中春こまわり君(山上たつひこ、フリースタイル)がきデカに見る時の移ろい [社会]
中春こまわり君(山上たつひこ、フリースタイル)は、かつての人気漫画『がきデカ』の山田こまわり君が、38歳の父親になった話です。一世を風靡した昭和のナンセンスギャグ漫画の主人公も、髪をオールバックにしたサラリーマンとして、妻子のために働き、ミステリアスな事件を解決しています。
昨日、現実逃避はほぼYouTubeと書きましたが、たまにKindleにもなります。
現実逃避の選択肢はいろいろあります(笑)
書店で並んでいるときに見逃した、ちょっと昔の本もお目にかかるので、Kindleはなかなか便利なシステムですね。
そこで、読んでみたのが『中春こまわり君』。
山上たつひこさんの、漫画家生活50周年記念に描かれたそうです。
中春というのは、「春の三か月の真中」の意味です。
ということは、中年という意味でしょうか。
『中春こまわり君』は、かつて一斉を風靡した『がきデカ』の主人公、山田こまわりくんが38歳になった設定で構成されています。
こまわり君は成長していた
『がきデカ』は覚えておられますか。
かつて鶴見俊輔が、漫画「がきデカ」の功績は、世間で何が起ころうと(要はミサイルが飛んで来ようと)、好き勝手なことをやってて良いことを示したことだと言ってたはず。今の自分はそんな気分。 pic.twitter.com/oMlEBlzm07
— Sato (@leopardbox) April 12, 2023
『がきデカ』は、山上たつひこさんによる日本の漫画作品です。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)にて、1974年44号から1980年52号まで連載されました。
同作は、足掛け7年にわたる連載後、月1連載で全12話の“完結編”『がきデカファイナル』を連載して終了しました。
それが、2009年になって突如、30歳を過ぎた山田こまわりくんが、当時のメンバーとともに復活。
翌年には単行本化され、今回読み放題リストに加わったわけです。
喜劇の表現で言えば、従来のギャグ漫画が、ストーリーの意味で笑わせるシットコム型だったのに比べて、『がきデカ』は、徹底的にスラップスティックのドタバタギャグを貫きました。
この怪作漫画は燦然と輝く金字塔的作品であり、現在にまで繋がるギャグ漫画はここから始まったと言って過言ではないでしょう。
『がきデカ』は徹底したナンセンスギャグでした。
えー、あのナンセンスをまた描くのか。
こまわり君を、平成になってもフ×チンにするのか。
興味深く本書を開きましたが、少し違いました。
『中春こまわり君』は人間ドラマのストーリーの中にしていました。
「少し」というのは、一応、往年の面影を留めるギャグをまぶしていました。
山田こまわりくんは、金冠生生電器の営業部に勤務する38歳。
妻の圭子は35歳。
布袋様のような頭の形をした父親がいます。
こまわりくんの両親は健在です。
1人息子の昇は、漫画の連載中に小学生から中学生に進学します。
漫画にありがちな、時間の変化がないパラレルワールドではないのです。
あの同級生の西城良夫も、何と同じ職場です。
モモ子という妻と一男一女に恵まれています。
犬の栃の嵐は、孫の栃の光が日本料理の店でオーナー兼板前をやっています。
犬が前脚で刺し身をさばいているところを見ながら、こまわりくんが
「よう、保健所が営業許可出したなあ、この店」といえば、栃の光が
「またー、ははは」と返します。
別の客からは、
「オヤジ、フィラリアの薬、飲んでるか」と、いたわりの声をかけられます。
ありえないですが、なんか笑えます。
奥の部屋では、寝たきりの栃の嵐(33歳、人間の年齢で言えば148歳)が、ボケ症状で唸っています。
栃の嵐は、事業で成功して、こまわりくんの両親が金を借りていましたね。
たぶん、その儲かったお金で店を出したのでしょう。
のれそれ商店街では、同級生の福島が魚屋を頑張っています。
木の内モモちゃんも、2人の子供に恵まれています。
一方、彼女と双子で、風吹ジュンさんがモデルという、木の内ジュンは苦労しています。
若い人はご存知ないでしょうが…若き日の風吹ジュンの魅力といったらもう??
— (喪中) ヘルベルト?フォン?スダヤン (@suda_yan) April 2, 2018
「がきデカ」のジュンちゃんのモデルになったほど。 #半分青い pic.twitter.com/Q6SxjmyTRR
経歴詐称で博打打ちの、たちの悪い男に引っかかって利用されているのです。
こまわり君は、そんなジュンを心配しています。
当時とは、立場が逆になってしまったのです。まるで別人のようです。
こまわりくんと切り離して、新たなキャラクターでもいいんじゃないって思うかもしれません。
いえいえ、こまわりくんの30年後だからいいのです。
人間は変わる。
万物は流転する。
諸行無常、諸法無我です。
小ネタもあり
話を戻すと、小ネタも随所にありますよ。
サラリーマンのこまわりくんが、専務に呼ばれて食事をしているのですが、専務はうな重を腕で囲むようにして隠してコソコソ食べているのです。
「さっきから気になっていたのですが、どうしてそんなに隠すようにして召し上がるのですか。それ、ただのうな重でしょ」とこまわりくん。
すると、専務はさらにムキになってうな重を隠します。
「見、見るな。山田くん、これはもう習性になっていてね。わたしは自分の弁当を人に見られるのが恥ずかしいんだ」
学校時代、粗末な弁当が恥ずかしかったというのです。
「子供の頃のトラウマというやつですか。そういう母親に育てられると、子供は悲劇ですよねー」と、専務に寄り添ったつもりのこまわりくんに、「母の悪口を言うなー」と専務。
「わたしが恥ずかしかったのは、弁当そのものじゃない。母が笑いものになることが辛かったんだ」
いや、濃い話です。
新劇出身のコントのネタで、こういうネタってありそうですね。
シティボーイズ(大竹まこと、きたろう、斉木しげる)とか、キモサベ社中のネタっぽいですよね。
まあとにかくそんな感じで、論より証拠で、おすすめします。
こまわり君、覚えていますか。
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『がきデカ』は、馬鹿馬鹿しかったですが無条件に笑えました。独特なポーズで「死刑!」というフレーズが忘れられません。あの頃は、『東大一直線』や『マカロニほうれん荘』など、秀逸なギャク漫画が多かったですね。
by 十円木馬 (2023-05-21 08:02)
がきデカとマカロニほうれん荘を超えるギャグ漫画はまだ出てないと思うくらい好きだったなぁ、あの頃のチャンピオンは確かにチャンピオンだった。
昨日の記事の動画見ましたよ!弊社に来てジジイに説法して欲しい(笑)
by pn (2023-05-21 09:39)
お久しぶりでした。
by プー太の父 (2023-05-21 14:53)
人を笑わせようと、こまわり君のギャグネタをしていた人がいましたね。
by そらへい (2023-05-21 20:26)
当時、こまわり君は、ギャク漫画の革命とも思える面白さを感じてました。
この記事でこまわり君を思い出したら、このギャグのセンス、クレヨンしんちゃんに引き継がれているような、そんな気がしてきました。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2023-05-21 21:00)
お久しぶりですね。
nice!ありがとうございます。^^)
by yes_hama (2023-05-21 22:41)