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タリウム殺人未遂事件、実娘による犯行を仏教はどう見るか [仏教]

タリウム殺人未遂事件、実娘による犯行を仏教はどう見るか

タリウムを使った事件が、昨今マスコミを賑わせます。かつて、静岡タリウム母親毒殺未遂事件(2005年)は、実娘による犯行として話題になりました。シャバに戻った娘を、両親はどう迎えたらいいのでしょうか。仏教的にはどう考えたらいいのでしょうか。

静岡タリウム母親毒殺未遂事件(2005年)を漫画化したのは、『ザ・女の事件 毒殺女子高生~母親に毒を盛り続けた私~/ザ・女の事件Vol.2』 (水城瞳、スキャンダラス・レディース・シリーズ)です。

『ザ・女の事件【合冊版】Vol.2-3』にも収録されています。



静岡タリウム母親毒殺未遂事件は、事件名通り、静岡県立高校1年生(当時)の娘が、母親にタリウムを入院させるまで少しずつ飲ませ続けたものの、それが見つかって2005年10月31日に逮捕された事件です。

女子生徒は、楽天ブログで、犯行の経緯を日記風に記録していました。

この記事は、冒頭の書をもとに事件をご紹介します。

ブログには「僕」と書いていた


母親は、筋力低下や呼吸障害でも意識不明の重体となりました。

長女の自宅の部屋からは、プラスチック容器に入った粉末のタリウムが発見されました。

調べによると、長女は逮捕される2ヶ月前の8月中旬~10月20日ごろにかけて、ネズミの駆除などに使われる劇物のタリウムを自宅などで母親に摂取させ、筋力低下や呼吸障害に陥らせています。

母親は摂取すると次第に体調を崩し、10月2日には救急車で搬送され入院。

同20日には家族が三島署に相談。

「相談」ということはつまり、家族も長女の仕業とわかっていたのでしょう。

翌21日、長女も薬物を飲んで体調を崩して入院しています。

狂言自殺か、新しい毒物を自分で試したのか、母親に摂取させるために自分も入院したのかは不明です。

退院後に逮捕されました。

タリウムは、消化管、中枢神経系及び末梢神経系に影響を与え、脱毛を生じるそうです。

大量に摂取すると、心血管系、腎臓及び肝臓に影響を与え、死に至ることもあるといいます。

経口摂取すると腹痛や吐き気、嘔吐、下痢、頭痛、脱力感、痙攣、筋肉痛、麻痺、せん妄、意識喪失などを生じるとされています。

淋病、梅毒、結核の治療に使われてきたものの、薬用量と中毒量の差が小さいことから、次第に治療薬としては使われなくなったそうです。

致死量は、たった1グラム。

わずか小さじ一杯分ですから、素人がむやみに手を出してはならない、毒劇物法で指定されたキケンな劇物です。

18歳未満には販売が禁止されていますが、高校生でも簡単に手に入ってしまった。

ブログによると、「薬局のおじさん」が「医薬用外劇物」の表示に気付かず、必要な書類を通す事無く手配してしまったからだといいます。

薬剤師会は、「薬局のおじさん」の薬剤師免許を剥奪すべきです(怒)

「毒のブログ」には疎外感を書き連ねていた!?


事件を起こした高校1年生の女子生徒(当時)は、小学校のときには、飼育係として小動物をかわいがっていたそうです。

卒業文集には、「大切にすればするほどなつくので、毎日のように世話をした」と、ウサギの飼育当番だった思い出を綴っています。

ところが、中学の卒業文集では、「好きな芸能人」の欄に、「有名人(あまり有名ではないかもしれないが)ならグレアム・ヤング」と、英国の毒殺犯の名を挙げています。

すでに中学の時点で、毒を使ってみたいという欲望が起こっていたのでしょうか。

彼女は成績優秀であり、中学でも学年で10位以内に入っていました。

高校は、地域でも有数の県立進学校の理数科に進学。

化学部に所属します。

化学、毒物に関する知識は非常に豊富だったそうです。

ネット上で薬物の情報を収集し、楽天ブログで犯行の経緯を日記風に記録していました。

男性名のハンドルネームを名乗り、主語は「僕」と表現していました。

本作によると、「男とか青春とか、そんなことしか言わない。私はそんなものに何の興味もない。というより、自分が『女』という生き物だということが嫌だ」と言います。

学校生活では、とくに目立つ生徒ではない、つまりいじめっ子でもいじめられっ子でもなく、文化部の部長もつとめていたとマスコミは発表しています。

しかし、本人のブログでは、「ブッキー(不器用)な女」呼ばわりされていたと書かれ、「彼らは何時も僕をからかっていました」「僕の英語の参考書は無くなったままだし、教室では孤独です」などと書いています。

