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森永太一郎伝(三好右京著、東京菓子研究協会) [文学]

森永太一郎伝(三好右京著、東京菓子研究協会)

森永太一郎伝(三好右京著、東京菓子研究協会)は、森永製菓の創業者である森永太一郎の生き様と功績についてまとめた書籍です。なんと昭和12年初版です。少年時代、在米時代、創業時代、拡張時代、翁の時代と、まさにその生涯を語り尽くしています。(文中敬称略)

『森永太一郎伝』(三好右京著、東京菓子研究協会)は、日本の洋菓子産業の父とされる森永太一郎(もりなが たいちろう、慶応元年6月17日(1865年8月8日) - 昭和12年(1937年)1月24日)の生涯を記録した伝記です。

「日本近代菓子産業の父」とも称される人生は、挑戦と革新の連続でした。

この書籍は、森永製菓の創業者としての人物像や、事業家としての功績を明らかにするとともに、日本における洋菓子文化の発展に果たした役割を紹介しています。

日本で最初にキャラメルを作った男の軌跡



森永太一郎は、肥前国松浦郡伊万里(現・佐賀県伊万里市)に生まれました。

生家の森永商店は、陶磁器の積み出し港として栄えた伊万里で一番の陶器問屋で、伊万里湾の漁業権を握る網元でもありましたが、父の代には家勢も衰え、6歳の時に父が病死すると財産は人手に渡ります。

そして、母は再婚。

しかし、母親は太一郎を引き取りませんでした。

太一郎は、半年ごとに親類の家を転々とする不遇な幼少時代を過ごしました。

12歳で、奉公の余暇に手習いをさせてもらう約束で、川久保商店という本屋の住み込み店員となり、やっと今で言う小学校の教育を4歳も5歳も年下の子どもたちと一緒に受けることになりましたが、成績は優秀で、店主からは学問の道に進むことも勧められました。

しかし、太一郎は、祖父のような立派な商人となり、森永家を建て直すことしか考えていませんでした。

やがて、伯父の山崎文左衛門に引き取られて山崎太一郎となり、商人の心構えを教え込まれました。

またしても改名です。

このときはもちろん、本人が望んだものではありませんが、商人としてのスタートという意味がありました。

伯父は、「お前は親がなく哀れな孤児だが、親戚など頼っても、むしろ寂しさが募るばかりで、やがては心が歪んでろくなものにならない。自分で商売を始めてみろ。ただし、それには5つの大切な心得がある」

そこで、太一郎は、商人として守るべき5箇条を叩き込まれます。

1.一厘の金にも尊さを忘れてはならぬ。(どんなに小さな金額でも、その価値や大切さを忘れてはならない。)
2.不正の金は絶對に鬻ひではならぬ。(不正な手段で得たお金や、不正な取引に関わるお金を決して使ったり扱ったりしてはならない。)
3.一度發表した値段は定價として厘毫も引いてはならぬ。(公表した価格を信頼の証とし、その価格を守り続けるべきである。)
4.約束は決して破つてはならぬ。(どのような状況でも、取引や人との約束は必ず守ることが重要である。)
5.十年を一期間として方針を立て眼前の損得などで以上の大計を變へてはならぬ。(長期的な視点で事業計画を立てるべきであり、目の前の小さな損益に左右されて大きな方針を変えてはいけない。)
(以上pp.12-13より)

太一郎は、13歳で野菜の行商人になり、15歳から伊万里焼の問屋に奉公し、19歳で上京して、叔父も出資していた横浜の合資会社有田屋(伊万里焼の営業所)で働きました。

そして、1988年には、九谷焼をアメリカで売ってみようと、その時点で結婚して娘もいましたが渡米。

しかし、それは失敗に終わりました。九谷焼は全く売れず、古道具屋で二束三文で処分しました。

仕方なく、米人家庭の掃除や皿洗いなどで糊口を凌ぐうち、日本では誰も手掛けていなかった西洋菓子の製造に目を付けます。

きっかけは、ある土曜の午後、公園でぼんやりしていると、芝生に転がって歌を歌っている学生たちが、キャンディを小箱から出して食べて楽しそうにしている光景が目に入りました。

本書によると、「彼の瞳にはいひ知れぬ輝きが溢れて来た」(p.53)といいます。

これが、お菓子作りを思いついた瞬間だったわけです。

ただし、人種差別の強い時代のためもあって、なかなか望む仕事は見つかりませんでした。

この時期、下働きとして住み込んだスカンジナビア人とアイルランド人のクリスチャンの老夫婦に親切にされたことをきっかけにキリスト教に関心を持ち、のちにメリマン・ハリスから洗礼を受けます。

いったん帰国したところ、洗礼を受けたことで激怒した伯父に離縁され、森永の戸籍に戻ります。

いよいよ味方が誰ひとりいなくなった太一郎は、背水の陣で再渡米して、今度は西洋菓子の製法を身につけるために雑用係からスタートして5年間過ごし、帰国後は2坪の小さな家で製販一体の卸菓子店を創業しました。

