青春とはなんだ（石原慎太郎、講談社） [文学]
青春とはなんだ（石原慎太郎、講談社）は、アメリカ帰りで背中に刀傷のある、正義派で八方破れの高校教師を巡る学園生活を描いた青春学園小説です。著者の実弟・石原裕次郎さん主演で映画化され、テレビドラマは日本テレビの看板番組である青春学園ドラマ枠の基礎を作りました。
石原慎太郎さん（1932年9月30日～2022年2月1日）の訃報以来、注目を集めているのが、作家としての過去の作品群です。
国会議員や東京都知事の在任期間は40年を超えましたから、若い方は政治家のイメージが強いでしょうね。
石原慎太郎さんは、一橋大学在学中の1956年に『太陽の季節』が第34回芥川賞を受賞。
「太陽族」が生まれる契機となりました。
太陽族というのは、既成の秩序にとらわれないで、奔放に行動する戦後派青年の類型をそう呼びました。
石原慎太郎さんは、そうした戦後派青年を主人公にした、青春小説をいくつも上梓しました。
中でも私が印象深いのは、『青春とはなんだ』です。
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映画化、テレビドラマ化されて人気を博す
『青春とはなんだ』（６５・舛田利雄）は田舎の高校に赴任してきた石原裕次郎が学校の古い体質や生徒たちの意識を刷新する。石原慎太郎の原作の映画化だが「坊ちゃん」と「青い山脈」をザッピングしたような内容でオリジナリティは希薄。いつも嫌味な役ばかりの高城淳一が珍しく正義感あふるる役処。 pic.twitter.com/DLTrfmzFdX
— ダーティ工藤 (@dirty_kudo) December 25, 2023
『青春とはなんだ』は、アメリカ帰りで背中に刀傷のある、正義派で八方破れの高校英語教師を巡る、地域の暮らしや学園生活を描いています。
まさに、「太陽族」ですね。
私が本作に興味を持つきっかけは、映画化、テレビ映画（ドラマ）化されたことです。
面白いから原作も知りたい、というごくごく自然な成り行きで読みました。
面白かったのですが、当時は絶版になっていて、仕方なく図書館から借りて、時効ですが全部コピーしました。
コピーは、著作権上半分以内ということだったんですけどね。
まあ、個人的なコレクションなのでご容赦を。
作品のモチーフが、夏目漱石の『坊っちゃん』の真似という見方もありましたが、たしかに登場人物の設定には似たところがあるものの、主人公の地域に対する関わり方が全く違っていたと思います。
映画化は、日活制作で石原裕次郎さん。
テレビドラマ化は、東宝制作で夏木陽介さん。
作品としては、会社の特徴がよく出ていて、どちらもよかったと思います。
テレビドラマ『青春とはなんだ』は、先日浜畑賢吉さんの記事でご紹介したように、大河ドラマと競合する日曜日20時から放送された枠ながら、人気を博して以後青春学園ドラマが続けて制作されました。
一介の教員ながら古い慣習や悪事に立ち向かう
昭和の青春学園ドラマです。青春とはなんだは昭和40年に始まった。先駆の青春ドラマです。原作・原案は石原慎太郎氏です。まあモノクロになりますが貴重シーンはないけど当時のヘアスタイルや夏服ファッションが見所かな？提供者に感謝します。 https://t.co/pmtKBjPq9U pic.twitter.com/HMA6qjrYZ3
— 人生楽しく＆和 (@EoPynV9DzvA1GS5) September 6, 2023
米国留学から帰ってきた野々村健介が、英語教師として田舎の高校に赴任。
本書は映画やテレビの最初のシーンがそうであったように、汽車が駅に到着するところから始まります。
駅の水道で、顔と体を洗う野々村健介先生。
背中の刀傷に驚く駅員。
田舎なので、よそ者には警戒心もあって意地悪です。
野々村健介は、同僚教師や生徒たちが揃う朝礼で挨拶を求められます。
開き直った野々村先生は、英語でスピーチを始めます。
その中には、同僚の先生たちに対する、自分がつけたあだ名も披露。
このへんは、夏目漱石の『坊っちゃん』を髣髴とさせます。
授業は、暗記だけの無味乾燥なものではなく、青空教室で恋愛談議を講義するなど型破り振りを発揮。
それは大学の試験に出ないからと、優等生たちは授業をボイコットしますが、野々村先生は意に介しません。
熱血エネルギーは、生徒の他校とのいざこざで、退学となった元生徒の濡れ衣を晴らします。
そして、ラグビー部を率いてフェアープレーの精神を説きます。
さらに野々村健介先生は、町の利権と政治家や暴力団のつながりなどにも、首を突っ込んで解決します。
一介の高校の先生なのに、古い慣習や悪事に立ち向かうヒーローとしてのキャラクターもお約束でした。
石原慎太郎さんと法華経
今売れてます！
— トップカルチャー蔦屋書店 (@TC_shouhin) July 7, 2020
キリストの信仰を生きる曽野綾子。法華経を哲学とする石原慎太郎。 対極の死生観をもつふたりが「老い」や「死」について赤裸々に語る。 死に向き合うことで見える、人が生きる意味とは。ぜひ蔦屋書店でお買い求めください｡#蔦屋書店 #石原慎太郎 #曽根綾子 #死という最後の未来 pic.twitter.com/LfA1Br3Xgo
石原慎太郎さんは、法華経の哲学を重んじていたといいます。
それは、作風にもあらわれています。
本作では、相性の悪い野球部に理不尽なことをされて、ラグビー部が堪忍袋の尾を切らして殴り込みに行こうとしたときに、それを必死に止めたときの主人公のセリフ。
「その怒りはとっとけ。試合までとっとけ」と、型破り教師にしては分別くさくたしなめます。
正義はいずれ勝つ。耐えて燃え、結果を出すことで決着をつけるという考え方なのです。
嫌われても、布教活動を続ける法華経信者の信念も、そこからきているのでしょう。
一方、青春学園ドラマシリーズの後半のライターだった鎌田敏夫さんは、浄土真宗を感じます。
『飛び出せ!青春』では、やはり県立東高校に理不尽なことをされると、レッツビギン先生（村野武範）自らが生徒を引率して、東校の部員のパンツを脱がせて、フル◯ンにするという報復に出ます。
鎌田敏夫先生のモチーフは、「人間がそうせずにはいられない情念を表現する」（笑）
これが、のちの話題作、金妻シリーズ（金曜日の妻たちへ）のモチーフにつながっていきました。
浄土真宗の親鸞聖人は、僧侶は結婚しないという建前の影でコソコソ子供を作っている比叡山の僧侶を手本にせず、正々堂々と結婚して、衆生とともに隠し事なく生きる道を選びました。
仏教が作風に影響したひとつの例として、興味深い作品です。
石原慎太郎さんの作品は、読まれたことありますか。
青春とはなんだ (ＲＯＭＡＮＢＯＯＫＳ) - 石原慎太郎
青春とはなんだ - 石原裕次郎, 太田博之, 西尾三枝子, 十朱幸代, 須賀不二夫, 桂小金治, 松本克平, 高城淳一, 浜田寅彦, 上田吉二郎, 舛田利雄, 石原慎太郎
懐かしいですねぁ～
私のイメージは石原裕次郎より、夏木陽介のイメージの方が強いです。
by mutumin (2024-07-26 21:51)
石原慎太郎さんの作品、言われてみれば読んだことないです
裕次郎さんの映画の原作のイメージしかない
by mau (2024-07-26 22:20)
慎太郎氏は『坊っちゃん』の現代版を考えたと聞いたことがあります。
日テレ日曜20時台ドラマとしては一番印象あるのは『飛び出せ！青春』ですが。
by 坪井 (2024-07-26 23:13)
夏木野々村先生が、宿直でラーメンとカツ丼を頼んで、
ラーメンを先に食っていたのが印象に残っています。
by おっつぁん (2024-07-26 23:20)
先日読んだ本で、石原慎太郎さんはかなりの悪筆で校正者泣かせだったと言ってました。
by HOTCOOL (2024-07-27 04:40)