いじめというのは、いじめた方は深く考えずに行い、そのうち忘れてしまうものですが、いじめられた方は深く傷つき、いつまでも覚えているものです。

部長も、なり手がいなくて押し付けられたかもしれませんしね。

毒の日記ブログを公開するのも、そうした寂しさや虚しさを埋める承認欲求だったのかもしれません。

長女が、なぜ母親を狙ったかについては不明です。

ただ、「父は小遣いをくれるから好きだけど、母にはあまり親しみを感じていなかった」という供述はあります。

本作では、成績優秀な女子高校生は、母親を「俗物」と軽蔑しているシーンがあります。

そして、嫁姑の確執も描かれています。

娘にそういう物を見せると、ろくなことにならないということでしょう。

翌年5月1日の審判で家裁支部は、医療少年院に送る保護処分を決定。

裁判長は、「幼児期からの発達上の問題があり、後天的に形成された人格のゆがみも認められる」として「相当長期間の矯正教育が必要」との処遇勧告を付けました。

犯行の動機は、「タリウムを試したいとの思いから母親に飲ませたところ、予想以上に重い症状が出たため狼狽や後悔したものの、犯行の発覚を強く恐れる気持ちから、殺意をもって投与した」と指摘。

刑事責任能力はあるが、刑事裁判までは必要ないと判断しています。

事件当初は、犯行を否認していた少女ですが、精神鑑定の結果を聞かされた父親が、事実を認めれば受け入れることを告げたところ、少女は「僕がやったんだ」と素直に事実を認めたそうです。

静岡家裁沼津支部も、事件の記録は11年後の2016年に廃棄したそうなので、


すでに少女は家に戻っているのかもしれません。

いわんや、毒を盛った娘をや


さて、いつものように、仏教的には、こういう事件はどうとらえたらいいのでしょうか。

赤の他人なら、もちろん関わることはないでしょうが、実の親子だけにそういうわけにはいかず、とくに母親は被害者でありながら、親として、子に対する責任をもたなければなりません。

浄土真宗には、唯円という親鸞の弟子が書いた『歎異抄』のなかに、有名な悪人正機説という教えがあります。

善人なおもて往生す、いわんや悪人をや

どういう意味か。

阿弥陀仏の本願は、阿弥陀仏の力をあてにしないでせっせと自分で修行して悟る「善人」ですら救ってくれるのだ。自分で悟れない「悪人」が救われないわけ無いだろう、という教えです。

阿弥陀仏の本願の軸が、「悪人」の方にある教えです。

逆じゃないかと思われがちですが、ここが浄土真宗の真骨頂なんです。

自分で悟れない、ダメな奴の方を中心に見ているのです。そっちが大事なんだといっているのです。

この伝で言えば、

ちゃんとした子どもだって愛情をもって接するのが親である。いわんや、だめな子を大事にしないわけがないだろう

ということです。

親が世話を焼かなくても、ちゃんとできる子でも、気にかけるのが親というものである。

ましてや、ちゃんと気にかけてやらないとできない子に対して、親が気にかけるのは当たり前だろう。

こういうことを言っているのです。

考えてみたら、当たり前のことですよね。

学校の先生だってそうですよ。

勉強ができないやつこそ主軸なんです。

できるやつは、自分で勉強するんです。

勉強のできないやつこそ、丁寧に指導するのが教師というものです。

できが悪いからと言って、見捨てる、落ちこぼすというのは、浄土真宗的には「逆縁」なのです。

彼女の両親が、「いわんや、毒を盛った娘をや」という親鸞の教えの通りに、彼女と向き合っているといいですね。

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コメント 4

赤面症

タリウム事件は複数あるから、一瞬どれかと思ったw
by 赤面症 (2023-06-07 01:09) 

pn

ざっくりと言っちゃえば悪いのは親だけど、親も人間だから自分を殺そうとした者を子と言え許すだろうか疑問だわ。
親も子も自分の冒した罪に向き合わないと一緒に居たら次は殺し合いになるんじゃないか?
兎にも角にも薬局のおじちゃんがちゃんとしてれば防げたかもしれないんだからそこらへんもっと叩かれてないのかな?
by pn (2023-06-07 09:45) 

コーヒーカップ

自分も他人ごとではないと思ってしまいました。
子は親次第、育つ環境次第と思います。
やっぱり親の教育水準と社会に対応できる能力が高いと、子も高くなる傾向にあると思います。
この親はどこか歪んでいたのでしょうね。
殺意持たれるほど糞親だと思いますよ。
子を歪ませるのはまずは親にあると思います。


by コーヒーカップ (2023-06-07 12:30) 

tarou

こんばんは、はらぼけ地蔵にコメントを
有難うございました。
赤い腹掛けの裏は、丸い穴があけられていて
お供物が入れられる様になっていました。
事件は知っていましたが、漫画化されているのは
知りませんでした。
by tarou (2023-06-07 18:45) 

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