これが森永製菓の始まりでした。

チャレンジするから次の一手も見えてくる



そしてこんにちまでに、森永製菓は日本一のお菓子メーカーになりました。

伯父から教わった、前述の5箇条が、事業を発展させる上での指針となりました。

ストーリーとしては、キャンディからすぐさま森永製菓の隆盛につながった方がわかりやすいのですが、そこは現実の社会ですから、なかなかスムーズに自己実現はできず、ひとやまふたやまあったわけです。

しかし、最初の勝負として異国の地・アメリカに乗り込み、全力を尽くしたけれども失敗してどん底だったからこそ、まっさらなところから新しい道を模索する気持ちになり、キャンデーからひらめいたわけです。

どん底に落ちることも恐れずに勝負せよ、さすれば次の道も開き得るものである

という教えがそこにあるように思います。

うまくいけばそれでよし。うまくいかなくても次があるさ。

やっぱり、まずは当たって砕けろなんです。

凡夫は、最初の勝負すらしないか、しても中途半端だから、後悔ばかりしていて、次の道が見えてこないのです。

森永製菓が最初に手掛けたのはマシュマロ、次にキャンディ、チョコレートなどを発売しました。

最近では、お菓子だけでなく、ひざ軽コラーゲンのような機能性表示食品のサプリも扱っています。

私のお気に入りは、カカオ70チョコ、ミルクキャラメル、チョコモナカジャンボ、パキシエルなどです。

森永製菓のお気に入り商品はありますか。

菓商: 小説森永太一郎 (徳間文庫 わ 6-1) - 若山 三郎
菓商: 小説森永太一郎 (徳間文庫 わ 6-1) - 若山 三郎
菓子づくりに愛をこめて: お菓子の王さま・森永太一郎 (PHP愛と希望のノンフィクション) - 若山 三郎, 木川 秀雄
菓子づくりに愛をこめて: お菓子の王さま・森永太一郎 (PHP愛と希望のノンフィクション) - 若山 三郎, 木川 秀雄
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t-yahiro

五箇条のうち2番を反目している父親から徹底されて
厳しくされました。拝読させていただいてうちのオヤジも
まともなことを言っていたんだなと驚きました。
by t-yahiro (2025-01-09 22:13) 

侘び助

森永・明治・ロッテなどと浮気をしていますが
森永***に(冬でも冷凍室にはチョコ最中眠っています(*'▽'))
by 侘び助 (2025-01-09 22:20) 

おっつぁん

舶来のお菓子は、インパクトあったでしょうな。

by おっつぁん (2025-01-09 23:38) 

HOTCOOL

田町駅前の森永ビルも立て替えてますね。
by HOTCOOL (2025-01-10 03:49) 

Take-Zee

【お詫びとお知らせ】
  昨日、Seesaaブログへの移行を確認していたら操作ミスで
 SSブログが一気に移動してしまいました (゚Д゚)
  予定では3月に引っ越しするつもりでしたが思わぬ事態に
 困惑してします。
  元に戻れないのでSSブログ同様、こちらでもお願いします!

  Seesaaブログ・・・> https://take-zee.seesaa.net/
by Take-Zee (2025-01-10 04:50) 

mutumin

森永が最初にマシュマロを作ったんですか?私は大好きで、よくスイーツにマシュマロを添える事が多いです。サプリメントも買いました。おまけに森永のお菓子が付いて来るんです。
by mutumin (2025-01-10 06:43) 

夏炉冬扇

森永キャラメル。懐かしくなります、箱見ると。
by 夏炉冬扇 (2025-01-10 08:46) 

tarou

爪木埼灯台(須崎半島の先端に建つ高さ17mの灯台)静岡
25/01/10 09:42:53
Re: No title
> この灯台は、1960年代後半から70年代前半にかけて放送された、日本テレビの「〇〇青春」で、毎回登場するロケ地でしたね。

ジャケット写真やロケ地になっているようですね(^^)v
白い灯台に青い空・海はデートコースにも良さそうです。

森永太一郎伝は読んで見たくなります、
森永キャラメルの育ての父だったんですね(^^)v
良く食べてました。
https://taro1.fc2.net/
by tarou (2025-01-10 09:49) 

ソレイユ

Seesaaブログへのコメント、ありがとうございます。
一時間に1万歩、とはすごいですね!
by ソレイユ (2025-01-10 11:25) 

いっぷく

みなさん、コメントありがとうございます。

> 反目している父親から徹底されて
> 厳しくされました
たぶん4番も言われたのでは。

> 冬でも冷凍室にはチョコ最中
チョコモナカ。よくできていますよね。

> インパクトあったでしょうな
マシュマロなんて誰も見たことすらなかったのでは。

> 森永ビルも立て替えてますね
森永本社はそのビルには入らず移転するみたいですね。

> SSブログ同様、こちらでもお願いします
今度ともよろしくお願いいたします。

> おまけに森永のお菓子が付いて来る
そうなんですね。調べてみます。

> 懐かしくなります、箱見ると
今は袋のパッケージをよく見かけますね。

> 良く食べてました
私は今でも毎日一粒食べています。

> 一時間に1万歩、とはすごい
この時期でも汗ばみますね。

by いっぷく (2025-01-10 14:23) 

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