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ヤマハの企業文化とCSR: 感動と創造の経営(志村和次郎著、ラジオプラン) [文学]

ヤマハの企業文化とCSR: 感動と創造の経営(志村和次郎著、ラジオプラン)

『ヤマハの企業文化とCSR: 感動と創造の経営 山葉寅楠・川上嘉市のDNAは受け継がれた』(志村和次郎著、ラジオプラン) をご紹介します。日本楽器製造(現ヤマハ)創業者である山葉寅楠が、1台の壊れたオルガン修理から世界の楽器メーカーに成長した軌跡を振り返っています。(文中敬称略)





本書は、ヤマハの創業者・山葉寅楠、中興の祖・川上嘉市、ヤマハ発動機を創立した川上源一らによる、ものづくりとヤマハ独自の企業文化についてまとめられています。

このブログ記事では、その中の山葉寅楠(やまは とらくす、1851年5月20日(嘉永4年4月20日) - 1916年(大正5年)8月8日)にフォーカスします。

日本の近代産業史における重要な人物であり、特に楽器製造と音響技術の分野で大きな功績を残しました。

現在は、楽器や音楽を軸に事業を展開するヤマハと、二輪車やマリン事業などを軸にするヤマハ発動機の2社で事業を展開しています。

ピアノの修理からこんにちのヤマハが誕生



ヤマハというと浜松のイメージが強いですが、山葉寅楠は紀州徳川藩(和歌山県)の藩士の子弟です。

幼少の頃から機械いじりが得意で、機械技術の才覚は早くから発揮され、藩士の子弟でしたが職人の道に進みました。

地元で時計修理や医療器具の修理を行い評判を得ると、長崎に出て英国人のもとで時計の修繕法を学び、その後大阪の医療器具店に勤め医療器具の修理工として働いたといいます。

技術を習得した後、1884年から医療機器の修理業で浜松支店に駐在し、逗留した「よそ者」だったと本書では紹介されています。

その時代に、医療器具の修理だけではなく、時計をはじめとした機械器具全般の修理などを請け負うようになっていました。

1887年、浜松尋常小学校(現在の浜松市立元城小学校)でアメリカ製の高価な足踏みオルガンの修理を頼まれます。

当時、オルガンは全て輸入品であり、修理部品も入手困難な状況でしたが、山葉はその構造を分析し、部品を自作して修理に成功します。

修理しながら寅楠は、その構造を知り、自分なら10分の1のコストでも作れるぞと思いましたが、調律はそれほど簡単なことではなく、芸大の専門家から「音程が違う」といわれてしまいました。

すると、山葉はそのまま東京に残って調律の勉強をし、1887年(明治20年)、音程を正したオルガンを完成しました。

この仕事を通じてオルガン製造に興味を持ち、独自に設計・製作を開始し、日本初の国産オルガンの製造に成功しました。

同年、山葉は独立して「日本楽器製造株式会社」を設立。今日のヤマハ株式会社の前身です。

寅楠は、楽器製造において海外の進んだ技術を学ぶため、ドイツ・ベルリンを訪れました。

特にピアノの製造技術に注目し、その仕組みや音響特性を徹底的に調べました。この経験をもとに、1900年(明治33年)には、日本初のアップライトピアノを製造。

これにより、欧米に依存していたピアノの製造技術を国内で確立しました。

ピアノ製造の普及を通じて日本の音楽教育と文化の発展に寄与しました。

その技術力と品質の高さが国内外で評価されたことで、ヤマハは次第に事業を拡大しました。

外の技術者と交流しながら製品を改良し、日本製楽器の信頼性を高めました。

特に木材の選定や加工技術は革新的で、国際市場でも競争力を持つ製品を生み出しました。

楽器とともに、「ヤマハ」のもうひとつの柱であるオートバイは、1954年の「YA-1」の誕生をきっかけに始まりました。

第二次世界大戦後、日本の楽器製造は一時的に低迷したため、ヤマハ(当時は日本楽器製造)は、戦後の新しい産業への参入を模索し、1953年、当時の社長川上源一がオートバイ市場の可能性を見出し、オートバイ製造への参入を決定しました。

YA-1は、1955年に行われた富士登山レースと浅間火山レースで優勝し、ヤマハのオートバイが高性能であることを証明しました。

同年、オートバイ事業を本格化するために、分社してヤマハ発動機株式会社が誕生しました。

山葉寅楠は技術者としての探究心と実業家としての行動力を兼ね備えた人物といわれています。

「良いものを作り、世に貢献する」という理念と、自分の技術や考えに固執せず、他者から学ぶ姿勢を持ち続けたといいます。これが、彼の事業成功の鍵でした。

楽器の会社がオートバイを作るのですから、たしかに柔軟です。

本当のこともあれば誤認もあるコピペ



私は知らなかったのですが、昔、ヤマハの成り立ちを示したコピペが流行っていたとか。

ヤマハの歴史
・最初は輸入ピアノの修理→楽器関係作る
・楽器やってた流れで電子楽器も作る→DSPも作る
・DSPを他に利用しようとして→ルーター作る
という流れで、楽器、電子機器、ネットワーク関係の製品を作るようになった。

