SSブログ

山梨女児不明、母親がツイッター社提訴、などにこう考える [社会]

2019年9月、山梨県のキャンプ場で、当時小学1年生が行方不明になった事件がありました。

それについて母親が、ツイッターで「母親が犯人」「こいつがクロ」など中傷を受けたとして、ツイッター社に発信者情報の開示請求を求める訴訟を東京地裁に起こしたそうです。

「『言論の自由』に司法を介入させるな」というのは、もう時代遅れの意見だと私は思いますが、いかがでしょうか。





発信者情報開示請求は難しいかも


今回の訴訟では、母親の娘さんに対する「敬愛追慕(けいあいついぼ)の情」が侵害されていると主張しています。

が、「母親が犯人」「こいつがクロ」といったツイートは、名誉権や名誉感情を侵害するものではないため、発信者情報開示請求をすることは難しいとのこと。


えー、なんでーと思いますが、あくまで「行方不明」であり、死亡事故についてではないので、「クロ」だの「犯人」だの「殺人」だのといった中傷は、名誉毀損が言うところの「事実の摘示」にあたらないということかもしれません。


先日も、同じような事件の判決がありました。

テレビ番組を巡るネットの誹謗中傷で自殺したとされる木村花さんの母響子さんが、インターネット上の書き込みで花さんを侮辱されたなどとしてプロバイダーに投稿者の情報開示を求めた訴訟の判決で、氏名や住所などの開示を命じたばかりです。



投稿者は昨年9月、ネット上の掲示板に、「プロレスしか取り柄がないから他の仕事選べなくて死んだ」などと書き込んだそうです。

なんの取り柄もないから他人の悪口書いている連中が、何を抜かすか、と思いますけどね。


裁判官は、書き込みが、「社会通念上許される限度を超え、原告の子に対する追慕の情を侵害している」と認定して、情報開示が必要と結論付けたといいます。

私の経験


私も10年前、同じことをやられたので、気持ちはわかります。

202104212036.png

これは、私が火災を経験した当日の、2NNという2ちゃんねるで書き込みの頻度が高い順に記事を紹介するトップページです。

タイトルの真下に表示されているということは、この日、ネット掲示板でもっとも注目を集めたニュースだったわけです。

ではそこで何を書かれたかというと、「夫が怪しい」。

NHKと共同通信は事件と決めつけ、たかが無名の一庶民の火災を2日またぎで報道。

NHKなんか、こっちが現場検証しているさなかの、お昼のニューズで放送したらしいですからね。

週刊誌やワイドショーには、ずっと後をつけられ、毎日新聞には、長男の小学校名まで書かれてしまったので、週刊誌の記者が、長男の同級生宅まで押しかけて、その家の祖母に長男の写真をよこせと迫ったそうです。

長男の小学校は、騒ぎが収まるまで全校集団登校に。

隣の隣に住んでいた娘さんは、ショックで不登校に……。


もちろん、実行者はマスコミの記者ですが、もとを作ったのはWeb掲示板だと私は思っています。

でも誰一人責任を取らない。





何が名誉毀損・侮辱かわかりますか


今回の事件に限らず、ネットの暴言で逮捕されたり起訴されたりする連中は、「まさかこんなことで罪になるとは思わなかった」というセリフが決まって出てくるのです。

名誉毀損や侮辱罪自体を理解していないこともありますが、親告罪のため、同じことを書いても訴えられる場合とそうでない場合があり、「どうして自分が訴えられるのか」「どうしてこの言葉で訴えられるのか」という思いがあるのかもしれません。

まあ、その言葉でなければ表現できないわけでもないのに、不用意にリスクのあることは書かないことだと思います。

たとえば、「〇〇は不倫している」と書き込んだら、これは名誉毀損になります。

〇〇が実際に不倫しているかしていないかは関係ありません。

「事実の摘示」といって名誉毀損の要件になります。

また、「〇〇は不倫している」というツイートをリツイートしても、同じように名誉毀損になります。

ただし、かつての三船敏郎と喜多川美佳(例えが古い?)のように、不倫が公然としていた場合には、「事実の摘示」ではなく、客観的真実、もしくは「真実相当性」があるとみなされて名誉毀損には問われません。

