それから(夏目漱石/原作、バラエティ・アートワークス/まんが)Kindle版 [文学]
それから(夏目漱石/原作、バラエティ・アートワークス/まんが)をご紹介します。定職に就かず、毎月1回、本家にもらいに行く金で裕福な生活を送る主人公が、すべてを捨てて友人の妻とともに生きる決意をするまでを描いています。
『それから』は、明治42(1909)年初出の、夏目漱石作品です。
主人公の長井代助、平岡常次郎、そして平岡の妻である三千代が物語の中心です。
大学時代、代助と三千代は、心のなかでは惹かれ合っていたのに、平岡に頼まれた代助は、2人の仲を取り持ってしまいます。
以来、代助は大学を卒業して三十路に入っても職につかず、裕福な実家から経済的な支援を受けて悠々自適に暮らしています。
一方、平岡は、京阪地区で銀行員として堅実に働いていましたが、妻の三千代との関係は流産以来うまくいっていません。
そのストレスか、平岡は家に寄り付かず放蕩するようになり、三千代は流産が原因で心臓を患います。
平岡の退職と東京への帰還がきっかけで、代助は三千代と再会し、再び愛し始めます。
三千代も、彼の気持ちを受け入れ、代助は彼女とふたりだけで生きることを選びます。
ゴシップ的な「略奪愛」の話ではありまぜん
1909年の今日、東京朝日新聞・大阪朝日新聞で夏目漱石が #それから の連載を開始。父の財産に寄食し趣味に生きる長井代助が、友人の妻への愛を通じてそれまでの生活と決別するまでを描きました。「三四郎」「門」とともに、漱石前期三部作の一つです。
— 岩波書店 (@Iwanamishoten) June 27, 2024
『それから』? https://t.co/SijDsQhGh2 pic.twitter.com/pj7IQA9Kvw
レビューによっては、「略奪愛の物語」と紹介しているものもありますが、単純に「人妻をとってしまう」だけの話と紹介すると、本作を誤解されてしまうように思います。
物語中、不義の交わりは一切描かれておらず、もっぱらプラトニックな、相手への思慕を描いています。
いつも本気になることから逃げていた主人公・代助は、友人の平岡にいい顔をシたくて、頼まれたからと自分が好きなくせに三千代との仲を取り持ち、大学を出てからも働かず、社会の傍観者を気取っていました。
家業を継ぐわけでもなく、父親からは縁談もあったのですが、それも全部断っています。
つまり、いつも人生の課題にチャレンジせず、しかもチャレンジしないことに理論武装して自分を正当化しているダメな奴だったのです。
それが、三千代と再会し、自分の本心と向き合うようになり、平岡も三千代を持て余していたので、やっとその気になったのです。
ただ、うまくいっていないと言いながらも、現夫である平岡にもメンツはありますし、「だったらなんで仲を取り持ったんだ。最初から言ってくれればいいじゃないか。俺は道化か」という不信感もあり、2人の友情は壊れます。
しかも、平岡は代助の「横恋慕」の話を新聞社に売ったことで、名士である代助の実家は恥をかき、代助は勘当されます。
平岡、少しやりすぎでは?
代助と三千代は肉体関係にも至ってないのに。
手も握ってない、そもそも相手に全く触れていない。でもこの時代は、好きになるだけでだめみたいですね。
さらに、そこまでしてやっと迎え入れる三千代は心臓を患い、もう長くないという。
しかし、代助が初めて、傍観者ではなく自分の人生を退路を断ってチャレンジした、という自我の目覚めを描いていますから、週刊誌のゴシップ記事のような「略奪愛」とは、描き方は全く違います。
では、タイトルは、どうして「それから」なのか。
おそらくは、代助が、周囲の反対を押し切って三千代とふたりだけで生きることを選ぶ決断をしたことによって、友との絶縁や実家からの勘当など、退路を断った生き方を選ぶという、代助のその後の新しい人生を期待する著者の思いが込められているのではないかと思います。
愛と自由、社会的な選択と個人の幸福がテーマ
夏目漱石の『それから』を大人になってまた久々に読み返しているが、すでに序盤のこの描写で三千代が昔から代助に特別な想いを抱いていた事が示されている‥。人は好きな人を見ると目がキラキラして瞳孔が開くもんね。夏目漱石の恋愛小説描写はもう最高で巧妙すぎる#夏目漱石#それから#読書記録 pic.twitter.com/TrYCBIzYEA
— Saint (@Saint95797098) June 7, 2023
昔、『オレたちひょうきん族』というお笑い番組で、『それから』のパロディーがありました。
明石家さんま、片岡鶴太郎、石井めぐみで演じていました。
石井めぐみに振られたくなくて、また片岡鶴太郎との関係が壊れることも恐れて、本当は好きなのに、アプローチできず、ふざけてばかりの明石家さんま、というストーリーでした。
3人の仲良しから、1組のカップルができることによる葛藤を描く物語って、ほかにもいろいろあったような気がしますが、要するに、その原点なんでしょうね。『それから』は。
本作は、愛と自由、社会的な選択と個人の幸福をテーマに、読者に深い考えさせる作品といえるでしょう。
本書は、今年の7月1日初版なので、新刊になります。
原作は長編小説ですが、長い物語はハードルが高いと思われる方は、まず本書(漫画)から入ってはいかがでしょうか。
それから (まんがで読破) - 夏目漱石, バラエティ・アートワークス
とっつきにくい文学作品も漫画や横書きにすることで入りやすくなりますね
by mau (2024-07-22 00:38)
恋愛物語は苦手。読まず嫌いかも^^
by mm (2024-07-22 06:16)
おはようございます!
暑く重苦しい空気が纏わりつくようで
朝から不快ですね・・・(^-^)!!
by Take-Zee (2024-07-22 07:32)
やっぱ夏目の経験から来てるのかな?
by pn (2024-07-22 12:06)
懐かしい俳優さん、いいですね。
どうしても若き女優さんに目が・・・
今でもテレビで暴れん坊将軍や遠山の金さん、やってますね~
たまに見ます。
夏目漱石ってやっぱりすごい文学者でしたね。
大学生になってやっと「坊ちゃん」から抜け出し、「こころ(先生)」で感動しました~
by HOLDON (2024-07-22 12:22)
こんばんは。
『草枕』『坊っちゃん』を小学生の頃読んだのが小説を読む経験の始まりでした。
三部作はもちろん読んでいます。
漱石の作品だけではありませんが、実写のドラマや映画には違和感が大きいものが多いです。
by センニン (2024-07-22 18:55)
本も漫画もあまり読まないので、ドラマ化して欲しいですね。
by mutumin (2024-07-22 19:59)
みなさん、コメントありがとうございます。
>漫画や横書きにすることで入りやすく
文庫本は手に取らなくても漫画ならとページをめくる人は多いかもしれません。
>読まず嫌いかも
そうかもしれません。
>暑く重苦しい空気が纏わりつく
梅雨があけてもカラッとした晴れにはなりませんね。
>夏目の経験
どうなんでしょうね。知人かもしれませんね。
>やっぱりすごい文学者
紙幣になったくらいですし。
>実写のドラマや映画には違和感が大きいものが多い
自分のイメージができているとそうなってしまいますね。
>ドラマ化して欲しい
あらかじめドラマをみておけば原作を読んでいても頭に入りやすいかもしれません。
by いっぷく (2024-07-23 00:08)