じゃ、なんで発動機や家具とかも作ってるかというと、

・ピアノの修理で木工のノウハウが溜まる→家具を作る→住宅設備も作る
・戦時中に軍から「家具作ってるんだから木製のプロペラ作れるだろ」といわれて戦闘機のプロペラ作る→ついでにエンジンも作る
・エンジン作ったから→バイクも作る
・エンジン作ったから→船も作る→船体作るのにFRPを作る
・FRPを利用して→ウォータースライダー→ついでにプールも作る
・プールの水濁ったんで→浄水器作る
・失敗作の浄水器で藻が大繁殖→藻の養殖始める→バイオ事業化(出典不明)

そこで、上のOGPは、それが本当かどうかを、わざわざヤマハに取材に行ったという話です。

結論として、正しいことと事実ではないことがあるそうです。

>「輸入ピアノ」ではなく「輸入オルガン」
>「ピアノの修理で木工のノウハウが溜まる」については、「ピアノの修理」ではなく「オルガンやピアノ作り」で、「戦闘機」は「軍用の航空機」
>「プロペラ作ったついでにエンジン作った」のではなく、いったん占領軍に接収された機械が戻ってきたので、何か作れないか考えた結果、バイクの開発に着手
>「・FRPを利用して→ウォータースライダー→ついでにプールも作る」は、プールのほうが先
>「プールの水濁ったんで→浄水器作る」は事実ではなく、インドネシア駐在社員の「水道の水が茶色い」という相談がきっかけ

などです。

事業自体は事実なのだから、もっと正確に整理してから拡散すればよかったのにね。

みなさんも、ピアノ、エレクトーン、オートバイ、ボート、ヨットなどYAMAHAの製品、音楽教室、鳥羽国際ホテル、「つま恋」や「合歓の郷」などのリクリエーション施設などを、何かしら利用されているのではないでしょうか。

ヤマハの企業文化とCSR: 感動と創造の経営 山葉寅楠・川上嘉市のDNAは受け継がれた - 志村 和次郎
ヤマハの企業文化とCSR: 感動と創造の経営 山葉寅楠・川上嘉市のDNAは受け継がれた - 志村 和次郎
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kuwachan

今はもう手放してしまいましたが
うちにあったピアノはヤマハでした。
by kuwachan (2024-12-07 23:33) 

おっつぁん

「ヤマハ」を漢字で書くと山葉でしたか。
by おっつぁん (2024-12-07 23:39) 

t-yahiro

数十年前その音楽教室で楽器演奏をアルバイトで短期間教えていましたが、来月はそのメーカーのユニットバスを交換しに行きます。
そのときはまさかこうなるとは思いませんでした。

by t-yahiro (2024-12-07 23:56) 

mau

ウチにあったピアノはヤマハでした
by mau (2024-12-08 00:59) 

HOTCOOL

山葉がヤマハなんだ。初めて知りました。
by HOTCOOL (2024-12-08 04:41) 

mutumin

↑と同じで私もヤマハ、山葉さんという人が作ったんだと思ったらこの名字良いなと思いました。
家は子供達がピアノをやっていたので、ヤマハのグランドピアノが居間にドーンと陣、じゃまです。子供達がいないので、誰も弾かれないピアノが声も出せずに色んな物が上と下に置かれ、拘束された感じで可哀そうです。
by mutumin (2024-12-08 05:46) 

mutumin

↑と同じで私もヤマハ、山葉さんという人が作ったんだと思ったらこの名字良いなと思いました。
家は子供達がピアノをやっていたので、ヤマハのグランドピアノが居間にドーンと陣どって、じゃまです。子供達がいないので、誰も弾かれないピアノが声も出せずに色んな物が上と下に置かれ、拘束された感じで可哀そうです。でもね、私が癌になった時にがん保険に入って、そのおりたお金で買ったので、私の身代わりな気がするのと、つい6年前まで長男はプロとしてジャズをやってた事もあり、思い出を捨てる気がして、売れないんですよ!
by mutumin (2024-12-08 05:51) 

pn

楽器のヤマハ、バイクのヤマハ、両方YAMAHAだけどバイクのMは真ん中の隙間が無く全部地面に着いてるって話を聞いたんだが楽器のYAMAHAの看板見た事ないので本当なのか不明(笑)
by pn (2024-12-08 06:15) 

ハマコウ

ヤマハ本社工場の近くに勤務していた頃、何年か前になくった、
時刻を知らせるミュージックサイレンがよく聞こえました。

by ハマコウ (2024-12-08 06:25) 

安奈

おはようございます。
楽器とバイクは知ってましたが、
お恥ずかしながらそれ以外の事業は
まったく知りませんでした^^;
by 安奈 (2024-12-08 06:35) 

夏炉冬扇

炭酸ガスの発生量と思います。
使っているのは樫です。一時、櫟も使いましたがパチパチはじきます。
by 夏炉冬扇 (2024-12-08 08:09) 

sasanono

我が家にピアノはありませんでしたが
親戚の家にあったのは、どれも YAMAHA でした。
東京は銀座に立派な店舗があり、従姉妹と時々行きました。
YAMAHA は、バイクの他, スポーツ用品のイメージも!
(しかし、弟のバイクは HONDA でした*)
by sasanono (2024-12-08 09:11) 

十円木馬

大学入学して、免許取得後バイトして買った原付バイク「ヤマハ・タウニィ」。渡辺貞夫さんがテレビCMで宣伝していました。今は足を揃えて乗る原付ばかりですが、タウニィはまたがって乗るまさに男のバイクでした。
by 十円木馬 (2024-12-08 09:20) 

まつき

このコピペ、私も知りませんでしたが、大まかな流れは
合っているんですねぇ。
ピアノからオートバイまで不思議な会社だな~って思っていましたが、
なるほど、そういうワケでしたか! でも楽しい会社ですね!!
by まつき (2024-12-08 10:50) 

いっぷく

みなさん、コメントありがとうございます。

> うちにあったピアノはヤマハでした
ヤマハかカワイ、どちらかという家が多いんでしょうね。

> 漢字で書くと山葉
知らない人は多いかも。

> そのメーカーのユニットバスを交換
ヤマハのユニットバスということでしょうか。

> ウチにあったピアノはヤマハ
そういう人は多いですね。

> 山葉がヤマハなんだ
山葉という苗字自体、珍しいのでは。

> ヤマハのグランドピアノが居間にドーンと
グランドピアノがご自宅にあるのですか。それはすごいですね。

> バイクのMは真ん中の隙間が無く全部地面に着いてる
それは知りませんでした。同じメーカーでもそんなことがあるんですね。

> ヤマハ本社工場
ということは静岡県浜松市でしょうか。

> 楽器とバイクは知ってましたが
やはりヤマハといえばその2つが有名ですよね。

> 炭酸ガスの発生量
なるほど。炭も奥が深いです。

> YAMAHA は、バイクの他, スポーツ用品のイメージも
そういえば友人のテニスラケットがヤマハでした。

> 渡辺貞夫さんがテレビCMで宣伝
「男のソフトバイク、YAMAHA TOWNY」ですね。ちなみに妻は若い頃懸賞でYAMAHAのバイクが当たり、目録を受け取りに行くのにバイク本体がもらえると思いこんで軽トラで会場に行ったそうです。

> 大まかな流れは
> 合っているんですねぇ
コピペのほうが話としては面白いですけど、正確ではなかったんですね。

by いっぷく (2024-12-08 15:05) 

Take-Zee

こんにちは!
楽器のヤマハからバイクのヤマハ・・・
清水の一大企業ですね!
by Take-Zee (2024-12-08 15:45) 

センニン

こんばんは。
ヤマハの楽器を使っています。
ヤマハのマークは音叉を三つ合わせた形ですね。

川上源一さんは子供の教育にも熱心で、本も書かれています。
アーティストでは第7回のポプコンで入賞した谷山浩子をかなり高く買っていたそうです。
中島みゆきはポプコンで世に出たことに恩義を感じて移籍せずにいます。

ヤマハはオーディオ製品やスポーツ用品にも手を伸ばして、いい製品がたくさんあったのですが 合歓の郷 や つま恋 など手を広げ過ぎたのかもしれません。

今収益の柱は LSI だそうです。
FM音源のシンセサイザーの出現は画期的でしたが、ガラケーの時代の着メロを実現させたのもヤマハの LSI だそうです。

国会議事堂の家具もヤマハ。
トヨタ2000GTのエンジンもヤマハ発動機。

ヤマハの楽器は信頼性が高くて安定していて初心者が手にするには最適ですし、プロに愛用される機種もたくさんあります。
管楽器は最初は手がけていませんでしたが、ニッカンを吸収してから本格的に始めました。
管楽器の中でもオーボエやファゴットなどは当初は作っていませんでした。
弦楽器はかなり遅くなってからですね。

エレクトーンはヤマハの電子オルガンの商品名なのですが、一般名詞のようになってしまいました。多分 NHK では言わないと思います。
by センニン (2024-12-08 17:55) 

かずい

山葉寅楠の「壊れたオルガンから始まる挑戦の物語」に感動しました!修理から学び、技術を磨き、国産オルガンを生み出す姿勢はまさに「創造の源泉」ですね。今のヤマハの躍進が納得できます
by かずい (2024-12-08 20:08) 

いっぷく

> 清水の一大企業ですね
事業内容が幅広いですね。

> エレクトーンはヤマハの電子オルガンの商品名
なるほどそうでしたか。オセロやマジックテープと同じですね。

> 修理から学び、技術を磨き、国産オルガンを生み出す姿勢
機械いじりの才能が実ったのでしょうね。

by いっぷく (2024-12-08 21:43) 

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