名誉毀損が成立しないケースとしては、さらに公共性・公益性なども満たす必要があります。

つまり、社会的利益のある情報ということです。

ですから、政治家のスキャンダルは、名誉毀損か、社会的利益かの解釈が分かれる微妙なものなので、名誉毀損になったからといって、ジャーナリストは恥じる必要はないと思います。

しかし、今回や、木村花さんへの罵詈雑言は、何一つ満たしていない、社会的にも何も生み出さないものです。

マス「ゴ」ミというが、無責任な便所の落書きとは区別して欲しい


言論については、今までは刑事的に入りにくい聖域とされていました。

言論の自由を司法で弾圧するからという論陣ですが、プロの作家や商業出版物の場合、事件になれば売上や広告などに響きますから、社会的制裁は受けざるを得ないんですね。

それに比べると、ネットの匿名投稿というのは、書き逃げ状態じゃないですか。

私は、正当な言論活動と、そうでない「言葉の暴力」はきちんと区別すべきであり、ネットもBPOのような中立の審査機関を作り、自浄作用を自主的に行える体制づくりを行うべきではないかと思います。

付記、改正新プロバイダ責任制限法が今日成立しました

平成の芸能裁判大全 - 芸能裁判研究班
平成の芸能裁判大全 - 芸能裁判研究班

最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務 第2版 [ 松尾 剛行 ] - 楽天ブックス
最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務 第2版 [ 松尾 剛行 ] - 楽天ブックス




nice!(174)  コメント(10) 
共通テーマ:学問

nice! 174

コメント 10

ナベちはる

発言する前に「"自分が今からしようとしている発言"を他の人が見たらどう思うか」と考えるのはなかなか考えないと思うので、それをやるようにするだけでも多少は変わってくるのかなと思います。
by ナベちはる (2021-04-22 01:21) 

goro

SNS上の悪意ある書き込みは今のところ防ぎようがないように思えます。
たとえ匿名で相手の顔が見えないとしても、礼儀は必要だし、相手の気持ちを考えるべきだとは思いますが、発信のハードルが低すぎるのでやはり難しいのでしょうね。
by goro (2021-04-22 05:28) 

tommy88

怖い
素直な感想です。

by tommy88 (2021-04-22 06:14) 

pn

犯人じゃなくても犯人扱いし、犯人捕まると今度は犯人の人格をこうと決めつける。それがネット民だと思ってます。
同級生が殺人犯になった時、中卒全てボロクソに言われたしそいつの人格も知りもしないのにニュースソースだけでボロクソに書きやがった連中に言いたい、お前らにあいつの何が分かるんだと。
by pn (2021-04-22 06:27) 

kousaku

ネット社会の怖い所ですね、
by kousaku (2021-04-22 09:00) 

kou

数年前です。地元のある掲示板で私が誹謗中傷されましたが、書き込んだ人物は私の隣に座る部下でした。IDが会社のものだったので問い詰めたら白状したんです。
マジでネットは怖いと思いました。
by kou (2021-04-22 17:28) 

ぴーすけ君

なんでこんなことをするんでしょうか。
by ぴーすけ君 (2021-04-22 18:03) 

なかちゃん

他人のことを書くのに、匿名でないと書けない奴が一番どうしようもない奴だと思いますね。

by なかちゃん (2021-04-23 09:18) 

エンジェル

匿名で他人を傷つけるって最低だと思います。反論したくても出来ないですから・・・
私はブログで知人から中傷コメントを書き込まれた事があります。匿名ではないけれど、そのコメントは一般の人にもさらされてまるで私が犯罪者のように受け止められる内容でした。すぐに削除しましたが、その人とはそれっきりおつきあいしておりません。その方は他の友人達とも敬遠され、すべての友人を失ったようです。自業自得だと思います。
by エンジェル (2021-04-23 10:56) 

Caelum

ネット上でも人と人の関係であることには変わりは無いので、やはり「本人に面と向かって言えないことは言うな」だと思うんですよね。
リアルでもネットでも思うことは自由なのでいいですが、それを発言してしまえばもう引っ込めることは出来ないじゃないですか。根本的には、全てのネット利用者の「リアルとネットは別」みたいな意識自体を改める必要があるんだろうなぁと思います。
by Caelum (2021-04-25 23:06) 

Facebook コメント

Copyright © 戦後史の激動 All Rights Reserved.
当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます