をつくったと言っていい。メディア側も今回の出版禁止の妥当性を検証すべきです。なのに、新聞・テレビはプライバシーへの配慮なのか、長女の離婚を伏せて報道している。出版禁止の理由を伏せたままでは検証など不可能。メディアがこのていたらくでは、ますます公権力による言論弾圧をはびこらせるだけです」(3月19日付「日刊ゲンダイ」で服部孝章立教大教授)

今回の決定について、あの「石に泳ぐ魚」事件の原告側代理人として「プライバシー」を掲げて闘った梓澤和幸弁護士も、2004年3月19日付「朝日」で「差し止め」に批判的なコメントを出していた。

「記事内容はかなりプライベートで、判例を機械的にあてはめると差し止めが認められるケースかも知れない。しかし、政治家の子どもは単純な私人ではない。

政治家を追及する記事の多くは、家族や秘書など周辺から迫っている。その点を含めて考えると、今回の差し止め決定をやや憂慮している。表現の自由はそれほど軽いものではない」

一方、「産経」や「読売」などは、「差し止め」の意味をきちんと報じることなく、「やむなし」の論調を貫いた。

連日、とりあげられたこの事件は、その後、東京高裁が31日、仮処分を妥当とした東京地裁決定を取り消し、長女側の仮処分申請を却下する決定をして命令は効力を失った。最初は「不服を申し立て」を予定していたとされる長女側は、4月3日、不服を申し立てず、記事の削除や損害賠償などを求める訴えを起こした。
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