坊ちゃんと青い山脈、まあ確かに雑に観ればそうなるか(^◇^;)
by pn (2024-07-27 06:22)
おはようございます＾＾
石原慎太郎さんには個人的な関心は持っていますが、本を読んだことが無いです。読もうかなっと思いながらも何となく読まない分野。
by mm (2024-07-27 06:27)
学校現場では「熱い人」が敬遠されるようになりました。
淡々と、感情を表に出さずにというような雰囲気でしょうか。
職員がストレスをため込まないか心配です。
子どもたちをよく見ないで熱いのは困りものですが、
子どもと向き合う熱さが必要なときもあるとこのごろ感じています。
by ハマコウ (2024-07-27 06:30)
♬大きな空へ梯子をかけて～まあっかな太陽～この手でつかもう♬
夏木陽介さん主演の「青春とはなんだ」を観ていました。
この番組でラグビーが好きになりました。
by 我流麺童 (2024-07-27 06:49)
おはようございます！
この時代は自分の青春時代でもありました。。
by Take-Zee (2024-07-27 08:15)
あの当時裕次郎さんの映画は大流行で大分見ましたし
小樽に行って裕次郎さんの記念館も見てきました。
by お散歩爺 (2024-07-27 14:13)
マルクスから二宮尊徳、伊達政宗・・・渋沢栄一・・・石原裕次郎・・・
いっぱいありがとうございました！
by HOLDON (2024-07-27 15:41)
石原慎太郎さんの著では、瀬戸内寂聴さんとの共著『人生への恋文』が心に残っています
by 十円木馬 (2024-07-27 17:19)
懐かしい～。気持ちが青春時代に戻りました。
by 風太郎 (2024-07-27 17:37)
こんばんは。
映画は知りませんでした。
知ったのは TV ドラマで、続く『これが青春だ』も視ていました。
でもまだ小学生だったので主題歌も憶えていてなんとなく記憶があるのは『これが青春だ』からです。
主演の名前にあれ？と思ったので調べましたら『これが青春だ』では主演は竜雷太さんに変わったのですね。
by センニン (2024-07-27 18:53)
別世界の人ですね。
by 夏炉冬扇 (2024-07-27 20:38)
みなさん、コメントありがとうございます。
>夏木陽介のイメージの方が強い
そういう人は多いかもしれません。
>言われてみれば読んだことない
石原慎太郎はやはり政治家としての知名度が高いからでしょうか。
>一番印象あるのは『飛び出せ！青春』
レッツビギン、面白かったですね。
>宿直でラーメンとカツ丼を頼んで
すごい食欲ですね。
>かなりの悪筆で校正者泣かせ
頭はいいのに字は下手という人、たしかにいます。
>雑に観ればそうなる
評価は人それぞれですから。
>個人的な関心は持っていますが、本を読んだことが無い
本よりも映像作品のほうがインパクトがありますね。
>子どもと向き合う熱さが必要
親も家庭もさまざまですから教師もやりにくいところがあるのでは。
>この番組でラグビーが好きに
やるほうですか。見るほうですか。
>自分の青春時代でもありました
青春ものは自分のそれとつい重ねてしまいます。
>裕次郎さんの記念館も見てきました
裕次郎をスターにした慎太郎、いい兄弟だったと思います。
by いっぷく (2024-07-27 22:28)
みなさん、コメントありがとうございます。
>いっぱいありがとうございました
楽しんでいただけたなら何よりです。
>瀬戸内寂聴さんとの共著
瀬戸内寂聴さん、出家しても目立ちたがりですね。
>気持ちが青春時代に
当時もみんな同じ気持ちで観ていたと思います。
>主演は竜雷太さんに変わった
竜雷太は当時無名の新人でしたね。
>別世界の人ですね
世の中いろいろな人がいます。
by いっぷく (2024-07-27 22:56)